第9話 第一関門
高校1年生、16歳の天音雫です!
何かと至らない点があると思いますが読んでいただけると嬉しいです!
「……お母さんの尋問質問に耐える覚悟はできてる?お姉ちゃん」
「えぇ、勿論……
今が夜ってことも含めると相当マズイわよね……」
一ノ瀬家の玄関の前。
あのあと急いで、という言葉が軽いほどのスピードで時雨夜から人間界へと舞い戻ってきた二人は、息を切らしながら、そんな会話を交わしていた。
「言い訳、暗記した?」
「勿論よ。私達は泊まりにいって、本当は昼に帰ってくる予定だったけど、近くのアミューズメントパークに急遽行くことになって……」
「時間を忘れて遊んでいたらこんな時間になった、と。
それで、荷物は友達の家にあって、2日後にまた泊まりに行く。
その日は1泊で絶対に帰ってくる……」
あとを引き継ぎ、短時間で考えた嘘の理由を最後にもう一度おさらいする。
ここまで完璧にすればとりあえず辻褄は合うだろう。
書き置きのメモは一応おいてきたが、その1枚で納得するような放任主義な母親でないことは姉妹とも重々承知だ。
「……本当は、その日は私達、桐ヶ谷神社の代理守護者なのよね。人間界に何も起こらないように監視する……」
「うん。この口実なら多分、大丈夫。
2人が桐ヶ谷神社に来ない限りは……
あとは今回と2日後の宿泊を許してもらえるか、かな」
「私達のお母さんを信じましょう?」
「その過保護さを?」
「そっちを信じちゃったら100%許可が降りない計算になるわ……」
二人とも思わずため息をつく。
しかしため息をつけども埒は開かず状況は変わらない。
意を決して2人はインターホンを押し、
「あぁっ、二人共、お帰りなさい!!」
電光石火の勢いで扉を開けた母親に首が締まるほど強く抱きしめられたのだった。
「お、お母さん、苦しい、苦しいっ…!」
「まぁ、ごめんなさい!
もう、二人共いなくなっちゃって私とっても寂しかったわよ〜!書き置きに泊まるなんて書いてなかったじゃないの〜!」
「ご、ごめんなさいその……!」
「良いじゃないか〜、たまには夫婦2人だけで過ごすのも悪くなかっただろ?」
一ノ瀬家の玄関にゆったりと姿を、現した父、祐介がにっと笑みを浮かべた。
「お帰り、二人とも。
”お泊まり“、楽しかったかな?」
「え?!う、ううううん!
す、すーっごく楽しかった!あ、そ、それでね!」
「2日後にまた泊まりに行くんだけど良いかしら?」
「えぇ〜〜!そんなぁ、また行ってしまうの?」
言い訳の過程を全て吹っ飛ばして結論だけぶつけた姉に母も過程をもとめずただ悲しそうな顔をする。
この必殺、省略&吹っ飛ばし会話が通じるのは沙奈だけだろう。
「まぁまぁ、とりあえず家の中に入ってゆっくり話そうじゃないか。夜風はよくないぞ?」
「それもそうね!
二人共疲れているでしょう?
中でゆっくり話しましょうか」
結論を急いだことを恥じるように沙奈は照れくさげに笑みを浮かべる。
姉妹2人はそっと胸を撫で下ろす。
まずは第一関門突破だ。