チャチャル村防衛戦線 その3 虚影剣
この話は三人称視点です
「おりゃああああああ」
「な、何だこいつは?・・・・・・あああああああ」
「よしこれで11体目」
「す、すごい。流石ミリーニャさん」
霧漂う森の中、キャスケット帽を被った少女ミリーニャ カマベルは包帯巻かれた体で地を踏み駆け抜けて魔族の急所めがけて斬りつける。その華麗な身のこなしが背後を追ってるリュミエールがほれぼれとする。
そう、今ミリーニャを含む騎士は魔城にてギルギスと戦っているアルマリアを救援すべく向かっていた。
今この救援に向かってるメンバーはミリーニャ、ガイ、リュミエーと他の二人の騎士だ。ちなみにフェインズはこの場にはいない。なぜなら彼はチャチャル村に残りヘカテ先生と共に村の警護に回っているからだ。彼はヘカテ先生から魔力を経由をしてゴーレムを形成しそれを数体配置していたのだ。
先生は争いは好まず攻撃面の魔術は期待できない位が防御魔術やマナを回復させたり自分のマナを他者に変換をさせるサポート面な働きとして村の為にフェインズと行動していた。
そしてなぜ今回の救援にリュミエール達がいるとはいうとヘカテ先生がフェインズに協力をする為の条件の一つと言っていたのだ。ヘカテは、リュミエールがいの一番再開させた人物だ。危険ではあるが本人も強く尊重しているので医者としてはこれを断ることは出来ないので強く交渉した結果フェインズは渋々了承を得たのだ。そしてガイもそのリュミエールを守るべき家族として偽りの姉の勇士を見届けるべく同行に参加したのだ。
「ん~~~~~ん良し次行くか~~~~~~」
「ミリーニャさん待って今、マナを回復させてあげる」
リュミエールは緑色の魔力を、ミリーニャに打ち出し力を回復する。それが彼女を連れてきた理由の一つだ。
リュミエールは病弱で先生に診察を受けてもらっているのと同時に治癒魔法について教えてもらっているので回復魔法はお手の物だ。ましてや身体を回復が出来ない魔霧の中ではマナの回復は貴重だと言え、先生はこの事を事前に想定して彼女を加えたのだろう。
「ミリーニャありがとう君のお陰で大分体が楽になったよ」
「えへへへ。どういたしまして」
「すごいですね。あんな短時間にマナを回復させるなんて彼女はいい魔術師になれますね」
「なあ、当然だろうなんせ俺の姪っ子だからな」
リュミエールの回復魔法の力を護衛の騎士が褒め称えてるのをガイはどや顔でアピールする。そして、ミリーニャを先頭に駆け上がり一行は歩み続けた。だが、その時激しい爆発音が魔城にて鳴り響かせているのがここにも聞こえてきた。
「何だ?」
「これは・・・・・・・魔城の方からか・・・・こりゃ急いだほうがいいかもな」
「姉さん・・・・・」
どうやらミスティとカーディナスの激しい戦闘がさらに響き魔城の崩落を感じさせる。その崩落を見たミリーニャは、居ても立っても居られずマナを荒く使い周囲の霧を晴らし先に進もうとする。それをガイは彼女の手を掴む。
「リュミエール待て。そんなに走ると危険だ」
「叔父さん放して。姉さんが、姉さんが。あそこにいるんでしょ。私じゃ姉さんの役に立つことが出来ない。だけど今できることはこの周囲の霧を晴らしてミリーニャさん達のマナを温存することは出来る。だから急がないと・・・・」
「気持ちは分かるだがこんな急がなくともいいだろ。だけど今現実的な事を考えろ。焦って周囲に潜んでる魔物に襲われたら元も子もないんだぞ。お前も俺と同じこの山に育って生きていたんだ。だから落ち着け」
「・・・・・・・・・オジサンごめんなさい。」
「分かればいいんだ」
「そうそうボク達がいる限り君達には触れないように送ってあげるからな。だから焦らずゆっくり行こう」
「ミリーニャさん・・・・・・分かりました」
リュミエールは深呼吸をし落ち着きを取り戻した所で再び足を進める。だがガイは急に鼻をスンスンと音を立てる。
「ん?待って。何かいるぞ」
魔城の音が聞こえる中ガイの一声で皆が止まる。ガイは、臭いを嗅ぎながらこの森のかすかな異変にきずく。
「どうしたんだ?おじさん。何かおかしなことでもあったのか?」
「おい。何か嫌な臭いがする。感じないか」
「臭い?そんなものかんじな・・・・・・そうか進むにつれ霧が濃くなってるせいで気配をかき消されたのか。ほら、リュミエール落ち着いて行動した方が正解だった。それにしてもおじさんよくこんな微妙な臭い感じたな」
「馬鹿野郎。生まれてからずっとここで生きてきた山育ちを舐めるな」
ミリーニャも重点に探ろうとするとこの周りに微かにいる違和感気づく。それは周囲に張り付いているように感じた。
「ミリーニャ結界を張っておじさんを守れここからは騎士の仕事だ」
