2章
わたしは翌朝、レオナール殿下の執務室で目を覚ますような気分になる。実際には自室で眠ったのだけれど、朝一番に護衛の騎士が「殿下が呼んでいる」と迎えに来たのだ。まだ頭がぼんやりするけれど、反論する暇もなく連れて行かれてしまう。
レオナール殿下は、執務机の奥で高そうな書類を整理している。騎士に促されるまま、わたしはそっと机の前に立つ。すると、殿下は顔を上げずに言う。
「これから王都に出る。市場の実態を見てこい」
あまりにも急すぎる提案というか、一方的な指令に戸惑って、思わず声が裏返りそうになる。
「……市、市場って、今からですか? どうして急に……」
わたしが問い返すと、殿下はわずかに眉をひそめ、書類の山をトントンと揃える。
「お前が経済をどうのこうのと言ったからだ。ならば実際に庶民の暮らしを見てみるといい。それができなきゃ机上の空論だろう」
言い方は冷たいけれど、内容としては確かに正論だ。わたしは日本で経済学を学んでいたとはいえ、この世界の事情はほとんど知らない。数字だけで判断するより、現場を知ることが大事。
「それは……わかりました。ぜひ行きたいです」
そう答えると、殿下はようやく顔を上げてわたしを見る。相変わらず氷のような視線だけれど、どこか目が挑むように輝いているのを感じる。
「いい返事だ。馬車の用意はできている。さっさと支度しろ」
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わたしは侍女のルーシーに手伝ってもらいながら、動きやすそうなワンピースへ着替える。もっとも、王宮の衣服にしては地味だと言われたけど、派手なドレスで市場を歩くのは目立ちすぎて逆効果だ。
朝日のまぶしさを感じながら王宮の正門を出ると、大きな馬車が用意されている。その側には、騎士団がずらりと待機していた。なんだか大げさな気がして、わたしは唖然とする。
「……こんなに護衛がいるんですか?」
思わずつぶやくと、後ろから低い声が返ってくる。
「お前が呪われていると信じている者たちも多い。さらに宰相派はお前を排除しようと狙っている。守るために必要だ」
いつの間にかやってきたレオナール殿下は、さっと馬車の扉を開け、わたしを促す。彼の横顔はどこか不機嫌そうだけど、わたしを守るという意志だけははっきり伝わってくる……気がする。
馬車の中に乗り込むと、背後から殿下が続く。つい反射的に「え、同乗するんですか」と思ってしまったけれど、当たり前とばかりに彼はわたしの隣に腰を下ろす。
「移動の間は馬車で休んでおけ。市場までは少し距離がある」
わたしは頷きながらも、内心やけにドキドキしてしまう。同じ空間に座るだけで威圧感があるし、こんなに近くに彼を感じるのは何だか落ち着かない。
それでも馬車は走り出し、王都の街並みへと向かっていく。途中、窓から外を見ると、王宮の敷地から離れた途端に建物の質が急に変わるのがわかる。崩れかけの家々、汚れた道。住民たちの着ている服もボロボロだ。
(……まさに富の偏りが一目でわかる)
こんなに極端な貧富差を、王族や貴族たちは黙認しているのだろうか。それとも、この国では「当然」と思われている? 胸の奥が苦しくなる。
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馬車が市場のある広場に到着すると、騎士団が先に降りて周囲を警戒する。人々は何事かと思って目を向けるけれど、やがて第一王子の姿を認めて、驚きの声を上げる。
「れ、レオナール殿下が……?」
「どうしてこんなところに?」
そして、わたしの方にも視線が集中する。まるで「あの娘は誰?」と疑うような、探るような眼差しが突き刺さる。居心地が悪い。でも、ここで尻込みしている場合じゃない。今日の目的は市場調査なのだ。
殿下が周囲を一別してから、わたしに向かって小声で言う。
