桜花 桜 5
「......そう。ありがと」
桜花さんはそれだけ言うと部屋の中に戻っていく。僕は桜花さんが部屋に戻った後しばらく部屋の掃除をしているとインターホンが鳴る。
誰だろ。こんな時間に。
「はーい」
僕は玄関の前に行きモニターをみる。このアパートの玄関はアパートの部屋の前に誰がきたか確認できるカメラがついており、そこからモニターに映る。
「どうも。大家です。挨拶がしたいので中に入っても?」
カメラに映っていたのは茶色の髪が特徴で若い女の人だった。
「あ、はい。どうぞ」
僕は玄関のドアを開けると大家さんが入ってくる。
「倉敷さんから話は聞いています。私は神咲 美奈と申します。倉敷さんには恩義があるのでこのアパートの大家をさせてもらってます」
神咲さんは僕に名乗った後、僕も自己紹介をしようとしたけど
「僕は」
「大丈夫よ。あなたのことは私の頭に入ってるから。私も昔、悩み種にかかってね。一応治りはしたけど頭の容量と言えばいいのか記憶力が少し良くなってしまったの」
悩み種にかかって記憶力が良くなった?それはどういう
「私はね。悩み種を完全に治せなかった、というか克服できなかったのよ。する気もなかったんだけどね。倉敷さんはそんな私でもいいと言ってくれたから」
へぇ。倉敷さんもなかなかやるな。こんな可愛い女の方を口説くなんて。
「前田君。君は家賃とかは考えなくてもいいわ。その代わり私のお手伝いをしてもらうから」
「手伝い、ですか。家賃の代わりになるなら頑張りますけどなんでしょうか?」
「手伝ってもらうことはその都度頼むからその時にお願い。うちは変なことさえしなければ何をしていても構わないわ。あ、極力危ないこととかする場合は事前に私にいいなさい。倉敷さんに聞くから」
神咲さんはそれだけ言うと僕の部屋から出ていく。悩み種って治っても残る人は残るんだ。
神咲さんが出て行ってからまた数時間後、ようやく片付けが終わった頃にまたインターホンがなる。
「はーい」
今度は誰だろうか?
「やぁやぁ。君の大好きな倉敷さんだよ」
モニターには倉敷さんが映っており、扉越しに倉敷さんが言う。別に大好きではないけど
「引っ越し祝いにきたよ」
僕は玄関のドアを開けた後、倉敷さんは僕に言う。祝いだと言うから何かもってきたもんかと思ったけど
「ここでの生活を私が負担してるんだからそんなものは必要ないだろ」
ま、まぁ、いいけど。確かに負担はしてもらってるし。妹のことで迷惑もかけてるから。