ヒーローは突然とやってくる
時間は夕暮れとなり、人気が少ないノルド山のとある山村に賑やかな光が灯っており、周りは賑やかとなっていた。というか賑やかなのは魔族だけでそれ以外は、死んだ魚のような顔をして覇気がなかった。村の広場の中心には、大量の食料が供えられそれ全ては魔族に捧げるのであった。
無論それを捧げると外部から連絡を途絶えた村にとっては、貧困が激しくなりいつかは暴動が起きるだろう。
それが魔族の狙いだ。勝手に自滅をさせ絶望する下等生物を見るのはこれ以上ない娯楽と言うべきだろう。
加えて生贄に捧げる幼女もいてこれ以上ない歓喜と言えるだろうか。
奴らに慈悲などないあるのは、種の繁栄ただ一つのみだ。それだけが奴らが持つ生存本能と言えるべきだろう。
そんな中、今回の生贄となるリュミエール ピュールシュは、儀式の為に自室で白いドレスを着こなし長い髪を括りあげ準備をしていた。彼女の顔は、すでに決意が固まっており迷いはなかった。リュミエールは、その姿で魔城を見すえている。
そんな中、ドアから叩く音がする。
「リュミエール入るぞ」
「・・・・・・・うん」
リュミエールの許可を得て、叔父であるガイは中に入る。彼は、浮かない顔をしながらもそれを顔に出さずに普段通りに声を掛ける。
「お、オジサン・・・・・どうかな?」
「ははっ、似合ってるよ。お前の母さん似ていて美しく見えるよ」
「うれしい・・・・」
リュミエールは、涙を流しながらもその言葉を聞いて嬉しく感じた。その表情にガイは一層苦しく感じたようだ。
「??オジサンどうしたの」
「すまない・・・・・・・今の俺じゃどうにもならない。村の重役側は、完全に魔族側の意向に尊重していいるし、ミスティさんは、姿をくらましているし、くそっこんなことをしてもさらなる生贄が出るばかりなのに・・・・」
ガイは、壁を殴りつけ怒りを現わしていた。
「オジサンは心配しないで、私は大丈夫だよ。私が生贄になることで次に儀式までの三か月時間があるの。それまでにミスティさんがこの霧を解析させて外部の人が、助けてくれるよ」
「・・・・・・リュミエールすまない」
「叔父さん・・・・・・・今だから言うけど母さんがもし生きていれば、私は長く生きいられたかな」
「ああ、お前の母さんは強い。ガキの頃から兄である俺を上回りあっという間に村一番いやこの地域でトップを飾っていた。そして王都の騎士団に入りわずか二年で指揮官になり後に『炎舞の白騎士(ブレイブ二ル・ブランリッター)』と言う異名をもつあいつならギルギスを倒せるさ」
「じゃあ姉さんは・・・・・」
「アル・・・・かあいつは無理だ。あいつの力はお前も知ってるだろ。言っては悪いが、母さんの足元さえ及ばない。例えあの妙な炎を持ってもな」
「そう・・・・・」
「リュミエール・・・・・昨日勝手に抜け出したのは知っている。アルにあってたのだろう?」
「な・・・・なんのことかな?」
それを聞くと、リュミエールが軽く反応した。ガイはその嘘を見逃さなかった。
「とぼけるな。お前が嘘をついてることは分かっているんだ。そうなんだろ」
「・・・・・・そうだよ。私は昨日姉さんにあったよ。それが何か?」
「そうか・・・・・アル元気にしてたか?」
「うん元気だった。だけど姉さんは、どうしても私を助けるって聞かなくていま村はずれの村に隔離しているの」
「そうか」
ガイの顔は寡黙な表情をしていたが、アルマリアが無事だと聞くと口が緩んでいた。その時、ドアから叩く音がする。
「ピュールシュさんそろそろ始まります」
「オジさんそろそろいこか」
「ああ」
声の主は、騎士団の一人フェインズだった。二人は、腰を重くしながらも階段を降り、ガイが扉を開けるとフェインズをはじめとした。3人の騎士がこの霧の中で迎えていた。その騎士はフェインズと同様魔族に拷問を受けた後がそこら中にあった。
「フェインズさんその二人は?」
「はい、残りはまだ療養中ですがこの二人は、一応復帰です。といっても万全の状態ではないですが・・・・・」
フェインズは、普段の口数がすくない頼りないイメージとは違い礼儀正しく頼りがいがある姿勢で答える。騎士内では彼との普段のギャップが違くて驚愕ものもいるだろう。
