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私はそんな漣音の首に腕を回すと、ぎゅっと抱きしめた。そんな私の行動にまだぶつぶつ言っている漣音が息を飲んでこちらを凝視してくる。
「君は……馬鹿なの?」
「かもしれません。でも漣音さまの罪悪感がこれで少しでも減るならと思って。それにどのみち私は誰かに抱かれないと生気を失うので死活問題なんです」
ここで漣音が手を出して来なかったとしても、結局は楼主に抱かれる事になる。そうでなければまた橋の側で誰かがやって来るのを待つしか無いのだから。
それを聞いた途端、漣音はハッとしたような顔をした。
「そうだったね。そうか、これは人助け。そういう事かい?」
「ええ、まぁ」
こんな人助けがあってたまるかとは思うけれど、実際は本当に人助けの一貫なのだ。
私の答えに漣音はようやく自分に折り合いをつけたようで、自分の着物を脱ぎだした。
「とりあえず僕は君に生気を注ぎ込む。君はそれで今日を乗り切る。だから本気にはならない。羽根も出さない」
「? 漣音さま?」
「いや、こっちの話。それじゃあ準備はいいね?」
「えっと、はい」
こんな事をわざわざ尋ねてくるのは漣音が初めてだ。私が頷いたのを見て漣音はまた口づけてきた。
途中、漣音は楼主が言っていた通り部屋の中で羽根を広げ、私は空中で抱かれるという体験をする羽目になったのは言うまでもない。
しばらくして私達は同時に達してしまった。漣音は私を地上に下ろして布団に寝かせてくれたかと思うと、まだ痙攣する私のおでこに張り付いた前髪を優しく指先で払う。
「人間は、妖怪と、違いすぎる」
まだちゃんと呼吸が出来ない私を見下ろしながら漣音はそんな事を言うが、私の頬を撫でるその手はあまりにも優しい。
こんなにも言動と行動が一致しない人はそうは居ない。思わずそう思ってしまうほど漣音は優しかった。
布団の上でだらしなく寝転ぶ私を見て漣音はさっさと着物を着て言う。
「それで、この後僕はどうしたら良いの? 君の体を拭けば良い? それともお風呂に入れてやれば良いのかな?」
「あ、それは禿ちゃんが——」
私が口を開いた途端、どこからともなく禿達が集まってきて、ぐったりと横たわる私の全身をいつものように拭き上げてくれる。
そんな様子を漣音は何か言いたげに口をパクパクさせて見ていたが、やがて禿が着物を着せてくれようとしたのを見て我慢出来なくなったかのように早口で話し出す。
「き、君は恥ずかしくないの!? こんな、こんな低級妖怪に世話をさせるなんて!」
その言葉に私は思わずキョトンとして漣音と禿を見比べた。
「この子達、低級妖怪なんですか?」
「そうだよ! 低級も低級! 何なら最低級だよ!」
禿達は漣音の言葉に傷ついたり怒ったりせずに頷いているが、私はそんな関係を見て悲しくなってしまった。
だからついつい禿達の頭を撫でながら言う。
「低級かもしれませんが、私にとっては今は唯一の心許せる子達なんです……そんな風に言わないであげてください」
視線を伏せて思わずポロリと出た言葉に漣音が慌てたように息を飲む。
「そうなの? この子達が唯一の心の支え……なの?」
「……はい。変ですか」
「変……ではないよ。けど、そっか……そうか……」
私の言葉に何故か漣音が傷ついたように顔を歪ませたが、どうして漣音がそんな顔をするのか、私にはさっぱり分からない。




