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青百合戦記  作者: 夕凪
運命を紡ぐ蒼炎編
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たった一つのだけの力

「痛ッ先生もう少し優しくできませんか?」

「ほら我慢しなさい女の子でしょ」

そのセリフ男に言うセリフじゃね?まあ、俺は中身は男だけどな。


今俺がいる場所は、チャチャル村に唯一存在する診療所にいる。俺は、拘束されたミスティの仲間を含めて治療されている。

俺は軽傷で済んだが拘束された6人は身体的、心身的にも深いダメージを受けているようだ。

そりゃそうだ、魔族に拷問を受けているからな。平然にいる方がおかしい。

ここの診療所の長の先生は、以前俺とリュミエールを見てもらったおばさんで、今負傷者の治療を助手と共に治療をほどこしている。

中には拷問のトラウマでベット上で暴れまわっている人もいる。その人には拘束しながらも回復魔術を使い、ケアをしてもらっている。


そんでもって今俺は、騒ぎ声と治療薬が漂う空間でその3人の弟子の中でもっとも新米の若いお姉さんの助手に治療を受けてもらっている。

鏡で俺の外見を見ると頭と足など数か所を包帯でぐるぐると巻かれ、頬にガーゼで貼られている。これじゃあ数日前と変わらないな。


「はい、これでおしまい。申し訳ないけどこれから先生の手伝いがあるから大丈夫かな?」

「はい、ありがとうございます」

そして、治療も終わりその助手は他の人の治療を行っている。これ以上ここにいても迷惑だろう。俺は、横に寝込んでうなっている人を見てそう思う。

この医者も新米とは言え、非常によくやっている。他の患者の治療の合間に俺を介抱するなんて憧れてしまう。それじゃ帰ろうか。



「じゃあ失礼します」

「ちょっと待って。アルマリアちゃん」

帰ろうとすると、治療中を抜け出し先生が俺を呼び止める。表情は、いつも通りの顔だが恐らく内心は疲れているだろう。



「調子はどうですか?」

「なんとか大丈夫です。それより今忙しいのでしょう。ここで手を空いてもいいのですか?」

「ははっ。本当はダメですけど、今日は非番だけどこんなに急患者がいるから休むわけには行けませんね」

「大変ですね」

先生は、目の下にくまが出来ながらもそう言う。



「それより村長から伝言があるんだ。治療が済み次第。村長の家に来るようにって」

「そうですか・・・・・・」

村長からの呼び出しか・・・・・・大体想像できるがな・・・・・


「あと一つ、あなたは、いつあの魔法を覚えたのですか?」

先生は、疲れながらも真剣な眼差しでそういう。

「あれってあの青い炎ですか?」

「そう・・・・・あの広場には途中からですが、私もいました。あれは一体何ですか?今までの経験上あんな色の炎は見たことはない」

「経験上って先生は、今までいろんな場所に旅出てたんですか?」

「何を言っているんですか。それは私のかつての弟子だった。貴方の父親が知っているでしょう。それより私は、炎の事を聞いているんです」

先生からは、ほんの少しだけどいらだちが見えるようだ。


「・・・・・・・・・・分かりません」

「そうですか・・・・・・では私は戻ります。だけど一つ覚えておきなさい。物事には常に物量や魔道などの法則性がある。だけどあの炎には法則性はないと言える。むやみにそれを使わない方がいいですよ」

そう言って先生は、白衣を背にし最後にこう言う。

「青い空を久々に見れてありがとう」

手を振り現場に戻った。



俺は、診療所を出ると、複数の男が待ち構えた。どうやら村長の使いだろう。

「アルマリア。行こうか」

「はい」

俺は、即答し男達に村長の家に連れて行かれた。




数分後俺は、プレッシャーが充満する村長の家に出た。内容は予想通りこの村外への追放だ。

俺が村長の家にいるとすでに村長とその関係者とあとミスティが静かに俺を迎えていた。

内容はこうだ。俺が広場で騒動を起こした後、魔族側から文が送られてきた。

文にはこう書かれている。



『此度の騒動我らの責任でもあるが、そちらにも責任がある。平和を維持してほしいならこのような騒動は控えた方が身のためだ。今回は身を納めるが次はないと思いたい。では、今回の儀式も成功を約束したい』


