第4話 I don't remember
高校1年生、16歳の天音雫です!
何かと至らない点があると思いますが読んでいただけると嬉しいです!
「っ……、な、ぁ…」
混濁した記憶の中から意識が浮上し葵は重いまぶたを開ける。
澄み切った青い空、どこからか聞こえてくる澄んだ鈴の音。
時雨夜だ、とすぐに分かった。
掌に重みを感じてそちらに目をやれば大の字になって倒れる自分の手にしっかりと、杖が握られていた。
左横には解術師の咲夜が倒れていて。
「な、何…?何が、何があったんだっけ…」
記憶がぼやけすぎていて気持ち悪い。
何がどうしてこうなったのかを何一つ思い出せない。
「っ…、咲夜さん、大丈夫ですか?」
起き上がり、腕を揺らせば彼はゆっくりと目を開け、
「ん〜?今日の朝食は俺担当じゃないっスよ……まだ寝させ……て……」
「…………」
人間界にありそうな日常風景の一幕のセリフが出てきて不覚にも葵の心がチクリと痛んだ。
咲夜の家庭を羨んで、ではない。
もうずっと留守にしている一ノ瀬家のことを思い出して、だ。
明らかにお泊まりの範囲を超えている気がする。
………ところで、雅を助けてからどれくらい時間が経ったんだろう?
「っ、咲夜さん!起きて!起ーきーて!!」
答えが出ないことに焦燥感を感じ強く咲夜を揺さぶれば、
「うおわぁっ!び、びっくりしたっ……!どうしたんすか葵さん、心臓に悪いッスよ…?」
「私の心臓の鼓動も今止まりそうなんです!!
今いつなのかわかりますかっ?」
行き場のない焦りを半ば咲夜にぶつければ、
「え〜?あー、雅さん救出してから1時間くらいしか経ってないッスよ?」
寝ぼけ眼で袴の懐から懐中時計のようなものを取り出しそう答えてくれる。
「よ、良かったぁ……」
「ん…?よ、良かったんスか…
良かったッスね」
葵の家庭事情も何も知らず、叩き起こされても同調してくれる咲夜の人の良さ、ならぬ神の良さが発揮されたところで。
「ところでーーー俺達って何でこんなことになってるんスか?」
肝心の疑問に蜻蛉返りするのだった。