そう言いながらミリーニャは剣を抜き周囲に潜んでいる何かを警戒する。そしてリュミエールは周りに魔障壁を張り守りの体制に入る。他の二人の騎士もミリーニャの援護をしようと後ろに付く。
「なあ、君達もあの結界に入った方がいいよ。邪魔になるだけだから」
「ご冗談を、私達も騎士の端くれです。ここで逃げてるようじゃ騎士じゃありません」
「そうだ。どうせ死ぬなら騎士らしく誇りを持って死んだ方がいいな・・・・」
「はっ、腰巾着の癖に口だけは生意気だな。分かった。君達はミリーニャ達の周囲に付いて敵の掃討を頼む。ボクはそれ以外を・・・・・・・・だ」
そう言ってミリーニャは前線し潜んでいる何かに向かって進んだ。それと同時に潜んでいた魔族は姿を現し一斉に攻撃を仕掛ける。それを予測したかミリーニャは剣を輝かせ力を発揮しようとする。
そして時間が経ち勝負は決まった。攻めようとした魔族の一団は案の定切り刻まれ肉片がその辺に散っておりミリーニャはその返り血で赤く染めながらもほぼ無傷で何事もなかったかのように結界を張っていリュミエールの方に向かおうとする。
「す、すごい」
その斬りかかる時の狂気じみたミリーニャの姿に恐ろしくも感じながらもリュミエールは結界を解き力を回復しようとする。その力で赤く染まった返り血は浄化され清らかな姿になっていた。
「何度もありがとなリュミエール」
「うんそんなことないよ。私に出来ることはこれだけだから」
「そうだな・・・・・あと少しで魔城に着くそれまで心配した顔はやめてくれよ。兄貴に会うんだろ?」
「うん」
その時激しい戦闘で崩落しかけている魔城から赤く発光している。その光は、激しい地響きと共に発生しておりリュミエール達はその揺れにざわつかせている。
「何だよこれは?」
「地震?」
「いったい何が?」
警戒する中しばらくすると揺れは収まりそれと同時いよな妖気が周りを震撼させてることがミリーニャやガイにはすでに感じていた。ミリーニャはそれを避けるために気配遮断の魔術を仕掛け悟らせないようにする。そして魔城の外れにて術式からカーディナスが召喚させた三体のキメラはうごめきながら出現して叫ぶ。
「グオオオオオオオオオオオオオオオオオオ」
その轟音により周りの木々・・・・・この山全体を轟かせていた。そして三体のキメラは翼を広げさせ飛び立ちこちらに向かう。その風はミリーニャが仕掛けた気配遮断の魔術さえも吹き飛ばし村を攻めようとする。村にはフェインズと先生がいるが果たして止められるかはミリーニャには分からなかった。
「ミリーニャさんどうしますか。このままでは村が・・・・」
「このまま進む・・・・・隊長がフェインズが言ったんだ。『もし俺に何があっても決して振り返るな』と、だからこのまま先に急ぐよ」
「ミリーニャさん・・・・・・」
ミリーニャは静かにフェインズの言い残したことを思い出し先に進む。本来ならばミリーニャもその場で援護はしたかったが上の命令なので仕方なく受け入れることになった。
だがミリーニャ達が進もうとすると空に羽ばたいてるキメラの一体がミリーニャ達のほんの微かな臭いを嗅ぎわけて急に迂回し彗星の如くミリーニャの方に地面に突進しながらも向かっていた。その姿は獲物を追う獣の姿で呼吸を荒げながら睨み続いていた。
「ミリーニャさん・・・・・・どうしますか?」
「どうするって向こうから来たからには殺るしかないだろ」
「グオオオオオオオオオオオオオオオオオオ」
その雄たけびと同時にミリーニャは、飛び出し刹那に責め立て、周囲に衝撃が鳴り響いた。
そしてその衝撃と同時にチャチャル村にもすでに戦闘が始まっており、似ていのキメラの口から吹き出す火の息吹を繰り出し周囲の森や木々などが燃え盛りながらも村に襲い掛かる。だが、それその攻撃は先生が発生した結界によって防ぐ。そしてキメラの激しい猛攻で結界を張る中キメラが羽ばたいてるはるか上空にフェインズは黄土色の術式を重ねているのが、離れているミリーニャを援護する騎士にも見えていた。その黄土色の術式は周囲の風を打ち消し展開しようとする。そして内部からの一瞬の閃光と同時に内部から無数の土で形成された弾の豪雨が二体のキメラの元に降り注いでいるのがい見える。
「あれは、フェインズ隊長の得意魔術の『ランド・レーゲン』」
「しかも今回のは今までより範囲が大きい・・・・・これなら」
「おい!!!どこ見てんだ。よそ見してないでこっちに集中しろよ」
「すみません。ミリーニャさん」
「まあ、隊長の術に惚れるのはしょうがないけどまずはこれをやった方がいいと思うぜ」
剣の連撃を終えたミリーニャは一度戻りフェインズの美技に見惚れるた二人の騎士を注意し再び集中させる。そしてミリーニャの攻撃を受けたキメラはダメージを受けながらも土煙から飛び出しミリーニャ達を対峙する。