その二人の騎士もそのギャップに慣れているのであまり気にしなくピュールシュ家に普通に軽く会釈をする。万全ではないとはいえ、騎士だ。浮かれ回って誓約を破り暴れ回る可能性がある魔族に対しそれほどとなく戦えるくらいの実力だろう。
「フェインズさんあの姉さんとミスティさんは?」
「こらリュミエール」
「ミスティさんは村長側との重要な話が・・・・・・それとアルマリアさんは、数重の結界に幽閉しており、さらにミリーニャに監視をつけたので大丈夫でしょう」
「でも仮に破れることは・・・・」
「・・・・・・・リュミエールさん静かに彼女が生きてるのは禁則なんです。ここではそういうことは止めてくれませんか」
「ご、ごめんなさい」
フェインズは、自分の口を押え警告をする。それに対しリュミエールは申し訳なく思っていた。
「ではとにかく広場までこの二人がお連れします」
そう言って部下の二人は、リュミエールを連れて濃い霧を払いながら広場まで案内し、フェインズはガイと二人っきりに取り残された。
「なあ、本当なんだなさっきの話」
「なんですか?」
「アルが幽閉されている話。あいつはこんなことで大人しくなる奴じゃ人だぞ」
「・・・・・・・・・そうですね。確かに彼女は、結界を壊しますね。だけどそうさせません。その時は手足を切り落としても大人しくさせます」
「うそだな・・・・・あんたは嘘ついてる」
「??」
あんたはこれからとんでもない作戦にアルを参加させるそうなんだな」
「はて?おっしゃる意味が分かりません」
「俺はな昔から嘘をつく人間とつかない人間が分かる。ついでにあんたが本当の自分を隠してることがな」
フェインズは、ため息をつき誤魔化そうとするがガイには嘘は通じないようだ。
「・・・・・・ということはあなたの姪、アルマリア ピュールシュの中身が別だってことも・・・・・」
「無論知っている」
「そのことはリュミエールさんには?」
「恐らくあいつは知らないだろう。知ってるのは俺だけだ」
「あなたは、実の姪がすでに死んで別のなにかがその体を使っていることを受け入れているのですか?」
「・・・・・・正直まだ受け入れてない。だけどあいつはリュミがここまで生きているのには必要な存在だ。そこに俺が割り込んではいけないんだ」
「そうですか。では、これから私・・・・・・・いや俺達がやることを教える・・・・・・あんたは静かにそれに従え」
「おう」
「ではこちらに・・・・・・・ついてきてください」
フェインズは、段々と口調を変えいつものテンションの低い自分に戻りあくびをする。ガイと共に作戦を実行に移した。
そして場所は、広場に移りリュミエールは他とは違い霧が晴れてる広場の中心に食料の前に台座に座り儀式の始まりを待っている。
この濃い霧の中になぜか広場だけ晴れてるのはそれを発生させる魔術師の仕業だろう。それにその中に不気味に松明の火が灯り一層雰囲気を悪くさせていた。
広場の周りに魔族が見張り警戒する中、ついに儀式が始まった。
儀式の内容は基本シンプルだ。まずは踊り子が魔族の見守る中に踊りを見せその後に、生贄になる者がこの村に代々伝わる清酒を一杯飲み、その後魔族が用意した荷車に食料を詰めその後馬車で生贄の対象を魔城に連れて行くのが一連な流れだ。そしてその一つ踊り子の舞が終わり、次は、生贄の対象が酒を飲ます時だ。
トカゲ顔のした魔族が村に伝わる清酒を小さな器に注ぎ、それをリュミエールに渡す。
「どうぞリュミエール様」
リュミエールは、静かに受け取りそれを飲み干した一礼をする。
「いいぞぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ」
「さあ、そろそろ終わりの時だあああああ」
それと同時に魔族が下品に吠える。正直村人側にはどこが盛り上がるか分からないが魔族側は、そろそろ終わりを迎え愉悦に浸っているようだ。
そして儀式も佳境。広場に馬車と荷車が用意されている。村人は、静かに食料を荷車に移動する中、リュミエールは、迷いもなく馬車に移りこんだ。
「おら、さぼるな」
「ぐっ」