「お前は自由に見て回れ。ただし、護衛を連れていけ」
「わかりました。……ありがとうございます」
「礼を言われる筋合いはない。ただし、くれぐれも余計なことはするな」
少し強い調子で釘を刺される。でも、わたしは「余計なことって何ですか?」と内心つぶやきながらも、軽く頭を下げて人ごみへと足を踏み出す。
市場は朝から活気がある……はずなのに、ふと周囲を見渡すと、どこか陰気さが漂っているのに気づく。露店に並ぶ商品は決して多くないし、値段の札を見ると妙に高い。客は少なく、皆どこか疲れ切った表情をしている。
わたしは護衛の騎士を一人だけ引き連れ、野菜やパンが並ぶ屋台をいくつか回ってみる。店の人たちは最初警戒していたものの、わたしが丁寧に挨拶して「この国の暮らしを勉強したくて……」と話すと、ぽつりぽつりと彼らの日常を語ってくれるようになる。
「ここのところ、税金が上がりっぱなしで……商売しても全然儲からないんです。最近は貴族向けの取引ばかり優先されていて、一般人に回す商品が高騰しているんですよ」
「うちの主人も借金がかさんで、来月までに返せなきゃ牢屋行きだ……」
無力感が蔓延している言葉の数々が胸に刺さる。わたしが知る限り、税制度は国の基盤だ。あまりに重すぎる税を庶民に課せば、消費が落ち込み経済が停滞するのは当然。それに加えて、貴族側だけが優遇されているなら、格差はますます広がる。
(……やっぱり、早急に改革が必要だ)
その思いを一段と強くする。
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市場を奥へと進むと、少し広めの空き地に人だかりができている。何だろうと思って近づくと、小さな子供が震えながら立っていて、その周囲を大人たちが取り囲んでいた。
「この子、商品を盗んだみたいなんです」
「金もないのに食い物だけ欲しがるから……困ったもんですよ」
泣きそうな顔でうつむく子供。着ているのはボロボロの服だ。まだ五歳か六歳くらいに見える。その子が地面に落としたパンのかけらをぎゅっと握りしめているのを見て、わたしの胸が痛くなる。
「……お腹が空いていたんだよね?」
思わず、子供に声をかける。わたしは護衛の騎士を振り返り、金銭を出してもらおうとする。ところが、騎士は困ったような顔で「いえ、そういう勝手な判断は……」と制止しようとする。
それでも、見て見ぬふりはできない。わたしは自分が持っている小銭入れを探ろうとするけれど、まさか異世界に来て日本円しか入っていない。焦って騎士を再び見る。
「……すみません、その、この子のパン代っていうか、何か食べさせてあげられませんか。後で殿下に説明しますから」
騎士は困惑しながらも、仕方なく財布を取り出して店主に代金を支払ってくれる。店主は「それなら別にいいですが……」と渋々ながらも納得してくれた。
安心して子供にパンを渡そうとするその瞬間、「呪われた娘だぞ!」とどこからか声が上がる。耳を疑うほど大きく響き渡って、周囲の人々が一斉にこちらを振り向く。
「なんだと……?」「呪い……って、あの王宮にいる娘か?」
ざわめきがどんどん広がっていく。わたしは嫌な予感がして、子供をかばおうと身をかがめる。すると、野次馬の一人が指をさして叫ぶ。
「この女、王都に災いを呼ぶってウワサの……」
「国を傾かせる破滅の呪いだって聞いたぞ!」
一気に空気が張り詰める。だが、さっきまでわたしに事情を話してくれた店主たちまで、どこか疑惑の目を向けはじめる。やはり呪いの噂は、相当に広まっているらしい。
「違うんです、わたしは……」
必死に弁解しようとするけれど、群衆の声にかき消される。子供まで恐怖に震えている。しまった、こんな形で目立ってしまえば、わたしが何を言っても信じてもらえないかもしれない。
すると、さらに混乱をあおるように、別の誰かが怒鳴る。
