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妖人書記(ようじんかき)  作者: アホ狸
2/3

闇討ち

朝、部活のため早く目を覚ました。

雨戸を開けると、空がしらみ始め屋根瓦も形がうっすらわかる時間だった。その中に黒猫が一匹を丸くなって寝ていた。昨日できた新しい友達である。

「にゃー、あっ。おはようございます、怪助様。」

「おはよう、てか様付けはやめてくれ。俺達友達だろ。」

「しかし助けていただきましたし…。」

響蘭は一瞬考えすぐに口を開いた。

「兄キ、兄キはどうでしょう?」

「うーん、まっ様付けよりましか。」

響蘭は笑顔を見せた。一通り話がすんだ頃、

「怪助、起きてるなら降りてこい。」

その声に響蘭は驚いて下に落ちてしまった。

「遅いじゃねか、飯が冷める。」

典型的頑固オヤジ、そうんな風貌で朝食をとる男がいる。大鬼、怪助の父である。

「土曜だぞ、朝からうるせーよ。」

「生ガキが口答えをするな。早く喰え。」

大鬼の料理はどれもうまい。それもそのはず、彼は居酒屋けん料亭『元気』の板長なのだ。

料理の腕はもちろん目利きなどその道のどの面においても一流の男なのだ。

「なんかくせーな。」

食事の途中いきなり言われた。

「お前まさか…。」

ーやべ、もうばれた。

そんなことを思った。

「屁でもこいたろ。」

馬鹿で助かった。

「オヤジそれでも料理人かよ。飯時だぜ。」

「生ガキがうるせーよ。おっとこんな時間か。」

出勤の時間である。仕事用の大きい絞り袋(一見は道着袋)

を背中に部屋を出ていった。

ーさてと響蘭どうしたかな?

落ちてから様子を見ていない。

「響~蘭。」

二階に戻ると置き手紙があった。どうやら響蘭が書いたものらしい。

ーアイツ字書けるんだ。さすが化け猫。

『急用で消えます。戻って来ますのでご心配は無用です 響蘭』

まだ頭が働かない、そんな中で部活の準備を始めた。

ー寒っ。

窓をあけて着替えていると、日差しと共に冷たい風が部屋に入ってきた。

昨日、結に運ばせてしまった荷物を手に家を出る。

道を歩いていると、目の前の駐車場に猫が集まっていた。その中心にあの響蘭がいた。

「お前ら、変わりはねーか?」

「大丈夫ッス、響蘭さん。」

すると、猫が一気にその場から逃げていった。

「お、お前ら?」

響蘭はすぐこちらに気づいき、こちらに向かってきた。

「兄キ、お出かけですか?」

「ああ、部活だよ。でも、なんかワルいな。友達だったんだろ?」

「大丈夫です。」

実は昨日の夜、寝ていると近所の猫が喧嘩をしていた。その仲裁をしたときなつかれてしまい、双方まとめて兄弟分にしたのだという。

「そうか。」

「響蘭ニィ…。」

兄弟達だった。怪助はじゃっとだけ言って部活に向かった。


「面打ち、始め。」

竹刀の音が響き渡る道場内は、熱気が立ち込めていた。

寒さは和らぎ始めたが、この熱気はこの頃からこたえるものがあった。胴着など着ていたら尚更だ。

「妖島、お前剣道やってたの?」

休憩中、顧問に言われた言葉だ。

幼い頃からと答えた。他にも武術に当たるものはすべてやってきた。大鬼の教育方針だった。馬鹿に広い家の敷地の中に何故かある道場、そこで教わった。週三回メニューはバラバラ。そのためいろんなことが身に付き、今では名人級のものもかなりある。その一つが剣道だ。太刀筋を見切るなんて朝飯前。

だが、そのため怒られることもしばしば、試合を模した稽古の時構えを解いた状態で始め、まだ教えもしていない『胴』を入れたことがあった。

そんなことを思いながら、外の方に目をやると結がこちらを見ている。太陽と時計の針は真上にあった。

「先輩、妖怪って信じます?」

昼食中後輩に聞かれた。

昨日の今日だ、信じない訳にはいかない。だが、

「居るのかよ?逆に聞きたいよ。」

その後見た結の顔は暗かった。理由は分かる。そのためにあんなことを言ったのだ。

火照った頬を夕方の冷たい風が撫でていく。

「怪助覚えてる?」

「なにを?」

言いたいことはわかっていた。

小学四年生、結は若葉小学校に転校してきた。若葉小は怪助達の小学校である。

その数日後、事件が起きた。それを解決したのが怪助である。

「あの時、嬉しかったよ。」

「でもな…。」

記憶がない。そのあと何故か自分の部屋にいて、学校に行けば結からお礼を言われる。わからない。だから、

「ありがとうなんて、言わないでくれ。」

―にゃ~。

足元から聞き覚えのある声。

「可愛い。」

結が黒猫の頭を撫でる。

響蘭に感謝した。

「おぉっと、良いね~。世に言うラブラブってやつかい。」

「誰だ?」

人の姿、気配はない。自分達の影も消えるほど暗くなっていた。

「兄キ。今のうち逃げてください。」

「響蘭。なにをする気だ?」

「やるしかない…。」

―ニャァァァッッ。

毛を逆立て、走り出した響蘭。あまりのスピード故、目の光が闇に残像を残した。

その間に逃げる。

「怪助、猫ちゃんどうしたの?あの声、誰?」

「あの声はおじさんだよ。」

結に答えたのは、さっきの声。

場所は目の前のどぶの中。水の流れる音とは明らかに違う。

かすかに泡立ったかと思うと渦が起こり、体が青い化け物が現れた。

「結。結っ結ッ。」

結は一瞬息をしたかと思うとそのまま気を失った。

「おっと、一人になったね?お坊っちゃん。」

「テメー。」

睨んだところで意味がないことは分かっていた。

「怖いね。でも、攻撃しないの?こんな風にさッ。」

どぶの水が再び渦を起こした。

「仕方ない、お坊っちゃんにお手本をお見せしましょう。」

相手はやれやれといった様子でかぶりをふり、人差し指をこちらに向けた。すると、渦の先がとがりこちらに飛んできた。

「さようなら、未来の組長。」

―死にたくねぇ。


「…なんだ、今の?」

妖気を感じ駆けつけていた響蘭はとてつもないものを感じていた。

「兄キ。」

「な、なんだ?このちか…らは?」

化け物は倒れ、怪助は彼女を守りつつその場に崩れ落ち、尻餅をついた。

「響蘭。」

「兄キ、あなたいったい?」

「西鬼組の次期組長となられるお方です。」

近くの電柱の影から男は出てきた。長身のその男は全身傷だらけ。

怪助の前に来ると

「父がすみませんでした。」

膝をつき、頭をさげた。

怪助が声をかけるまで頭をあげることはなかった。

「父、ということはあんたも妖怪なのか?」

「九千坊という妖怪です。」

「なんでこんなことになった?」

「それは、ウッ。」

怪助の怒りが九千坊に飛んだ。どこになにを何発入れたかわからない。

「これだから、これだから~。」


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