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二鷹の欺瞞譚  作者: 結城斎太郎
一章
2/20

1「鷹司和也」

宗家の跡継ぎは決して、年功序列で決まるものではない。しっかりと人材を見定められた上で決められるもの。


宗家へのゴマすりや、一族内での蹴落とし合いによる偽りの評価ではなく、一族とは無関係の第三者、仕事繋がりや業界の重役からの評価、実績などの要素を総合的に判断した結果、その時の当主の意志を最終決定機関として決定される。


そういった背景が明確とされている手前、ある種の公平であり平等である扱いが存在する。


要は勝者は勝者らしく、敗者は敗者らしく生きろということを前提としたものとなる。年功序列によって歳食っているだけで無能な奴が上に立てば、一族の信頼と評価を著しく下げることになる。


なので、宗家の子供から有能な人材が産まれなければ、スペアである分家から引き抜くことも当たり前のようにある。



勿論、男女不問で当主は選別される。


うちの両親がまさに良い例だろう。うちの母親は元々の分家の産まれであったが、圧倒的なカリスマ性と人脈、行動力で前当主から直々に現当主に任命された。


父親の方は官僚出身の名家の生まれだったが、鷹司には遠く及ばないほどの家柄ではあったので、そのまま婿養子。


政略結婚では無かったらしいが。父親から聞いた話では、母親からの猛アプローチの末に結婚をしたのだという。


単純に「人柄に惹かれた」という。前当主が亡くなり、鷹司家当主として任命されたばかりの三十路手前の頃に結婚したというのは知っているが、ほぼ当主になることが確約している状態であったこともあり、それをダシにして自分を口説き落とそうとしたのだと。


能力と拘りがあるだけで、そこまでプライドが高いわけではない母親。プライドが高いように振る舞っていながらも、自分の理想を叶える為ならば、誰にでも平気で頭を下げるような人種だ。


その考えが分かっていたからこそ、そこまで純粋な強い好意を無下には出来ないということで結婚したのだという。


母親は裏表の無い人格者として通っている。歴代当主の中でも最も能力が高いとされ、外部からの支持率も高い。それでいて基本的に物腰が低いともなれば、誰からも好かれるようなカリスマ性を持つのは納得。


その人格者と謳われる母親の息子の俺が放任主義の中で育ったのも、自分で考える能力を付けさせるために、裏で父親と協力しながら、物事を考えさせるための誘導を行っていたというのもある。


放任主義であったが、放任主義の理想形になるように仕組まれていた。


そのように育てられた子供が詐欺師として活動している。


両親の繋がり………両親のコネを最大限に使っては政財界や裏社会にまでしっかりと浸かり、そこで自分なりの立ち回りを見つけては完全犯罪を成り立たせる。


警察や弁護士とも連携を取り、民事でも刑事でも処させることがないように動き続けている。


ここまでの完璧な布陣を作り上げることが出来る力の基礎を身に付けることが出来たのは、両親の放任主義があってこそ。



現在、俺のやっていることは特に褒めることも怒ることも無い。元より裏社会の人間と関わり続けているような一族でもある。


裏社会寄りの人間に育ったというだけであり、一族の成り行きに関しては特に問題は無い。


寧ろ、必要悪の底上げを行っているので、外部からも一族………分家からの評価も高い。


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