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 私が箸を置くと、楼主はそれを手で制す。


「食べながら聞いてくれて良いよ。料理が冷めてしまう。まずさっき言った柊霞は妖狐なんだ。常世でも有名な遊び人でそれはもう美形でね。だから女には困らない。狐だから幻覚とか使って相手を酔わせる。そこに媚薬を仕込ませてくるんだよ。あとその、あいつもちょっとね、アレがね」


 思わぬ楼主の言葉にお味噌汁を飲みながら首を傾げると、楼主は真面目な顔で咳払いをする。


「あー……その、ほら狐はイヌ科だから」


 そう言って苦笑いする楼主に私は何かを察して思わず噎せてしまう。


「ごほっ!! ご、ごめんなさい!」


 その拍子に飲んでいたお味噌汁を噴き出してしまった。かろうじて楼主にはかからなかったものの、急いで台拭きでテーブルを拭いていると、そんな私を見て苦笑いを浮かべている。


「大丈夫? ごめんね、食事中にこんな話」

「い、いえ。聞いておいて良かったです」

「そう? まぁそんな理由で多分苦しいと思うんだよ。ほら、小春は小さいから」

「すみません……」

「いや、それは僕達にとっては最高だから良いんだけど、楓雅のも大概だけど柊のも大概なんだって言いたかったんだ」

「そ、そうなんですか」


 そんな前情報を聞いても全然ピンと来ないしどんな反応をすれば良いのか分からないが、とりあえず頷いておいた。やはりどの妖も人間とは全然違うのかもしれない。


「えっと、残りのお一人も何かそういうのがあるんですか?」


 それを聞いてから食事を再開しようと思って箸を置くと、楼主も今度は止めなかった。


「そうだね。漣音は天狗だ。あいつは興奮すると羽根がね……」

「……羽根……」


 やはり皆、何かしらあるようだ。


 前に楼主が自分のが一番良いと思うと言っていた意味がよく分かる。朧月でも楓雅でも大変だったのに、これ以上私に耐えられるだろうか? 無理では。


 思わずゴクリと息を呑む私を見下ろしながら楼主は困ったように肩を竦める。


「ただ漣音が厄介なのはそこじゃないんだよ。性格に難があるっていうか……とにかく面倒な奴なんだ」

「面倒?」

「そう。物凄く理屈っぽいって言うか厄介って言うか……とにかく鬱陶しい。すぐにグチグチ言うけど、それでも天狗の中では大天狗なんだよ」

「大天狗と普通の天狗は違うんですか?」

「うん、全然違う。天狗は神通力を使うんだけど、その強さでランクが決まる。漣音の力は相当強いよ。単純に力だけで言えば漣音には僕達も敵わない。でも彼は性格がちょっとね。根は悪いやつでは無いから余計に困るんだけど」


 腕を組んで何かを思い出して笑う楼主を見て私は頷いた。最初に楼主が渋っただけある癖の強さだ。


 けれどきっと朧月はもう皆に声をかけてしまっているだろう。私はこの人たちをどうにか誘惑して籠絡しなければならないのだ(恐らくそれは無理だが)。


「そう言えば、楼主さまは何の妖怪なんですか?」


 楓雅は楼主は二重人格だなどと言っていたが、あれは本当なのだろうか? 聞きたいけれど、それはきっと聞かない方がいいのだろう。


「僕? 僕は何だと思う?」

「えっと……分かりません」


 そもそも私は妖怪に明るくない。ましてや楼主達の見た目は本当に人間とそっくりなのだ。


 楼主は正直に答えた私に気を悪くする様子もなく笑う。


「はは! そりゃそうだ。僕は白鐸だ。少し変わり種のね」

「変わり種なんですか?」

「うん。突然変異って言うのかな。大半の白鐸は白い髪に黒い目をしてる。でも僕は髪色は父親に似て、目は母親に似ちゃったんだ」

「良いですね。素敵な配色だと思います」

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