これが届き村長とその脇にいた村の重鎮も俺をこの村の災厄だの疫病神だの罵ってくる。

無論俺は反論はしない。このような頭が固そうな老人方は、何か言えば、後でうるさくなるし返ってややこしくなるからあえて俺は沈黙を貫く。

ミスティからもこの件については、何もいわずかたくなに沈黙して、霧の状況について説明するだけだった。俺とは目があったのは最初だけだ。

だが最初顔を合わせた時に安心した表情をしていたからたぶん内心俺の事は感謝しているだろう。


ここの村民は、これ以上被害が増大しない為にあえて俺を追放したのだろう。だが逆に俺は、誰の迷惑もかけずに奴らが殲滅できるはずだ。この青い炎でな。



それにしてもすごい霧だな。俺は村長の家の前でただ茫然と突っ立ってるだけだ。

行きは、村長の関係者の霧払いの術で進めることができたが、俺には、霧払いの術は使えない使えるのはあの青い炎だけだった。

まずいな。帰りに送ってもらえるという手があるが、あんな重苦しい空間に入りたくないな。だったらミスティを待つか、だが、今中でこの霧を打破する方法を考えてるために村長達と相談している大分時間がかかるだろう。



ん?俺は、あることを思い出す。それは、初めて青い炎を出した時だ。あの時確かほんの一瞬だけ霧が晴れ空に青い空が見えた。もしかしてあの青い炎を使えば、霧が消えるのではないかと俺は思った。



「出来るか・・・・・・」

俺は、あの時のイメージと同じ感覚で手を合わせ青い炎を思い浮かべる。すると、数秒もせずに手の平に青い炎がメラメラとともっていた。

その炎は不気味ながらも妙な温かさを帯びていた。俺は、その炎を片手で持ち、軽く手を振るった。

すると、不思議か濃い霧が青い炎に焼かれているのが見えた。霧は、数十秒後に、元の濃さに戻ったが、間違いないこの炎は、霧を燃やすことができるのだとを。


「よし、いけるぞ」

そう思った俺は、周りの道に炎を灯しながら青い炎の道を作る。そして後ろを向け村長の家をみる。

ホントはリュミエールや今まで生贄になった幼女やミスティの仲間を放置したこの村が憎い今でも燃やしたいところだ。

だがそれをしたら、俺の心が焼かれてしまう。なぜか脳裏にそう思い始めた。

俺は、燃やしたい心を押し殺しながらもゆっくりと家に戻るのであった。



村長の家から歩き数分後青い炎を帯びながらも実家に着く。

俺は青い炎を解き、家のドアを開けようとする。すると、向こう側から誰かが、出ようとした。

ドアにぶつからなかったが、筋肉モリモリのヒゲ面のオッサンと顔を合わせた。



「あ、すみません」

「なんだ。アルちゃんか。久々に見るね。じゃあ、ピュールシュさん失礼しますね」

「また、後程」

その男は、叔父さんに、挨拶して、霧を払いながらここを後にした。



「叔父さん。あの人は誰ですか?」

「あの人は、前回生贄になったエリゼちゃんの父親だよ。今リュミにお見舞いの果物を持ってきた所だ。

俺は、玄関に入り、テーブルに置かれている果物袋を見る。中には、オレンジやリンゴが入っているようだ。



「あの人は実家は、果樹園をやっていてね。この霧では、果物が育たないから、代わりに耐熱魔法で果物を栽培しているんだよ。まあそれはここだけではなくこの村の人全体がやってるけどな」

叔父さんはそう言いながら居間にある椅子に座りテーブルに手を置く。



「どうだ?痛むか?」

「大丈夫です。それよりリュミエールをの調子はどうですか?」

俺はリュミエールの方に話を向ける。あいつはあの後気絶をして、自室に寝込んでいるからな。無理もない目の前で人の首が飛ぶ所を見てるからな。


「あいつはまだ寝込んでいるよ。なあに大丈夫だ。もうちょっとしたら起きると思うからな」

叔父さんは表情が柔らかくして言った。

「あの、リュミエールの様子を見に行ってもいいですか?」

叔父さんは、コクリと頷いたので、 リュミエールの様子を見に行く。あいつの部屋は、確か一階の居間の向かい右側の子部屋だったな。まず、あいつの様子を見てみるか。



「リュミエール入りますよ」

俺は。リュミエールの部屋にノックする無論返事がないのでゆっくりとドアを開ける。

部屋を開けると綺麗に部屋が掃除されて、清潔感が出ている。俺が使用しているアルマリアの部屋よりキチンの整理していて、まさに女子の鏡と言うべき程整っていた。

そしてその部屋ののベットでリュミエールは静かに眠っていた。その表情は、年上属性の俺に魅了されるほどの可愛さがあった。その整った小顔に綺麗な容姿につやつやの茶髪。ヤバいな・・・・・・ロリコンに目覚めそうだ。



