チャチャル村防衛戦線 その4 燃え尽きた元村娘
この話は三人称視点です
一方その頃チャチャル村を防衛したフェインズと先生は村内に侵入しようとする2体キメラを食い止めに体を張っていた。だが今回の戦いはそうはいかない。カーディナスが危機的状況で召喚されたキメラの能力は自分より下の魔族を吸収し自分に取り込ませるのだ。なので、村内に配置されたフェインズのゴーレムさえもキメラによって取り込まれてしまったのだ。それによって攻撃、防御、スピードといった基本能力も向上され単体ではかなりの強さを誇るミリーニャさえも奥の手を使わなければならない相手なのだ。
加えて数は二体相当の犠牲者を出さなければ勝てないと思ったのだが予想外の展開に二体のキメラは無数の発疹が見え地に伏して瀕死の状態に陥りそれに対峙する先生とフェインズはほぼ無傷だった。
それを見た村民は喝采であふれ出た。
「おお~~~~~~~あの強そうなキメラを倒したぞ~~~~~~さすが騎士様だ」
「す、すげえかっこいい」
「これで脅威は去ったのか!?」
「・・・・・・・・・・・・・・・」
その村民の白い声の中フェインズは暗い顔をしており、隣にいた先生は声を掛ける。
「どうしたのですか?貴方はこの村を守った英雄の一人なのですよ。なのに暗い顔をしてどうしたのですか?」
「英雄?とんでもない。あんたの方が英雄に見える・・・・・・あんたこのキメラに何をした。こいつらは俺の術を食らってもほぼ無傷だったなのにしばらく時間が経つと急に動きが鈍くなって死にかけの状態だ。そのタネを教えてくれないか?」
「・・・・・・・・・・・」
フェインズは今置かれている状況が分からなかった。先程まで戦った二体のキメラの戦闘で明らかにこちらが不利だった。だがそれでも先生は賢明に結界魔術を何度も張りキメラの攻撃の嵐を食い止めて時間を稼ぐ。
そして時間が経つとキメラは魔法が解けたように力が失われる。これはどんなからくりを使ったのかフェインズは知りたかったようだ。
「いいでしょう・・・・・・答えは簡単あらかじめ貴方のゴーレムに毒を仕込んだのです」
「毒だと!?」
「ええ。その毒は抗体が出来ないようゴーレムに各自違う種類の毒を仕込み、それは、体液に触れると感染するもので時間が経てば経つほどその効果は発揮します。無論吸収してもそれは効果が得ます。だから今回の作戦にあなたという魔術に特化した騎士にここを警護させたのです。万が一敵の手でゴーレムが操られて止む無く切りかかろうとするとこちらが被害を及んでしまいますからね」
そう言いながら無表情で先生は腕を組んだ。それを見たフェインズは一本取られたかのように髪をポリポリと掻く。
「・・・・・・・これは恐れ入った。まさかギルギスより恐ろしい人物が目の前にいたなんてな」
「とんでもない私は貴方やミリーニャさんのように戦闘には向いていません。私が持ってるのはただ守る力と治す力そして・・・・・病を処方する力だけです」
「病を処方する力ね・・・・・・・あんた俺が知ってるマッドサイエンティストより最悪なマッドサイエンティストのようだ・・・・・」
「褒めていただき光栄です」
先生はそれをおほめの言葉と思いそれを感謝する。フェインズもああいってるが先生の手がなかったらどの道危なかったので感謝するほかなかった。そして、そのほんの僅かな油断をキメラは見逃さなかった。
「何!?」
「グオオ!!」
それはほんの一瞬だった。フェインズ達が油断している間にキメラの一体が仲間のキメラを共食いする。その姿は無残で仲間の頭蓋を瀕死の状態で砕き吸収する。それによってそのキメラの傷は癒え筋肉が膨張する。そして周囲に黒いオーラを放ちさらに広範囲にいる魔族やホンの微かな力を持った魔物そしてミリーニャが倒したキメラでさえも吸収していた。
「こ、これは!?」
「まさかアレにこんな力を秘めていたとは」
フェインズ達が絶句する中キメラはよりさらに力を高め巨大化する。その巨大な力を見て先生は何かを仕掛ける前に何重にも結界を覆い重ねキメラの。行き場を防ぐ。
「ハアッハアッこれだけ数重に重ねれば出れないでしょう」
