表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
少女達は悩みを抱く  作者: アークマ
第二章 才能を求める少女の悩み種
36/45

才田 才子 10

「才子。帰って来たのか」


 メイドの後に私を出迎えたのは白い顎髭をたらしながら杖で歩いてくるのは才田家の当主であるお祖父様、才田(さいだ) 剛弦(ごうげん)である。


「はい。剛弦おじいさま。ただ今帰りました」

「うむ。才子。今のお前は才田家には必要な人間。血迷ったことはしないように」

「もちろんですお祖父様」


 お祖父様はこの悩み種が発症するまでは才田家の面汚しめと毎日私を罵っていた。毎日暇なんじゃないかと思うくらいに。


「ふん。能無しが帰ってきたのか」


 剛弦お祖父様の後に2階の階段から降りて来たのは一つ歳上の兄、才田(さいだ) 才樹(さいき)だ。才樹の見た目は眼鏡をかけて襟足を腰あたりまで垂らした黒髪が特徴だ。


「才樹。情けないことを言うな。才田の人間として器が小さく見えるではないか。恥を知れ」

「お祖父様!こいつはズルをしたに決まっています!でなければいきなりこのように才能が発言するわけがありません」

「そんなものわからんではないか。そんなこともわからんようでは才樹。お前は落ちぶれたものだな。非常に残念だ」


 才樹兄さんは「ちっ!」と舌うちをした後、部屋に戻っていく。


「才子。愚か者など気にするなら。お前はお前のやりたいようにやれ。才田家は自由にやればもっと才能が育つのだから」


 お祖父様はいつも同じことしか言わない。自由にやれと。才能は自由にやってこそ伸びるんだと。そんなものは天才どもにしかできない。私は悩み種になるまで努力するしかなかったのだから。


「お祖父様。では私は部屋に戻ります」

「うむ。それと才子よ。黒木家のお嬢さんとは仲良くするようにな」


 黒木と仲良くだって?このクソジジイは本当に人の神経をさかなでするのが好きね。黒木と仲良くしろ?私にはもう無理な話よ。


「わかりましたお祖父様。黒木様とは懇意にさせていただきます」

「それでいい。今の黒木の娘はなかなかに賢い。いずれはおまえとも切磋琢磨できるようになろう」


 お祖父様はそれだけ言うと私の前からゆっくり歩き出し部屋に戻っていく。

 黒木メイア。かつては私は大親友だと思っていた女。でも今の私には憎悪の対象でしかない。あの日から。あんなことさえなければ私はメイアとは仲良くできていただろう。まさかメイアが天才の上をいく天才とは思わなかった。

 私は自分の部屋に戻りベッドに寝転ぶと自分の悩み種にかかった時のことを思い出していた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