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「小春、楼主を信用しちゃ駄目だ。絶対に」

「……どう、してですか?」

「あいつは僕達に知らせなかった。それは約束に背く行為だ。抜け駆けは許されない。この時を待っていたのは皆同じなんだから」


 意味不明な事を言って漣音は何の前触れもなく私の唇を塞いだ。そして無理やり唇を割って舌がぬるりと入り込んできたかと思うと、激しく私の口内を犯し始める。


 漣音が言っている意味が分からないまま、私は徐々に流れ込んで来る漣音の媚薬に体を震わせた。楼主が漣音の力は強いと言っただけあって、皆よりも効きが早い気がする。


 既にぼんやりし始めた私を見て漣音が不敵に微笑んだ。


「君の対処法は楓雅が聞いても居ないのに話してくれたよ。達しすぎると戻ってこられなくなるんだよね?」

「ん、ぁ……はい」

「大丈夫。いくら達してもちゃんと僕が戻してあげるから」


 言葉とは裏腹にどこか緊張したような漣音の手つきに何だか違和感を覚える。


 何故こんなにもこの人は緊張しているのだろう? まるで誰も抱いた事がないのではないかと思うほど慎重な手つきに、言動とはまるで違う漣音の誠実さを感じた気がした。


 漣音はしばらく私の口内を蹂躙していたけれど、ようやく意を決したようにゆっくりと息を吐きながら帯に手を伸ばしたかと思うと、そのまま帯を解き始めた。


「そんな顔をしても無駄だよ。もう止めないから」

「ん……」


 着物を脱がす漣音の指先が時折肌に触れる。私の体はそんな些細な事に反応してしまう。それに気づいた漣音が困ったような顔をして私を見下ろすと、そっと私の頬を撫でた。


「だから、そんな顔をしても無駄だってば。あと、それ以上煽るの止めてくれないかな」


 自分ではどんな顔をしているのか分からないが、内ももに感じる違和感に気づいて顔を真っ赤にすると、そんな私を見て漣音も耳まで赤くしてふいとそっぽを向いて早口で言う。


「し、仕方ないじゃないか! 僕だって男だ。こんな全身豆腐みたいに柔らかい物を触って、そんな反応をされたらこうなるさ! 大体君は——」


 別に何も言っていないのに漣音はこれでもかと言うぐらい言い訳をしたかと思うと、とうとう私の着物を脱がし終えて私の身体を見るなり息を呑み、片手で顔を覆う。


「皆、どんな神経でこんな無垢な物に手を出したんだ……」

「漣音さま?」

「今は名前を呼ばないで! 一言も喋らないで! 僕をその目で見ないで! 今の僕はとても酷い事を君にしようとしている鬼のような自分について、どう折り合いをつけるか考えているんだ」


 手を出さなければ良いのでは。そう思いつつ首を傾げて漣音を見上げると、漣音は今度は私の顔を手で覆う。


「見ないでって言ったよね? もうこうなってしまったから言うけど、今の僕は親戚の子に久しぶりに会ったら思っていたよりもその子がずっと綺麗になっていて驚いている男の気持ちなんだ。しかもその子を僕は一晩買ってしまった。こんな罪悪感は無いよ! しかも他の親戚はみな、何の躊躇いもなく君に手を出したって言うじゃないか! 信じられない! そう思うのにそれでも欲情してしまう自分が一番信じられない!」


 一息にそこまで肩で息をする漣音を見て思わず私は噴き出してしまった。


「何がおかしいの」

「いえ……すみません」


 ちょっとだけ葛藤する漣音を可愛いと思ってしまった。


 しかも親戚の子に手を出している気分なのか。それは罪の意識に苛まれても仕方ない。会った事もないはずなのにそんな風に思ってくれるのが良い事なのか悪いことなのかは分からないが。

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