先生は息を切らしながら発動する。前の戦いでも結界を張った上にフェインズの魔力のバックアップを行っている為に消耗が激しいのだ。
「・・・・・・・先生いけるか」
「ええ何とか。貴方は今すぐに上級の魔術を展開し・・・・・・・」
その時結界の中からパリパリと不気味な音が鳴っている。先生は恐る恐るその場所を見る。それはキメラが覆っている結界を一枚一枚を豪快に食らいながら先に進もうとしていた。
「し、信じられない。結界を食べて進むなんて・・・・・くっ皆さん今すぐにここから離れて下さい」
先生は最後の力で振り絞りフェインズと自分を閉じ込めてキメラを食い止めるように結界を外側にはり村内を包んで村人を守る。そして先生は、膝に地を着き汗が滲む。
だがキメラはそれをお構いなしに結界を食らい村を進む。
だが、フェインズは魔術を展開し土の弾丸を繰り出し気を逸らす。
「・・・・・・・・『ランド・レーゲン』」
その連撃がキメラに直撃しキメラの視界はフェインズに移った。フェインズは疲労した先生やこれ以上村に被害を出さぬよう自らを囮にしてキメラの気を逸らすつもりだ。
そしてフェインズは高速術式を掛け速度を上げて遠距離で攻撃しつつ距離を保ちながらキメラを誘導する。もちろん今の彼には気を逸らし時間を稼ぐしか考えしかなかった。
「はあっ」
フェインズ距離を保ち周囲の土を集め小技で攻めながら時間を稼ぐ。だがキメラはフェインズを追いながら火炎のブレスを吐き森を火の海にさせる。もうフェインズには上級魔術をかける時間もマナはなかった彼は逃げながら神に祈る。彼は信仰者ではないが神頼みしかこれを打破することは出来なかったからだ。
「ここまでか・・・・・・・・・」
あれから数分の時間が経ち森の火はさらに燃え盛り火の海と化し空には魔族を寄せる深淵の霧で森は覆われる。その霧はアルマリアがカーディナスを倒した時に出現した非常用の術式だ。それによって遠方から魔族を引き寄せようとしているのだ。その霧を見たフェインズはこの世の終わりと思った。そして力が尽き火の海の中で速度を落としながら倒れる。そして後を追ったキメラは死にかけのフェインズに立ちはだかりそれを食らおうとする。
フェインズには意識はなく今自分が何をしているかは分からなかった。そして楽になりたいとも思った。
彼の視界には燃え盛る赤い炎と自分を食らおうとする黒いオーラを放ったキメラだ。
彼の人生は間もなく終わりを迎えるのと思い目を閉じる・・・・・・・・だがその時一筋の青い炎がそれを打ち払う。
「グオオオオオオオオオオオオオオオオオオ」
フェインズは、死を覚悟をしたが再び目を開けると青い炎がその深淵の霧や燃え盛る炎・・・・・・そしてキメラに襲い掛かり悲鳴を上げる。
その蒼い炎はチャチャル村だけではなくノルド山全体を覆い邪悪な霧やそれに関する魔族などを灰とかした。その炎は不思議なことに人体や木々などの自然に影響はなく燃えなかった。それはまさに奇跡。
この奇跡を生み出したのは他でもない自らを犠牲に全てを解放したアルマリア ピュールシュの功績だと言えるだろう。
そして青い炎はノルド山から完全に消え次にフェインズや村民そしてリュミエールが次に目をした光景は一年ぶりとなる霧が完全に消えた夜の世界だった。霧がなくなったおかげで空に星々が美しく輝かせている。
それをみたフェインズは、焼け跡に倒れながらその美しき星々を見る。
「・・・・・・・俺達やったのか」
「ええ。どうやら彼女たちはやってくれたそうですよ」
フェインズは声の先に目を向ける。それはヘカテ先生がフラフラになりながらも駆けつけてくれたのだ。
そして倒れて満身創痍のフェインズを治そうとする。
「動かないで霧がなくなった今こんな傷すぐに治りますよ」
言葉の通りに霧が消えたおかげでフェインズの傷は完全に癒えている。それを見たフェインズは安心したように息を吸った。
「なあ、先生よ。俺達どうやらとんでもない者の手を借りたようだな」
「ですが、そのおかげでこの村は平和になりました。これも神のお陰かも知れません」
「・・・・・・・・・・・・・」
そして二人は空を見上げこの戦いの立役者であるアルマリアの無事を祈りながら崩壊する魔城に目を向けた。
