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くるまのまるく 

作者: さくら

くるまのまるく

お父さんもお母さんも早くに亡くなってしまいました。

今のまるくは心も頭の中もくちゃくちゃです。

毎日よく怒られます。

今日もまた怒られました。

それはまるくにはいろいろルールを教えてくれるお父さんとお母さんがいないからです。

よくお父さんとお母さんと一緒に遊んだ浜辺へ、むしょうに行きたくなるので今日も海に向かいました。

すぐ出あいがしらに、同級生とそのお父さんとお母さんがお出かけしてる姿を見てすれ違うときに小さく

「おはよう」といいました。「おはよう」と返ってきました。まるくは振り返って、いいなぁと思いました。

途中、細い道で大きな大きなトラックが困ってました。

まるくが、こわごわ「どおしたの?」と聞くと

その大きな大きなトラックは

「道を間違えたんだ。」と答えました。 

道が細いのでバックしながら、もとの大きな道に戻りたいと言うので、まるくはうしろから誘導してあげました。

無事もとの広い道に戻れて、まるくと大きな大きなトラックはホッとしました。

「ありがとう」と言ってくれました。

よく見ると大きな大きなトラックのことをとってもかっこいいと思いました。

「大きくて かっこいいなぁ」

というと大きな大きなトラックは 

「いやいや大きすぎて、ときどき今日みたいに困るんだ。君みたいに小回りがきくほうがうらやましいよ」といいました。

大きな大きなトラックは地図を開きながら

「ここに行きたいんだ」と地図を見せてくれました。

まるくはあまり遠いところへは行ったことがありません。

地図があると、あちこちに行けることを教えてくれました。

近くに図書館があって、そこへ行くと地図や本を貸してくれるということも教えてくれました。

道を確認すると大きな大きなトラックは目的地へ向かいました。

まるくはそのまま、おもしろそうなので教えてもらった図書館へ行ってみました。

そこはいろんな本が、それはそれはたくさん置いてあって むずかしそうな本や分厚い本、薄っぺらい本や、前にお母さんが読んでくれた本、そしてマンガもありました。とてもうれしくなりました。

今日のところは、とりあえず地図を借りて帰ることにしました。もしかしたら図書館みたいにおもしろいところが地図にのってるかもしれないと思ったからです。

帰り道、道を間違えてしまいました。

ふと見るといつも遠くからしか見たことない電車達がたくさん止まってました。

電車の車庫です。

フェンスごしに、まるくは電車に話かけてみました。

「いつも遠くからかっこいいと思ってみてたんだ。線路にのってずーっと遠くまで行けるんだよね。いいなぁ。うらやましいよ。」

すると 電車は 

「いやいや、ぼくなんかより、あの新幹線くんのほうがもっともっと早く走れて、遠くまで行って、とってもかっこいいんだよ」といいました。

それをそばで聞いてた新幹線はいいました。

「わたしは、しかれたレールの上しか走れないんだ。君みたいに、あちこち行けない。君はいいなぁ。自分で道を決められる。」

まるくは「新幹線さんのほうが絶対いいよ。かっこよくて速くて遠くまで行けてうらやましいよ」と返事しました。

まるくは大きな大きなトラックや 電車 新幹線を見たあと 自分がなんだか ちっぽけに感じてきました。

ふと気がつくと、道に迷ってしまいました。

向こうのほうに飛行機が飛び立つのが見えました。

近づいていくと飛行場がありました。

フェンスの奥に飛行機がいます。

飛行機のあまりのかっこよさに、まるくは息をのみました。

道に迷っていたことも忘れて見とれていたら飛行機が話しかけてくれました。

「どうしたの?」

まるくはハッとして 

「ぼくも あなたみたいに かっこよく空高く飛んで 遠くまで行きたいです。いいなぁ」と返事をしました。

「空を飛ぶのは仕事だよ。きびしいルールがたくさんあるから すごく勉強しないといけない。」間を置いて

「空なんか飛べなくても君のほうが自由で好きなところへ行けるよ」

まるくはびっくりしていいました。

「好きなところへなんか行けないよ。飛行機のように遠くの外国へ行けないよ。」

飛行機は 「外国へ船で渡れるよ」と、まるくに教えました。

「あそこに見える港へ行ってごらん。船がいっぱいだよ。ぼくは行けないんだ。君はいいなぁ。」

まるくは困惑しました。

お父さんとお母さんが亡くなって、いつも誰かに怒られてきたぼくのことがうらやましい?

一人でこんなに遠くに来たのは初めて。

地図を開いて 現在地を確認しました。「飛行場飛行場…あったあった。あの港はこれか。もう少しなら足をのばしても大丈夫そう。あの港へ行ってみよう。」

港に行ってみたら 大きい船や中くらいの船や小さい船がいっぱいでした。浜辺から見える船は小さいけれど、近くから見ると飛行機よりもすごく大きな船がとまってました。

すごく大きい船が 話しかけてくれました。

「迷子?」って。

「ううん 違う。」と返事したものの道に迷ってそのまま成り行きでここへたどりついたけど迷子ではないよなと思いました。。

「外国へ、よく行く?」と、まるくは聞きました。

「行くよ」と答えてくれました。「いいなあ」と返事をしました。

すごく大きな船は「君なら軽々乗っけて行けるよ」

「ぼくも行こうと思えば行けるんだ」と まるくはうれしくなりました。

すごく大きな船は 

「今の君を連れてくわけにはいかないけど、外国行くなら、ちゃんと勉強しないといけないよ。この国とは全然違うから。」と つけくわえました。

「君は、あちこち行けていいなあ。わたしは海を渡れても陸を旅することはできないからなぁ。」といいました。

不思議な気持ちになりました。大きな大きなトラックも新幹線も飛行機もすごく大きな船も、ぼくのこといいなぁって思うことあるんだぁ。

すごく大きな船が

「暗くならないうちにお帰り」と心配してくれました。

道に迷ってたこと思い出しました。

図書館で地図借りててよかったぁと思いました。

地図を見ながら帰りました。

今日は自分のことをちっぽけに感じたり、反面こんな小さくてもいいなぁって言ってもらえたり、道に迷ったり、遠くまで足をのばしたり、忙しい日でした。

この日このあと お父さんとお母さんを思い出して泣くことがありませんでした。

明日図書館へ地図を返しに行ってまた違うのを借りようと思いながら、夜眠りにつきました。

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