魔族が運びの遅い村人に対し鞭を入れる。その姿はまさに悲惨だ。村人が言葉通りに奴隷と言える存在に扱っていた。
それもそのはず、魔族にはそのような良心も中あるのは自分の欲の為に生きているはずだろう。
リュミエールがいる場所の中でもその悲鳴は響きわたる。彼女はそれを悔しく耐え忍んでいた。
「よ~~~し全部運び終えたようだな。そろそろ行くぞ」
荷物が一通り運び終えると、合図をし馬車が動き出す。リュミエールは今まで生まれ育ったこの村を眺めみる。リュミエールにとっては、この村の思い出は悔いのない存在だろう。このように生を受け姉や両親や親友との貴重な時間そしてその別れを浸りながらこの村の風景をこの瞳に残した。
「さよなら・・・・・・私この村に生まれて良かった」
リュミエールは号泣しながらも馬車は、走り続ける。そして馬車の操縦者が声を掛ける。
「ヒヒヒヒヒヒ魔城についてもお楽しみはあるから涙はとっておきなされ」
魔族は、不気味に笑いながら魔城に段々と近づいていた。馬車が通る山道は、木々によって塞いでいたが、何者かの魔術によって大地が底なし沼になったが如く沈み始め道が出来上がり馬車と荷車は、その道を進み始めた。
そしてしばらく山間が揺れながらも馬車は、いつの間にか魔城にたどり着いた。そして、馬車が魔城前に来るのを確認すると木々が突然地面から浮き出だし、元の地形に戻りだした。
そして、馬車の前にはあの青い炎さえ封じられた。巨大な結界がある。その結界が馬車の操縦者の合図にによって解かれ奥に進みリュミエールは、中に入る。
魔城の中は妙に不気味で灯りが灯ってなかった。リュミエールは、馬車から降りるとトカゲ顔の腰の引けた魔族が目の前に現れ、案内した。
「さあ、こちらへギルギス様がお待ちですぞ」
リュミエールは、頷き、魔族に連れて行かれた。
中は凄く入り組んでいてまるでダンジョンの様だった。迷うと恐らく生きて帰らないほど恐ろしく見えた。
それでもリュミエールは、魔族の後についてきた。
「ここです」
「・・・・・ここが?」
「左様です。ここが魔王様の間でございます。
魔族が案内されたのは、巨大な扉だった。恐らくこの中に魔王がいるだろう。リュミエールは、深呼吸をしながらも扉を開ける。
中は、不気味な光が灯しながらも複数の魔族が頭を下げ控え道が出来ている中その先の階段の奥の二つの玉座に不気味に漂う魔族が、二人座っていた。
「・・・・・・来たか」
ドスを聞かせた声で玉座に座っている骸骨の容姿をした魔族が声を掛ける。どうやら奴が魔王ギルギスのようだ。
「・・・・・・・あなたがギルギス様ですか?」
「左様・・・・・儂こそが魔王ギルギス。そなたが今回の生贄リュミエールかな」
「・・・・・・・・・・・やった」
ギルギスが自分の名前を名乗るとリュミエールは、ニヤリと笑いだした。
「おいギルギス様がそう言ってんだ。返事をしろ」
脇に控えていた魔族の一人がリュミエールに近づいていた。その時、
「へ・・・・・ぎゃああああああああああああああああああ」
「何だ何事だ」
「!?」
魔族側にも今何が起きたか分からなかった。リュミエールに注意しようとした。魔族の一人が青い炎に無残に焼き焦がれている光景だった。その魔族はしばらく悶えながらも数秒後には灰になっていた。
そして、リュミエールかと思った幼女はは、姿を変えいつの間にか二人の女に変わっていた。同時にその一人が白いドレスを脱ぎ捨て、青い炎をまき散らした。
その正体は絶望の闇を燃やし消す存在となるアルマリアと魔術師ミスティの姿だった。
そう今まで見せたリュミエールは全部ミスティが見せた幻に過ぎなかった。アルマリアは、それに気づかなかった鈍感の魔族に対し笑いが漏れてしまったようだ。
そして白いドレスは、ばさりと落ちたと同時にアルマリアは、髪をポリポリとかき狂気じみた顔で決めた。
「こんばんわ魔王様、さあ燃えるくらいの激しい夜にしようや」
今回は初めてですが三人称視点で書きました。
未熟ながらも頑張ったので楽しめたら幸いです。
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