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二鷹の欺瞞譚  作者: 結城斎太郎
一章
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3「桑久保結衣」

従弟相手に劣情を抱くような危険な女ではあり、高校時代の初恋相手に俺を上げてしまうほどの異常者。


どこにでもいるような見た目の女。まず、従姉相手に俺は劣情を抱くような感性の持ち主ではない。


確かに、法的には結婚出来るではあるのだが。法的にも認めれた血の繋がった夫婦になれるとしてもだ。


俺も一人っ子であり、向こうも一人っ子。分家との交流も十分にあるお陰で、従姉というよりも姉という意識の方が先行している俺にとっては、下心を抱かれるのは複雑な心境ではある。


ただ、嫌とまではいかないのだから、何かふとした拍子に変わる可能性はゼロではないのだろうが。


姉のようなものであって、姉ではないのだ。意識なんていうものはいくらでも簡単に変わるもの。それを分かっているからこそ、それを狙って、近い距離感を維持し続けている。


俺も、七つも年上の姉代わりと言う割には普通に「結衣」と呼び捨てにしている。二人でよく出かけることも多く、顔立ちも全くもって似ていないので、高校の時からも年上の彼女が俺に居ると勘違いしている友達もいる程だ。


十年来の幼馴染みの男友達ですらも、結衣と俺が服屋で買い物をしているところを見掛けては「お前の彼女?」と聞くほどだった。


俺は何の恥ずかしげもなく「あれ、従姉」と話す。何にも恥ずかしがることは無いという感覚であるため、「シスコンみたいもん?」と言われようが、当たり前のように「仲悪いよりはマシだろ」と返している。


周りの目を気にするくらいなら、最初から二人でお互いの知り合いの目があるような場所で買い物はしない。


俺にもプライドというものが存在しない。あっても無駄なものはとことん捨てていく主義だ。


俺の人生において一番不要なものが虚勢とプライドだ。虚勢という鍍金を貼り付けたところで俺にとっては何一つとしてメリットが生まれない。高いプライドを保持したところで俺にはデメリットしか生まれない。


俺以外の人間も、大半はそうなってしまうであろうに。何故、どうして、鍍金とプライドで自分自身を偽ってしまうのだろうか。


やがては簡単に錆び付いてしまっては、鍍金を貼る前によりもずっと汚く腐り落ちていってしまうのに。


その意識と考えを常日頃から、幼い頃から持ち続けた結果が今の実績に繋がっていると自負している。



その振る舞い方が、どうやら結衣にとっては恋に落ちる理由になってしまったみたいだ。従姉でなかったら、弁護士という肩書きが無かったとしても普通に付き合っている。


寧ろ、俺からアプローチを仕掛けたくなるほどには人間としての魅力は身内贔屓無しにある。


母親とは方法性が全く違う人を惹き付ける何かがある。母親がカリスマ性ならば、結衣はアイドル性に近いものだろうか。


尊敬させる距離感か、親しみやすさのある距離感かの違い。それを天性の才能によって極めるところまで極めている点は同じと言える。


なので、一緒に居て恥ずかしいなどと思ったことは今まで一度もない。好意を向けられても、嫌ということはない。従姉という関係性が壁になっているせいで複雑というだけだ。


一人の人間としての好感度は高い。嫌いなんてことは有り得ない。


そこだけは誤解しないでもらいたい。


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