落ち着け落ち着け仮にも俺は姉であいつは妹だぞ。どこの世界に妹に手を出す姉がいる。中身は男だが俺は、手を出さんぞ・・・・・・・・たぶん。



「ん・・・・・・・・姉さん」

リュミエールは、寝言で俺の事を呼んだ・・・・・ありがとうリュミエールお前のおかげで俺は、短い時間だったけど、初めて妹を持って嬉しく感じる。そう思った俺は、寝ている彼女の頭を優しくなでた。

「リュミエール・・・・・・・・ありがとう」

俺はそう言い残しリュミエールの部屋を出て叔父さんのいる居間に戻った。



「アル・・・・・・あいつはどうだった」

「叔父さんの言うとおりにぐっすり寝ていました」

「そうか・・・・・・」

俺は、椅子に座り叔父さんと目を合わせる。


「アル今日は・・・・・・俺が作る。あいつもああなったから俺が作るしかないだろう」

「私が作ってもいいですよ」

「馬鹿野郎・・・・・・お前が作ったらリュミはより体調をおとすだろ・・・・・」

「ははっそうですね・・・・・」

「そうですねって。やっぱ自覚あるだろお前飯作るのが下手って」

叔父さんは、今まで表情を崩さなかったのにここに来て笑いが見えた。やっぱこの何気の無い会話がいいなと俺は思った。そしてその中で叔父さんは本題を切り出す。



「それより、お前先生から聞いたぞ。村長に呼ばれたんだってな?」

「はい、先程村長の家に呼ばれました。そしたら・・・・・・」

「追放か?」

叔父さんは俺が言う前に予測して発っした。



「どうしてそれが分かったんですか?」

「大体検討がつく魔族に逆らったからな。」

「・・・・・・・・・・・・・・・叔父さんはあの時、私と同じ行動ができましたか?」

「何?」

俺は、演じながら本音をぶつける。



「こんなことされて手を出さないことはおかしいことです。同じ村人が何人も死んで反抗せずに魔族に従うなんて間違ってます。この村に団結力なんてないのですか?皆さん意気地なしです」

「・・・・・・・・・・・・確かにここにいる連中は意気地なしだ。それは否定しない。俺もあの時お前を助けることは出来ないからな。だけどみんな耐えているんだ。エリゼちゃんの父親だってそうだ。娘が犠牲になった後、嫁さんがショックで倒れ、介護をしながらも仕事に励んでいる。内心は魔族が憎いんだと。だけど耐えているんだ。隙さえあれば反撃が出来る。皆それを持っているんだ」

俺は、椅子から立ちあがり、ブチ切れる。なんだか腹が立って来た。



「じゃあいつ反撃するんですか。言葉だけなら何とかなる。じっと待ってるだけじゃ何も変わらない。だけど私なら出来る。叔父さんも見たでしょう。あの豚共を丸焼きに出来た。この青い炎さえあれば何とかなる。」

素が見えながらも俺は、怒りを見せる。それに反応したか自然と体中に青い炎が纏っていることを不思議と感じた。叔父さんはそれを見ても動じずに会話を続ける。



「確かにお前の力はすごいよ・・・・・・だけどそれだけじゃあの魔王には勝てない。なぜなら・・・・・・」

「知ってます。『災厄の審判』という大戦に参加した魔族なんでしょう。それがどうしました。それが怖くて大切なものは護れない。私がそれを証明します」

俺は、青い炎を纏いながら慢心した表情で家から出ようとドアを開ける。



「おいアルどこにいるんだ?」

「決まっているでしょう。今からあの山に見える城にいる魔王ギルリスを含む魔族を皆殺しにするんです」

霧が漂う世界で青い炎で周りの霧を燃やし、山のふもとにそびえたつ古城に指を示す。それを見た叔父さんは、声を荒げる。



「馬鹿野郎ッッ何考えてんだ。無茶は止めろ」

俺は、怒鳴る叔父さんに今度は自分の口に指を示す。

「シーーーーーーあまり叫ばないでください。リュミエールが起きますよ」

「うっ」

叔父さんはそう言われると悔しそうに口を閉じた。



「とにかく私は、追放された身・・・・・・帰る場所はありません。なら、前を進むしか道はないんですよ」

「アル・・・・・・・・だが、もうすぐ日が暮れる。魔族は夜行性なんだせめて日が明けてからの方がいいんじゃないか?」

「とにかく私は行きます。ではさようなら」

俺は、叔父さんの言葉を無視をし背を向ける。今眼前あるのはあの古城にいる魔王だけだ。俺は、それを目指すために走り続けた。















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