第23話 火傷にご注意!
高校1年生、16歳の天音雫です!
何かと至らない点があると思いますが読んでいただけると嬉しいです!
「な、なに…?」
音が消えた境内に、葵の声が嫌に響く。
「お、落ち着いて、あおちゃん…
きっと、気のせいよ……ね?」
怖気がこみ上げ、葵は立ち上がって辺りを素早く見渡した。
「お姉ちゃん、戦う準備、出来てる?」
「あ、おちゃん…」
「良くないものが、来る気がする」
「ぁ……」
「お姉ちゃん?」
朧気な返答、その違和感に葵は姉の方へと振り返り、
「お姉、ちゃっ………!?」
そして、見た。
見知らぬ“誰か”が、姉の首に、日本刀を突きつけているのを。
その”誰か“は、全体的に黒くて、よく見ようとすればするほどぼやけて認識できない。
目の前にいる相手のことを、脳が処理できない、その違和感に葵は戦慄を覚えた。
しかし葵にとって相手が女でも男でも、神でも妖魔でも誰であっても、関係はなかった。
どれほど怖くても、姉に危険が及んでいる、その事実だけで、葵が行動を起こすのには、十分だった。
「っ…!」
咄嗟に権能を使おうと手のひらに意識を注ぎこみ、
「あぅ、く…」
そのままの姿勢で葵は動けなくなった。
恐怖から、ではない。
脚が、一瞬にして凍りつき、地面へと縫い止められたのだ。
それを成し得たのは、眼前、姉の命を握る“誰か”。
日本刀を、持っていない方の手を、葵の脚元に向け、凍りつかせたのだ。
「う…、」
パキパキ、パキパキ、と音がして、氷の侵食が進む。
既に侵食は脚から腰にまで及んでいる。このままでは氷像と化すのも時間の問題だった。
しかし、
「あおちゃんに……なにするつもりよ…!」
愛する妹が氷像になるのを黙って見届けるほど、瑠依は甘い姉ではなかった。
たとえ、見知らぬ、不気味な”誰か“が、自身に日本刀が突きつけていたとしても。
瞬間、
「お姉、ちゃーーーーあっっっっづ?!」
葵の全身が炎に包まれる。
否、葵だけではない。
葵を中心、というよりもはや火元として桐ヶ谷神社一体全てが火災現場と化す。
神殿も、お賽銭箱も、周囲の木々も、全て紅蓮の炎に包まれる爆ぜる。
そして、姉の首に日本刀を、突きつけている”誰か“もまた、炎に包まれ姿が見えなくなる。
「あっっづいってばお姉ちゃんっ!!」
咄嗟に風の権能で自らを燃やす炎を何とか消火する。
足元の氷が解けたのは良いが代わりに火傷寸前まで追い込まれた。
「あ、あおちゃんっ…!
ご、ごめんなさい!
つい、やりすぎちゃって…」
自由の身になった姉に首が締まるほどの勢いで抱きつかれ、葵はぐえっと声を漏らした。
「そ、それより、早くこの境内内の火も消さなきゃ!」
「ご、ごめんなさい、炎の勢いを弱める方法はまだ完璧に習得できてないのよ……
今頑張ってるんだけど…」
「うん知ってる分かってる大丈夫!」
着火に長けているが消火、鎮火の仕方を全く知らないというのは葵も周知の事実であった。
故に、火と相性最高の風の権能で、この炎を全て鎮火しなければならない。
下手を打てば周辺の家々にまで延焼し被害は増す。
しかし桐ヶ谷神社が燃えて灰になってしまえば、
「渚冬さん達がこっち(人間界)に来られなくなってしまうかもしれないわ…」
ここ、桐ヶ谷神社には人間界と神の世界、時雨夜を繋ぐ扉がある。
そして、渚冬ファミリーはこの街を守る“守護者”だ。
もしも彼らが、ここに来られなくなるようなことになってしまったら。
それはマズイと、あってはならないことだと、葵の本能が警鐘を鳴らし続けている。
故に、手のひらに再び力を漲らせ、炎を鎮火させるような強風を吹かせんと、
「おー、マジかよ。
これじゃあまるで火災現場だな。
ってかむしろ火災現場か。
消火器じゃ収まりそうもないな。
さすが俺の娘だ」
声が、聞こえた。
思わず顔を向ける。
桐ヶ谷神社の鳥居の前、一人の男がこちらに笑顔で手を振る。
その姿には見覚えしかない。
黒髪短髪、軽妙な口調に少し低めな身長。
どこにでもいるような平凡な見た目の、一ノ瀬家の大黒柱。
「「お父さんっ?!」」
衝撃に、葵と瑠衣の声が重なる。
「ははっ、そんなに驚いてもらえるなんてな。
まだ痛む俺の可哀想な足の小指を無視して、駆けつけてきたかいあったってもんだ、なっ!」
そう言い、こちらに振った手のひらをそのまま空へ。
直後、空から無数の水滴が落ちてくる。
「あ、雨…?」
落ちてくる水滴は勢いを増し、たちまちゲリラ豪雨並になる。
炎はあっという間に勢いが衰え、鎮火していった。