「呪われた女が触れたから、その子が盗みを働くようになったんじゃないのか!?」
まるで理不尽な言いがかりだ。だけど、人々は疑念と不安を抱えているからこそ、こういうデマに飛びつきやすい。市場中の空気が急速に険悪になっていくのを感じる。
護衛の騎士が周囲を制止しようとするけれど、人数が多すぎて抑えきれない。わたし自身も動揺が止まらない。
(どうしよう……このままじゃ、私だけじゃなく、この子まで危険かもしれない……)
そっと子供の手を取り、逃げようとしたときだ。目の前の人垣が割れるように開き、騎士団が一斉に道を作る。そして重い足音を鳴らして歩いてきたのは、レオナール殿下。
「そこをどけ。俺が来た」
その声は低く、冷徹だ。群衆は一瞬息を呑み、ざわつきが止まる。周囲が緊張感に包まれる。殿下はわたしを見つけると、すぐにこちらへ近づき、ぐいっと腕をつかむ。
「どうして勝手に動く? 余計なことはするなと言ったはずだ」
耳元で囁く声は怒りを含んでいるけれど、その手はわたしを守るように引き寄せる。まるで「俺のものに触れるな」と言わんばかりに、群衆に向けて射るような視線を向けているのがわかる。
「……すみません。あの子が……」
言い訳しようとすると、殿下はわたしの言葉を遮るように、力強い声で周囲に宣言する。
「お前たち、いい加減にしろ。そもそも、この女が呪いを振りまいているなどという証拠はどこにある? 無実の者を寄ってたかって追い詰めるとは愚の骨頂だ」
騎士の後ろから、恐る恐る民衆が言い返す。
「で、でも……王宮の噂で……」
「それに、宰相様だって……」
すると殿下はひときわ冷たい目で言い切る。
「宰相が言ったから正しい? 馬鹿言え。事実をよく見ろ。お前たちを苦しめているのは誰のせいだ?」
その瞬間、周囲がシンと静まり返る。殿下の言葉にこめられた圧倒的な威圧感もあるけれど、同時にその指摘は鋭い。高い税を取り立てるのは誰か、過剰な浪費をしているのは誰か。民衆の心に疑問が芽生えているのを感じる。
「……ただの娘一人が、国の経済を傾かせるわけがあるまい。目を覚ませ」
低く鋭い一喝に、人々は言葉を失う。わたしでさえ、その迫力に圧倒されそうだ。
すると、恐る恐るわたしを指差していた人々が後ずさりしはじめる。「王子様の言うことなら……」と口にする人もいて、わたしに向けられていた敵意が少しずつ和らいでいく。
そのタイミングで、殿下はわたしの肩をぐいっと引き寄せる。ぎょっとするほど近い距離に、彼の冷ややかな横顔がある。周囲に聞こえるように、静かな声で断言する。
「こいつは俺のものだ。下手に手を出すな」
一瞬、胸がぎゅっと締めつけられる。“もの”呼ばわりには腹が立つけれど、それよりも、この行動がわたしを助けるためだというのが伝わってきて、どうしようもなく混乱する。
やがて、騎士たちがうまく群衆をさばき始め、場は落ち着きを取り戻す。わたしはまだ動悸が治まらないけれど、泣きそうな子供の手を握りしめて、そっと言う。
「もう大丈夫だから。ごめんね、怖かったよね」
子供は小さく頷き、震えながらパンを強く抱きしめる。その姿を見て、わたしは改めて思う。こういう悲しい事件をなくすには、生活基盤そのものを変えなきゃいけない。呪いなんて存在しないと証明するだけじゃなく、庶民が笑って暮らせる仕組みを作る必要がある。
(……やっぱり、この国はおかしい。何としてでも経済を改革しないと)
そんな意志を固めていると、隣からまたあの低い声が響く。
「勝手な行動をした罰として、馬車の中で説教でもしてやろうか?」
「……脅さないでください。わたしだって、この国のためを思って——」
言い返そうとすると、殿下はうっすら笑みを浮かべる。いや、笑いというより、呆れ混じりの苦笑に近い。
「わかった。なら、お前の意見を聞こう。……ただし、帰ったら報告書をまとめろ。お前が見て感じたことを整理して、俺に提出しろ」
