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転生ボーナスなし、巻き戻し体質あり。死因がダサい俺は108年かけてダンジョン最下層を目指す  作者: 椎間板ベルビビ


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8/8

第七話「JBBF本番・親御さんに見てもらう日」

 会場はちびざっぷジムのメインホールだった。

 入った瞬間、空気が違った。

 熱い。うるさい。プロテインくさい。

 保護者席が満員だった。全員でかい。全員首がない。全員目が本気だった。


(お遊戯会の保護者席じゃない。これ完全に観客席だ)


 司会の兵士がマイクを持って立っていた。


「本日はJBBF年中の部にお越しいただきありがとうございます!!」

 割れんばかりの拍手が起きた。

 俺は小声で尚飛に聞いた。


「な、なんでこんなに盛り上がってるんだ」


「バブ(年中の部は初めて我が子の成果が見られる日だからな)」


「そういうもんか」


「バブバブ(あと賭けもある)」


「賭け!?」


「バブ(我が子のBIG3記録予想だ。外れると罰ゲームで3日間トレーニングを休む)」


(それが罰ゲームになる国なんだ……)


 俺はBIGヒロを探した。

 最前列にいた。

 仁王立ちだった。

 なぜかもう泣いていた。


「リツぅ……! お前が生まれた日から……この日のために……!」



 隣の保護者が感動してBIGヒロの肩を叩いていた。

 BIGヒロも感動して肩を叩き返していた。

 二人とも泣いていた。


(何なんだこの会場)





◆第一種目「基本ポーズ審査」

 一人ずつ壇上に上がって、規定のポーズを決める。

 審査員は師範(パーソナルトレーナー)を含む三名。全員首がない。


 最初の子が壇上に上がった瞬間——


「五番! 広背筋が翼じゃあ!!」

「大胸筋がバーベル台か!!」

「脚がデカメロン!!」


(これが保護者の掛け声なのか)



 ゴリ太が壇上に上がった。


「バブ(気合い入れてく)」と言いながらポーズを決めた。

 会場が沸いた。


「ゴリ太!! 背中に魔王が宿っておる!!」

「兄貴に続けぇ!!!」

「首がなーーーーい!!」


(首がないが褒め言葉になる国だった)


 尚飛の番になった。

 壇上に立った。

 一呼吸。

 静かにポーズを決めた。

 会場が——静まり返った。

 三秒後、割れんばかりの歓声が起きた。


「縦山尚飛!! 肩に要塞を載せておる!!」

「筋肉の密度が違う!!次代の王!!」

「わしの息子!!見て!!見ろ!!!!わしの息子!!!!!」

 BIGヒロが立ち上がって叫んでいた。両手を天に向け号泣していた。


(息子のポーズだけで崩れ落ちるのか)


 俺の番になった。

 壇上に上がった。

 会場を見渡した。


(大丈夫。基本ポーズだ。練習通りにやればいい)


 ポーズを決めた。

 会場が——静かになった。

 違う静かさだった。さっきの尚飛の静かさとは違う。


「……細くないか?」

「バルクが……足りんぞ……?」

「でも——」一人の保護者が叫んだ。「仕上がっとる!!バルクは足りんが仕上がっとる!!」

「フォームが綺麗じゃあ!!」

「諦めるな!!まだ五歳じゃあ!!」


(諦めてないし何なら普通の五歳よりだいぶ鍛えてるんだけど)


 BIGヒロが再び立ち上がった。目が真っ赤だった。

「リツぅぅぅぅぅぅ!!!!フォームが美しいぞぉぉぉぉ!!!!」

 廊下の兵士が全員転んだ。


(また転んだ。毎回転ぶな)


◆第二種目「闘気持続」

 一人ずつ闘気を開放して持続時間を測る。

 ゴリ太——三十八秒。会場が沸いた。

 他の子たちも次々とクリアしていく。

 尚飛——三分四十二秒。

 会場が静まり返った。

 十秒後、爆発的な歓声が起きた。


「縦山尚飛!!闘気の密度が違う!!」

「天才じゃあ!!あれわしの息子じゃあああ!!」

 BIGヒロがまた崩れ落ちていた。


(さっき立ち直ったのに)


 俺の番。

 目を閉じた。

 体の中心に意識を向ける。

 筋肉を縮めて——縮めて——


(生きたいという気持ちから生まれた闘気。俺の意志の形)

(形は魚(しゃけ)だけど)


 縮めて——一気に——

 手がオレンジに光った。

 十秒。十五秒。二十秒。

(消えるな——!)

