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そこまで言って私はハッとした。もしかして禁足地に入ったから!?
私の顔を見て何かを察したのか、美樹が苦笑いをして首を振った。
「禁足地に入ったぐらいで実際に何かあった人なんて居ないよ、小春。多分幻聴の類だと思うけど、もしかしたら良くない物連れて帰ってきちゃった可能性はあるよね。一応、お祓いの方法教えとくね」
「う、うん」
私もそう思いたいが、何だか凄く嫌な予感がするのだ。
けれどそれを美樹に告げる事が出来ないまま、私は簡易のお祓い方法を聞いて寮に帰るなりすぐさま言われた通りお清めを済ませた。
それにしても山歩きなんてしたのは何年ぶりだろう。嫌な思いもしたけれど、こんなにも自然に触れたのは久しぶりで何だかリフレッシュは出来たような気がする。
その後夕飯を食べてお風呂に入った私は何気なくテレビをつけて適当にニュースを流し見していたのだが、そこにあのパワースポットが映し出された。
『次のニュースです。東京都の郊外にあるパワースポットとしても知られる場所で大学生四人が崖から転落するという事故が発生しました。四人は何らかの理由で敷地内に侵入し、誤って崖から転落した模様です。四人は意識はあるようで、命に別状はありませんでした。それでは次のニュースです——』
「っっ!」
思わず私が口に両手を当てて後ずさると、スマホが鳴った。視線を落とすと美樹から連絡が入っている。
『ニュース見た!? これ、あの四人だよね!?』
その一文を見て私がスマホを操作しようとしたその時、またリーンと鈴の音が聞こえてきた。
怖くなった私はすぐさま美樹に返事だけしてテレビを消すと、ベッドに入り頭から布団をかぶる。
やはり禁足地に入ってはいけなかったのだ。この鈴の音もきっと気の所為ではないのだろう。
明日、ちゃんとしたお祓いに行ったほうが良いかもしれない。そんな事を考えながら私は気がつけば眠りについていたらしい。
ふと気づくと私は真っ赤な橋の上にポツンと立っていた。
下を流れる川には何やら沢山の花が流れていく。流れていく花はまるで一番美しい時期に無惨にも切り取られたような儚さがある。
しばらく私はその花を「綺麗だな。でも勿体ない」などと思いながら眺めていたが、どこからともなく澄んだ鈴の音が聞こえてきた。
この鈴の音は覚えている。そう思った途端、私は本能的にその鈴の音から逃げるように橋を戻ろうとしたけれど、不思議な事にその橋はどこまでもどこまでも続いていて果てがない。
後ろから追いかけてくるような鈴の音に私はとうとう耳を塞いでその場に蹲ると、鈴の音が私の後ろを通り過ぎて行く。
「……良かった」
思わず呟き胸を撫で下ろしたのもつかの間、それまで頭上にあった太陽がみるみる間に沈んだかと思うと、そこに月が突然現れる。
その月は異様な程大きく、紅い。不気味な色だ。そう思いつつ視線を上げると、橋の欄干の上に柱もないのに明かりが灯りだした。
驚いて思わずその光景を凝視していると、今度は突然色んな場所から何かがぼんやりと浮き出してきて同じ方向に向かって歩き出していく。
何かが、と表したのは明らかに人間ではなかったからだ。耳が生えていたり角が生えていたり、尻尾が生えていたりと様々だが、そんなのはまだ良い。何かよく分からない動物の形をした者や動物の体をした人も居る。
中には不気味な姿をしている者もいるのに、不思議と嫌悪感はあまり無い。
その不気味な一行はそれからも流れるように橋を渡っていくが、誰も私には気づかなかった。




