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【散文】内から零れた言葉たち。

夜の童話

作者: 西荻悠
掲載日:2014/09/29

 赤い夜明けの子守歌。

 青い果実が交わす密談。

 緑の森に蝶の舞う音。

 黒の墓場に響く慟哭のオペラ。

 白兎が沈む沼のため息。

 黄金の地平を巡る聖歌。


 君は歌いながら旅をする。

 僕は残された呪いに傷つき、立ち止まる。


 暗闇と静寂に充ちた時間。

 拒むことなく包み込む空間。

 全てを受け入れるのではなく、容赦なく喰らい尽くす。

 たゆとう水に浮かぶ月。

 行き先の見えない迷宮庭園。

 群青の大地に、君の影は見つからない。


 もういいかい。

 もういいよ。

 さぁ、目前に迫る不安に向かって、

 微笑みながら両腕を広げて。


 一瞬で終わるよ。

 一瞬で消えるよ。

 煌めくものは儚く失われ、

 まばゆしものは滅びて消える。


 それでも眼前に開いた君の両手は

 間違いなくここに在り、

 あの日手のひらに包んだ星屑は、

 罪に染まぬ言葉によって永遠を生きるだろう。


 足下の屍はそのままにしておくと良い。

 君は原初の棺に眠る海。

 宝石箱のオルゴールが止まればノワールの夢は醒め、

 夜の童話もこれにて終幕。



初出 2007年2月26日

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