「報告書……?」
あまりにもビジネスライクな響きに面食らう。でも、彼がちゃんとわたしに機会を与えてくれるのはありがたい。
「はい。書きます。数字も整理して、問題点をまとめます」
まっすぐ殿下を見据えてそう答えると、彼は再び「ふん」と鼻で笑いながら視線を逸らす。
「余計なトラブルは起こすなよ。宰相派が次の手を打ってくるはずだからな」
その言葉に胸がざわつく。宰相派の黒幕、ガブリエル・ローゼンベルクの名を王宮で何度か耳にしたが、きっとわたしの排除を狙って動き出すだろう。
(やるなら、こっちだって本気で対抗しなきゃ。呪いの疑惑を払拭して、貧困も少しでも解消するんだ……)
強く決意を抱きながら、王都の市場にもう一度目をやる。人々の表情はまだ不安を拭いきれない様子だ。でも、わたしは確信する。数字をちゃんと見れば、解決策はあるはず。わたしの“異世界の知識”をフル活用して、必ずこの国を変えてみせる。
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日が暮れる頃、わたしたちは王宮へ戻るため馬車に揺られている。レオナール殿下は窓の外を眺めながら何も言わない。わたしは書類を広げられるほどのスペースもないので、頭の中で今日の情報を整理しようとする。
今日一日で痛感したのは、想像以上に税負担が重いこと。そして庶民がその生活苦に耐えかねているにもかかわらず、誰も声を上げられない雰囲気があること。さらに、わたしが呪われた娘という噂を吹聴されていることで、改革にとりかかる前から世論の反発を買いそうだ。
それでも、やるしかない。馬車の座席に背を預け、わたしはそっとため息をつく。すると、殿下がほんのわずかに目をこちらに向ける。
「疲れたか?」
その声には少しだけ気遣いの響きがある。つい顔を上げ、正直に頷きそうになるけれど、変な期待を抱かせたくなくて言葉を飲み込む。
「……ええ、まあ。でも、やるべきことが山積みだとわかってよかったです」
「ほう。普通は絶望しそうな光景を見たら、くじけるだろう」
殿下が少しだけ興味を示すような視線を投げかける。わたしは迷わずに答える。
「現代でも、似たような問題は山ほどあります。格差が広がって不満が高まる中、どれだけ制度設計ができるか……それを考えるのが経済学というものです。数字は嘘をつきませんし、適切に分析すればきっと道はあります」
本音を言うと、急にこの異世界の膨大な問題に対して自信がない部分もある。でも、ここで弱音を吐くわけにはいかない。実際にできるかどうかはともかく、今はやるしかないのだから。
すると、殿下は唇をかすかに曲げる。笑っているのか、呆れているのか、どちらとも判別がつかない表情だ。
「わかった。なら、お前に期待してやる。……ただし、俺のものとして、だ」
その言い方にドキリとする。わたしは思わず眉をひそめて、言い返そうとする。
「わたしは、道具じゃない。殿下の“もの”って呼ばれるのは嫌です」
すると彼は鼻で笑い、こちらを見ようともしない。
「なら、結果を出せ。結果を出せば誰も文句は言わない。お前を呪い呼ばわりしている連中だって、黙らせることができる」
——結果で示せ。まさに合理主義者の言葉だ。でも、わたしも嫌いじゃない。結果を出すためなら努力するし、いずれは“本当に必要とされる相手”になりたい。そう思う。
「わかりました。……そのためには資料も必要だし、あなたの協力も欲しい。いいですよね?」
少し強気に言うと、殿下は軽く息を吐くように呟く。
「お前の要求が国にとって利益を生むなら、断る理由はない」
たぶん、これが彼なりの“Yes”なのだろう。もともと冷たい王子として有名な人だし、これでもわたしに対しては特別に配慮しているのかもしれない。そう思うと、なぜか胸がちくりと痛む。
この人は、本当に国のことを考えているのか、それともただの打算でわたしを利用しているだけなのか。まだ全然わからない。
