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第16話 隠された過去

高校1年生、16歳の天音雫です!

何かと至らない点があると思いますが読んでいただけると嬉しいです!

「氷鬼……?呪い…?」


放り投げられた言葉の意味が分からず、桜はただ繰り返すことしかできない。


「呪いです。全て、氷鬼が、悪いのです。……渚冬様は何も悪くない」


「そ、そうですよ!

渚冬様は被害者です!!

氷鬼が、氷鬼さえいなければっ!」


必死の形相の結の言葉も桜には届かない。


「渚兄は、いつも元気そうにしてたのに、嘘だったの…?

それに、ほかの神様を氷漬け……?氷鬼って……、」


「……一つずつ、説明しましょう

結さんも、落ち着いて」


「っ……、すみません。

結も、ちゃんと、冷静に説明します。

これは、結も、話さなきゃいけないことなので」


「……さっきから私、何回もそう言ってますけど」


「ふぇっ!ごめんなさいっ!

だって、あまりにも酷い過去ですから、どうしても、記憶を封印しておきたくてっ…」


「僕も気持ちは分かりますが…

やはり、過去を忘れるべからず。

封じてはいけないものもあるんですよ。

そうですよね、兄上」


「……そうですね」


「まず、氷鬼のことからお話ししましょう。

氷鬼は、三千年前、時雨夜を氷漬けにした悪神です」


「え…?!」

さらっと語られる壮絶な過去に、桜は驚愕に目を見開いて瞠目した。


「まぁ時雨夜が全て凍結しきる前に、当時の執行人がどうにかこうにかして封印したらしいのですが」


「その封印が、30年前に解けてしまったんですよ……結にも理由はわからないんですけど……」


「そうして野放しになった氷鬼は、変装し、まだ幼かった渚冬様を氷鬼の住まう森へとおびき寄せ、呪いをかけた」


「……あのとき、渚冬様、まだ小さかったですよね。僕もよく覚えてます」


遠い目をした菜月がそんな言葉をもらす。


桜には、自分の兄にも小さい時があったなんて少し考えられなかった。


自分が物心ついた時から常に、渚冬は、大きく、頼りがいのある存在だったのだから。


目を伏せた結がゆっくりと口を開く。


「そうして、呪いをかけられた渚冬様は、氷の権能となったのです。

桜様はおわかりになられないかもしれないですが、少し前の時雨夜は、氷や雪といったものを酷く忌み嫌う風潮が強かったのです。

……かつて、氷に閉ざされかけた歴史があるものですから。

実際、結も、雪も氷も苦手でした。でも、人間界でかき氷というものを食べてからは…!」


「話が脱線していますよ、結さん」


「はっ…!す、すみません?!」


「本当に、結様は話が脱線しやすいんですから。まぁ、僕も人のことはいえませんけど…」


「あはは……自慢じゃないですけど、結、話脱線させるの得意なんですよね」


本当に自慢にならないことを自慢され、巳年2人はよく似た仕草で頭を抱えた。


「渚兄が氷の権能になった理由は、うん、わかりました。

でも、氷漬けにしたって……

どういう、ことですか?」


まだ受け入れられない気持ちも大きい中、結の脱線にも構わず次なる疑問が桜の胸中を占めていた。


兄は、他の神を、その権能で傷つけることなど絶対にないはずだ。


それは、桜の命に賭けて言えることだった。


「渚兄はいつも、皆のことを守るときだけ、権能使ってて…」


「不慮の事故でした」


ただ淡々と、過去の出来事を紡ぐ爾月のその瞳は暗い。


「星彩の魔女の封印が何者かによって解かれた。そのせいです」


「せ、星彩の……?」


「かつて、氷鬼のように時雨夜に災厄をもたらした1人の“女の子”です。彼女は神ではなく、魔法使いと呼ばれるような存在だったようですよ」


聞き覚えのない単語を繰り返す桜に結が(脱線することなく)補足を入れる。


「星彩の魔女はほんの数十年前の厄災です。かの”神殺し“の真相は未だ掴めていませんが……、

私達の先代の執行人が苦労して封印したんだとか」


「なんか……ふういんされてるの、多い…」


氷鬼に星彩の魔女。


桜が知らなかった、大災厄を起こした存在が一気に2人も登場してしまった。


「…かつて時雨夜は神と人間と妖魔と魔法使いと……いろいろな存在がごちゃ混ぜで存在していた世界だったらしいですよね、兄上。それを、執行人が世界をうまく区切り、今の時雨夜が作られた」


