第2話 尊い心
高校1年生、16歳の天音雫です!
何かと至らない点があると思いますがが読んでいただけると嬉しいです!
「……本当に大丈夫かよ」
仏頂面をする雅に睨まれ葵は思わず小さくなった。
「多分絶対大丈夫です」
「どっちだよ」
「………大丈夫です」
「多分も絶対も消えたな、おい」
「ほ、ほらー、あんまりいじめないであげてくださいッスよ、雅さん」
顔を曇らせる葵に慌てて咲夜のフォローが入る。
「お前は命知らずだな」
「恩知らず、とは言わないんですね」
命を救ってもらったことを揶揄した葵に雅は形のいい眉を寄せて不機嫌そうに声色を低くした。
「恩ってほどでもねぇよ」
「あ、照れてるっスか?」
「照れてねぇ」
口を隠してにやける咲夜に強い口調で反論し鋭い視線で黙らせる雅。
その表情には苛立ちが滲んでいた。
……恐らく、照れを隠すための。
場所は異界のとある通り。
桜と瑠依はすでに咲夜の同期と共に時雨夜に戻っていた。
………瞬間移動によって。
『扉のありかは僕たちも解術師も知らないんですよね…
いつも瞬間移動で何とかしてて…』
そう曖昧に笑っていた咲夜の同期の姿が葵の脳に鮮明に蘇る。
本当に限られたものしか正式にこの場所に入れない。
この場所に瞬間移動ができるのも、解術師の一部の神だけらしい。
現在、雅は少し先に別の咲夜の同期を待たせ、葵に、約束の反故を提案していた。
葵の頑固さに、仏頂面になりながら。
「本当、お前は頑固だよな。
桜を助けようとした時も、俺を助けようとした時も」
「俺達神様にはない、人間さんの尊い精神ッスよ」
「尊いかはわかんないですけど…
約束を破るのはよくないことなので…」
「雅さん、尊重して上げてくださいっス。
俺も付いてるんで」
「異界は迂闊に神とか人間がうろつく場所じゃねぇよ」
「すぐに戻ります!」
「…………」
葵と咲夜のゴリ押しに、雅はハァ…と重たいため息をつく。
雅は並んで立つ葵と咲夜に背を向け、
「……気をつけろよ」
ついに折れた雅に葵は満面の笑みを浮かべて、
「!雅さんもしっかり体休めてくださいねー!」
「はいよ」
後ろ手に手を振り、先に待つ解術師の元へと歩いていく雅を見送る。
解術師と何か言葉を、交わすのが見え、それから瞬きの間に、影も形もなくなった。
雅は、異界を去った。
「さ、行きましょうッス。
とっとと杖を取ってきて俺たちも時雨夜に戻りましょう!」
「了解です!
よろしくお願いします、咲夜さん!」
溌剌とした声が2人分、異界の空に響いた。