 二十五秒。

 二十八秒。

 二十九秒——

 三十秒——

 三十一秒で、消えた。


 静寂。

 三秒後。

「合田律!!三十一秒!!」

 会場がざわめいた。

「あの細い子が三十秒超えたぞ!!」

「バルクがないのに闘気がある!!」

「型破りじゃあ!!」

 BIGヒロが三度目の崩れ落ちをしていた。

「リツぅぅぅぅ!!!!三十秒超えたぞぉぉぉぉ!!!!」


「わかってます!!」


 尚飛が隣で「バブ(やったじゃないか)」と言った。

 笑えた。


◆第三種目「フリーポーズ」

 自由演技。筋肉と闘気で自分を表現する。

 ゴリ太が山のポーズを決めた。圧がすごかった。


 尚飛が全身から闘気を溢れさせながらポーズを決めた。

 オレンジの光が会場を照らした。保護者が三名ほど泣き崩れた。


(フリーポーズで泣き崩れる保護者)


 俺の番。

 壇上に立った。

 目を閉じた。

 筋肉を縮めて——縮めて——


(形は魚(しゃけ)でもいい。俺の意志の形だ)


(生きたいという気持ちから生まれた力だ)



(ダサくても——これが俺の闘気だ)

 一気に——

 全身が赤い光に包まれる。

 ゆっくり腕を上げた。光の中で、体の輪郭が浮かび上がった。


 会場が静まり返った。

 違う静かさだった。

 さっきまでとは——全然違う静かさだった。

 それから——


「なんだあの闘気の色は!!」

「何飲んだらそんな色になるの!!」

「その色は世界を牛耳る色ーーー!!」


(え、自分じゃわからないけど、色が変わった?なんで?)


 BIGヒロは崩れ落ち、兵士二名に支えられていた。



◆結果発表

 審査員が結果を読み上げた。


 総合順位


 一位:縦山 尚飛

 二位:ゴリ太

 三位:合田 律



 三位だった。


「バブ(よくやった)」


「お前には勝てなかったけどな」


「バブバブ(当然だ)」

 尚飛が拳を出してきた。俺も出した。コツン、と当てた。



 師範(パーソナルトレーナー)が俺の前に来た。


「合田律」


「はい」


「フリーポーズ、よかった」


(褒められた!!)


「バルクは足りないが、少し気になることもある…」


(色のことだろうか)


「が、よくがんばったぞ。来年の対抗JBBFに向けて、鍛え続けろ」


「……はい」

 師範(パーソナルトレーナー)が静かに言った。


「ちなみに今日、保護者席で失神者が二名出た」


「去年より減ったじゃないですか」


「お前のフリーポーズで一名出た」


「俺のせいで!?」


「魂が入りすぎていた。名誉なことだ」


(名誉……なのか??)




◆帰り道

 BIGヒロに担がれて帰った。

 泣かれながら担がれた。


「リツ……三十秒超えた……闘気が……魂が……」


「降ろしてください」


「嫌だ!!今日は担いで帰る!!」


「五歳ですよ俺!!自分で歩けます!!」


「五歳でも担ぐ!!十歳でも担ぐ!!」


(何歳まで担ぐつもりなんだ)


 尚飛が隣を歩きながらバブバブ笑っていた。


「バブ(仕方ない男だな)」


「どっちの話だよ」


「バブバブ(両方)」

 プロテインくさい夕暮れの中、城に帰った。

 担がれながら。





 その夜。

 部屋の天井を見上げた。

(三十一秒。一ヶ月前はゼロだった)

(来年は対抗JBBFがある。他の幼稚園の連中と戦う)

(ノーキンバルク中の園児が集まる、か)

 手を見た。赤く光った。

 魚(しゃけ)の形で。


(……まあ、これでいいか)

 ダンジョンはまだ遠い。

 でも——一歩ずつ、確実に近づいている。

 そういうことにしておこう。

【律のステータス・五歳・JBBF後】


■ステータス

体力 :80(+5)

防御力 :25(+3)

攻撃力 :20(+2)

素早さ :13(変化なし)

魔力 : 1(変化なし)

信仰値 : 2(変化なし)

交渉力 : 3(変化なし)

幸運 :40(変化なし)


■習得スキル

闘気(初級) :31秒・本番で更新

プロテイン耐性MAX :サバ風味まで制覇(不本意)

ぶら下がり :片手一時間

BIG3 :95kg

JBBF :3位入賞(バルク不足と言われ続けた)


■今回の収穫

・闘気31秒(自己記録更新)

・フリーポーズで保護者1名失神(名誉らしい)

・BIGヒロに担がれて帰った(五歳)


■来年の目標

対抗JBBF

ノーキンバルク中の園児が集まる

去年の優勝:ゴリ太の兄貴(首がない)

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