霧は完全に消えた中リュミエール達は魔城に向かう。ミリーニャはキメラの死闘後に二人の騎士がリュミエールを護衛しながら向かい回収する。死闘後のミリーニャは意識はなくリュミエールは結界で周りを見守りながら彼女の意識を取り戻そうとする。だがそれでも意識はなく重症だったが傷の回復を封じる霧が消えた今テミス先生が教わった回復魔術を発揮し傷を癒した。そして数分後ミリーニャは完全に目を覚まし完全に回復する。そしてさらにしばらく経ち周りの気配を察知して完全に敵の気配が消えた所で動いた。
「それにしても、信じられないなぁ。まさかアルマリアがこの山の霧をすべて晴らすなんてな」
「ああ、本当にすごいよアルは」
「・・・・・・・・・・・・・・・姉さん」
ミリーニャを先頭に霧が晴れた世界で崩壊した魔城に向かう。霧が完全に晴れたとしても夜で周りは闇に包まれているので警戒をして進む。目的はただ一つこの戦いを勝ち抜いたアルマリアを迎える為にだ。
だがそんな中リュミエールは連続で魔術を浸かった反動でふらついており倒れる前にガイはそれを支える。
「リュミ大丈夫か?」
「うん大丈夫だよ・・・・・・・オジサン少し無茶をしちゃったそれより早く姉さんに・・・・・・」
「・・・・・・・・喋るなおぶってやる」
そう言いながらガイは疲れ切ったリュミエールを背負い先頭に立った騎士の後を追うように走る。ガイもリュミエール同様に中身が別の人格な姪っ子でも愛していたのだ。その為に彼は大地を踏み進む。
「おい少し待て・・・・・・・」
そして、しばらくしてミリーニャ達は歩を止めて警戒をする。どうやら前方にただならぬ気配を感じているようだ。
足音がしその音がミリーニャ達の元にヒシヒシと近づいてくる。騎士たちは腰に下げてる剣を抜き構える。
そしてその姿が見える。その姿は、ボロボロで汚れた黒装束を纏ったミスティの姿だ。
それを見ると騎士たちはホッ安心し、ミリーニャは一足先に駆け抜けミスティに駆け寄った。
「な、なんだミスティ姉さんか~~~~脅かすなよ」
「アハハハハハハハハハハゴメンねミリーニャ心配かけてごめんね。あと急に抱きつかないで後ろにアルマリア君を背負っているから」
「え・・・・・・・・姉さんが!?」
「ミスティさん・・・・・・アルは無事ですか?」
「な、なんだあなた達も来てたの・・・・・・・・・それがアルマリア君は」
どうやらミスティはマナを放出し尽きたアルマリアを背負って下山をしようとしていたようだ。
ミスティはリュミエールの質問を黙り込みこわばった顔で言いにくそうな顔をしながら腰を下ろした。そしてその変わり果てて寝ている姿をいち早く見たミリーニャも口を開けたままだった。
「姉さん・・・・・・これもしかしてアルマリアなのか?」
「うん・・・・・そうだよ」
「え?ミリーニャさん姉さんはどうしたの!」
ミリーニャはには返答はなく沈黙したままだった。
リュミエールは姉の事が心配で背負ってくれたガイから離れガイと共に姉であるアルマリアの無事を確認する。
リュミエールの体は限界だが足がふらつきながらも近づく。
「・・・・・・・・・・!?」
そして次に見たアルマリアの姿にガイもリュミエールも驚いて声が出せなかった。それは、茶色で長髪だった彼女の長い髪は短くなり髪の色も肌の色もすべてが白く染まりやせ細っていた。
この姿は、無理に体中の魔力を放出した代償だ。アルマリアの青い炎は強力だ。だがいくら協力でも力のすべてを一気に放出すればただでは済まなかったようだ。
「アル・・・・・・お前こんな代わり姿になってやはりお前はリリーと同じ運命をたどるのか!」
ガイは意味深なことを呟きながら姪っ子の姿に目を背ける。
「リュミエールちゃんガイさん心配しないで君の姉さんは身体的には目立った外傷はないわ。だからゆっくり休ませてあげて」
アルマリアの表情は力を尽きはてスヤスヤと寝ていてその寝顔は可愛く見えた。
その寝顔を見るとリュミエールの様子は安心と同時に悲しみと言う感情があふれ出ていた。だけど彼女は今の感情を抑え変わり果てた自分の姉に手を差し伸べる。
「おかえり姉さん」




