小休止
はろー!
どうも、鈴乱だよ!
みんなー、元気してるー?
俺は、病気してるー!
いえー!
え? 休め? 養生しろ?
ええ〜、そんなの、俺に出来ると思ってんの?
俺を誰だと思ってんの?
鈴乱様だぞ!
作者だぞ!
この世界は、俺の支配下にある!
……あぁ、そうさ。この世界だけが俺が支配できる唯一の場さ!
うん? リアル?
な、何を言ってんのかなぁ……?
俺は、ほら、バーチャルな住人だよ?
リアルなんて、そんな、異世界のこと、知らないなぁ……。
あっあっあっ、でもでも、ココを使うにあたっては、一応、ココの神様がいるわけじゃん。
規約っていう名の。
だから、その方の逆鱗に触れないように、俺、今、必死!
浮かれすぎないように、怒られないように、今超絶必死!
でもさ、俺、うっかりする性分なのね?
ちゃんと、神の言葉を聞いて振る舞おうとはしてるんだよ。
でも、なぜか、頭に入ってこない時があって……!
そう、俺の理解力は地獄レベルでね!
で、だから、神様に『めっ』ってされないように、過剰に思えるほどの、気を遣って……おります。
一周めぐって、『めっ』されたら、もう、俺、立ち直れない……。
立ち直れないから、旅に出る。
楽しそうなとこに旅に出る。
荷物いっぱい溜め込んで、旅に……出るんだ……。
(パタン)
(ガチャ)
「おーい、すずらーん。大丈夫そー?」
『あぁ……、これは……走馬灯……? それとも、神の迎え……? あ、なんか、あったかいような……』
「……ダメそうだね。色んな意味で」
「白兄ぃ〜! 天の助け〜」
「騒がないの! もー。騒ぐから長引くんでしょー」
「だってー、俺ひとりじゃ、やる気にならないんだもーん」
「うっわ……汚っ……。ゴミ……、これもこれも……ゴミ……」
「あ、それはゴミじゃなくて、友だちで……」
「鈴乱」
白兄ぃが、珍しく膝をついて、俺の顔を真っ直ぐに見る。
『えっ……。何この展開……。これは小説でよく見る……!』
「(全力のデコピン)」
「いっ……てぇぇぇぇ!」
「バカ言ってないで、早く寝ろ」
「うう……はい……」
「はい、布団入る。水分取る。ごはんは?」
「まだ、です」
「軽いもんなら食べれそう?」
「うん……」
「そう。じゃあ、軽くなんか作るから」
「え……? 白兄ぃが、俺にごはんを……」
『こ、これは、巷に言う、看病シチュ! ヤバい、これは、ネタになる!』
「……おい。くだらねぇこと考えてねぇで、寝ろ」
「あ……うん。ごめんなさい」
「おとなしく、してろよ?」
「はい、社長」
「ったく、仕事が進まねぇんだよ。お前のせいで」
「俺いなくても、みんないるじゃないですかー」
「他の奴がいてもだな、企画担当が倒れたら、全部倒れんだよ……」
心なしか、白兄ぃの顔色がすぐれない。
それは、どうも俺だけが原因じゃなさそうだ。
「……申し訳、ありませんでした。あと、ありがとうございます」
「んも〜、僕に君の真似事なんて、出来るわけないでしょー。みんな、面白がって無理強いばっかしてくるんだからー」
「あはは……。ですよねー」
「……だから、早く良くなってよね」
「はい」
「君を待ってるのは、仕事だけじゃないんだから」
「……はい」
「君の代わりは、本当に骨が折れたよ」
(こそこそ)
「ってことは、黒兄ぃ、病院送りになったんですか……?」
「そう、なんだよね」
「文字通り、骨、折ったんですね」
「そう。僕は止めたよ。やめとけって、何度も言ったもん」
「そうっすか……。おつかれさまです。そんで、ちなみに、どこの骨をやったんスか?」
「……屋台骨」
「あー。あー……。あちゃー」
「だからもう、後処理に追われて……もう僕やだ〜!」
「どうどう。分かりました。そういうことなら可及的速やかに回復に努めます」
「うん、お願い……」
「というわけで、(声を変えて)バーチャル放送局、始まるよ!」