「そんなミリーニャさんの攻撃をあれだけ受けても倒すことが出来ないなんて・・・・・」
「中々骨があるじゃないか。ボクワクワクしてきたぞ。とりあえずあんたら二人はリュミエール結界に避難した方がいい・・・・・・・これは邪魔だから言ってるんじゃない。万が一ボクがこいつと相打ちになる時にリュミエールをアルマリアに合流させられるのは君達だけなんだ。だから・・・・・・・頼む」
「ミリーニャさん・・・・・・・・分かりました。ではご武運を」
そう言って護衛の二人の騎士は一度後ろに下がりリュミエールの結界に入りそれを見守る。それを確認したミリーニャはニヤリと笑い剣を向ける。
「ふふん。よしこれで本気が出せる。君も本気を出しなよ」
「グ、グ、グオオオオオオオオオオオオオオオオオオ」
その時キメラが叫びだしそれと同時に周囲に散らばった魔族の肉片をマナに変えそれを自分の口に吸収しようとする。それによってキメラの姿は赤く染まりだし周囲に湯気と赤いオーラを纏っているのが見えた。どうやらこのキメラは他の魔族を吸収し取り込むことで力を得るようになっていたのだ。その姿を見てミリーニャは口を開け茫然とする。
「きゅ、吸収してより強くなったか・・・・・・・本気を出せとは言ったがこれはね卑怯だろ」
「グフフフフフフフフ」
「・・・・・・・・・・速っ」
怪しげな笑いと共にキメラは高速の動きで飛び出す。ミリーニャもその予想外の速さで避けるのが間一髪の様だった。そして避けるのも束の間キメラは更なる連撃でミリーニャを責め立てる。そのスピードはミリーニャの高速の斬撃と同等でミリーニャは魔術で強化した剣で防御するのに精一杯だ。
「く、ボクが速さでここまで翻弄させられるなんて・・・・・・」
ミリーニャの得意戦術は、高速の術式で瞬時に相手の急所を狙うのがウリだ。だがその得意のスピードでここまで追いつかれるのは屈辱的でならない。
「くそ、こうなったら・・・・」
「!?」
ミリーニャはさらに太ももに術式を重ねさらに加速し森の中後退し間合いを取る。そして自分の剣から青く覆ったマナの塊を取り出そうとする。それを、瞬時に剣に変化しそれを宙に浮かし纏わせる。そしてその内の剣を掴み二刀流としてシフトする。
それを見たキメラはキメラは、口からオーラの塊を無数に繰り出しそれをミリーニャに放出しようとする。その速さは銃の弾丸をも軽く凌駕するほどの速さで弾先は見えない度の早さだった。だが、二刀流となったミリーニャはそれを軽々しく避けたのであった。
「虚影剣・・・・・・これがボクの奥の手だよ」
それを発動したミリーニャは音速の如く森を忍者の如く駆け抜けあっという間にキメラの正面に立つ。
「グオオオオオ」
「遅い!!」
キメラが反射的に強化した鋭い爪でミリーニャに斬りかかろうとするがそれは、ミリーニャの太刀筋によって逆に切りおとされていた。そして、キメラの腕が地に落とされる間、彼女の神がかる二刀流の斬撃の嵐がキメラのスピードを凌駕するほどの連撃だった。キメラの強化された皮膚は硬度だったがそれは、高速の斬撃によって削がれてしまう。これがミリーニャの奥の手『虚影剣』の力だ。
それは、触れた剣を模写し投影することで、スピードを倍近くにも上げる。それが剣を出す数が増えることにだ。ただしこれには弱点があり時間制限はもちろんの事術を解除することで極度な疲労感を与えることになるからだ。それが数日前、霧に迷った時にインヴィー率いる魔族に敗北した理由の一つだ。あれは、相手の実力を知らない状態で突撃することで奴が持ってる魔術を打ち消す剣『アビスサイフリート』を触れることによって術が強制的に解除されて敗北に至ったからだ。
「グオオオオッッ」
その激しい斬撃の嵐で相手の手足を削ぎ速さと攻めを失わせることで、ミリーニャはいよいよ急所である首をおとす作業に至った。キメラの首の周りには他の部位と比べるとかなりの硬さだが、ミリーニャは、限界ながらも賭けでより多くの剣を投影し、加速し、より攻撃力を高める。
「これで終わりだぁぁぁぁぁ」
この掛け声で勝負が決まる。ミリーニャは、周囲の森を徘徊し速度を十分に高めそして同時に剣に魔力を込めて大樹を踏み込んで斬りかかった。
「!?」
鈍い音を立てながらキメラの首と胴体は、赤い地で吹き出しながら宙に舞い地面に落ちる。ミリーニャは、素早くキメラの亡骸の元に行き息を耐えたのを確認すると魔術で作った剣を解き膝をつき倒れた。
そして彼女は空に手を挙げ他の騎士に倒せたのを報告するために天に魔力を放出する。激しく呼吸し汗を搔きながらミリーニャは灰色の空の中救援が来るのをボーーと眺めていた。
「ハアッハアッ・・・・・・キメラ一体でここまで苦労するなんてこれは相当ヤバいぞ。フェインズ」