……だけど、今日はこの一日が、わたしの改革への第一歩になるはずだ。少しずつ、前に進んでみよう。あの子供が安心して眠れる国になるように。
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そうして王宮に戻ってきたのは、日がすっかり沈んだ頃。大きな月が空に浮かんでいる。レオナール殿下は用事があるらしく、わたしを先に部屋まで送り届けると足早に去っていく。騎士や侍女たちもちらほらと周囲にいて、隙はない。
部屋に入るなり、どっと疲れが押し寄せる。簡単に着替えてベッドに腰を下ろすと、今までの緊張の反動で身体が重く感じる。それでも頭の中は、今日見た市場の光景でいっぱいだ。まとまらない思考をノートに書き出したいけれど、紙やペンはあるのだろうか。
そんなことを考えていると、扉がノックされる。誰だろうと思って開けてみると、侍女のルーシーが緊張した面持ちで立っている。
「七海様……宰相派が、また良からぬ噂を流し始めています」
彼女の話を聞くと、どうやら「今日の市場の混乱は、七海が呪いを振りまいたから」というデマをさらに煽ろうとしているらしい。市場に出向いたことでむしろ噂に火がつき、宰相派に利用されているのだ。
「そんな……わたしはむしろ、子供を助けただけなのに」
力が抜ける。だけど、ここで落ち込んでいても仕方ない。噂は放っておいても消えやしない。だからこそ、やはり改革の成果で黙らせるしかないのだ。
「ルーシー、ありがとう。……大丈夫です。やるべきことをやります」
わたしがきっぱりそう言うと、ルーシーは少し安心したように微笑む。
「殿下が七海様を守ってくださっているうちは、宰相派も手荒な手段は取りにくいはずです。……ただ、それがいつまで続くか……」
その一言に、わたしは言葉を失う。確かに、殿下の“所有物”として守られているだけでは限界があるし、彼の態度がいつ変わるかもわからない。
けれど、何もしないで怯えているわけにはいかない。まずはわたしが改革案を練って、この国の仕組みを変えるための“具体的な数字”と“現場の声”をまとめ上げなきゃいけない。あと数日あれば、ある程度の下調べはできるだろう。
だからこそ、今日は一旦休もう。明日から、また本格的に動き出す。そう決めて、わたしはルーシーを部屋から送り出すと、暗い部屋に一人で座り込む。
(必ず、何とかしてみせる。呪いだなんだと言われたまま、終わってたまるもんですか)
覚悟を噛み締めながら、遠くの夜空を見上げる。大きな月が、淡い光を落としている。
そして頭の片隅には、わたしを助けたときの殿下の言葉がこびりついて離れない。
——「こいつは俺のものだ」
あの冷たい声に宿る、わずかな熱。あれがただの演技なのか、それとも……。
自分でもどうして気になるのかわからない。だけど、どうか流されないようにしなきゃいけない。目的はただ一つ、国を変えること。そして、わたしは“呪われた娘”じゃないことを証明すること。
その思いを胸に、わたしは今日の疲れをゆっくりとほどくようにベッドへ横になる。明日からが本当の勝負だ。そう自分を奮い立たせながら、まぶたを閉じる。
——宰相派が本格的にわたしを排除しようと動き出すのは、そう遠くないはず。でも、この国の未来のために、わたしは負けない。レオナール殿下の協力が本物なのか見極めながら、必ずこの歪んだ王宮経済を立て直してみせる。
(数字は嘘をつかない。だったら、それを武器に戦うだけ……)
そう何度も自分に言い聞かせながら、意識が深い闇に溶けていく。
(……絶対に、道をこじ開ける)
胸に灯った決意を抱いて、夜は静かに更けていく。
面白い/続きが読みたい、と感じて頂けましたら、
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