「そうです。しかし、大昔の存在は今でも時雨夜の何処かに眠っていたりする。氷鬼がいい例です。

まぁ、世界を区切ったとは言え、妖魔の世界とも人間の世界とも繋がっているわけですし、いろいろな災厄が降りかかっても文句は言えないですね」


「そうなんだ……」


思ったよりも身近に危険はある。


兄2人が桜の外出を過剰なくらいに心配する理由が何となく分かったような気がした。


「まぁ、そんなわけで、星彩の魔女の封印が解かれ、氷鬼の呪いの残滓に惹かれ、渚冬さんを追跡し、星彩の魔女は暴走し始めたのです」


目を細め、爾月は真っ直ぐに桜を見つめて言った。


「あのとき、渚冬様はご友人の夕星さまとご一緒でした。共に狼車で避難され……途中で追いつかれた」


桜の背筋に悪寒が走った。

未知の存在に追いつかれる恐怖。


2人きりで封印されていた悪しき存在と向かい合わなければいけないこと。


桜には耐えられる気がしなかった。


「僕が駆けつけたときには手遅れでした。

渚冬様は呪われた権能を暴走させ、星彩の魔女を氷漬けにすると同時に、夕星様まで氷漬けにしてしまったんです」


「まぁ、詳細をもっと言うなら、彼の周り半径3メートルくらいは全て氷漬けになりましたね。

全く凄まじい光景でしたよ」


爾月の意志の感じられない瞳と覇気のない表情、桜にはそれがあまりにも弱々しく見えた。


「まぁ、その後、結もいろいろ見たり聞いたりしましたが……

星彩の魔女は結局、何者かに操られていたことが分かりましたね。渚冬様は……一時的に牢送り、次いで玲瓏送りに」


「そんな…渚兄が、牢送りに?

そんな……1回もそんなこと、教えてくれなかったのに。秘密にしてたの……?桜が頼りないから…?」


結の言葉を受け、桜は己に自問自答する。


自分がもっと強ければ、兄は1人で抱え込まなかったのではないか。


自分がもっとうまく人間社会となじめていれば。


自分がもっとしっかりした神様だったら。 


自分がもっとーーーー

「桜様っ!」


後頭部に腕が回り、何事かと思うまもなく頭を引き寄せられる。


正面、暖かな熱に受け止められ、桜の思考が一瞬停止する。


「どうか、ご自分を責めないでください…!

あなたは何も悪くない!

あなたは、あなたは……!」


耳元で響く必死な声。

その声には悲痛さが滲んでいる。


「結が悪いのです!

渚冬様も、湊様も…!皆悪くないっ…!

結があのとき、もっと、早くに駆けつけていればっ…!」


「……結さん。何故自分自身ばかり責めるのですか」


「まぁ、確かにあの件の責任は僕達執行人にあります。

僕も到着が遅れましたし、そもそも兄上は湊様を人間界に送り出してましたし。

……ほかの執行人が何をしていたのかは知らないですけど。でも、結さん1人のせいじゃないですよ」


歩み寄った2人が、結の悔恨と顔に浮かぶ悲哀を見取ってそう言ってくれる。


しかし、過去が変わるわけではない。

だから、結は桜を離さずぎゅっと抱きしめる。


……そうして、腕の力はどんどんと強くなっていき、桜は呼吸が苦しくなり始める。


「結のせいなんです。結たちのせいなんです。

結があのとき、嫌な予感を無視せずにいれば、封印の揺らぎを感じ取れていれば…!」


「ほら、結さん、落ち着いてください。

桜様のことを、押しつぶしたいのですか?」


「……ハッ?!大丈夫ですかっ?!」


「だ、だいじょぶ、です」


ようやく解放された桜はコホコホと咳をする。


「ホントですか?!大丈夫ですか?!

気管支とか潰れちゃったりしてませんか?!」


「ん、全然大丈夫です。

ぎゅーってしてくれて、ありがとうございました」


不安げな結に桜は無理やり作った笑みで応じる。


しかし結の様子を見るにどうやらその笑顔は大分失敗だったらしい。


結の顔は強張り、おまけにどんどん青ざめてーーーー


「……ついに、来ましたか」


待ち合わせに遅れた相手に呆れるような口ぶりで爾月が溜め息をついた。


しかし、視線は空へと向いている。


「桜様。続きは後で話します。

兄上も結様も、それで良いですね?今は」


「は、はい。神代を」


桜も、つられて上を見る。

青々と茂る森の木々。

その隙間からは綺麗な青空が見える。


その、青空に。

何かが、舞っている。


鳥のような、凧のような。


あれはなに。


桜が目を細めると、


ーーーー唐突に“それ”は落下速度をあげ、聖域の森の地面へと追突する。


「………式神、ですか。

私達も舐められたものですね」


地面に追突したのは、数枚の紙切れ。


しかしその紙には朱文字で不気味な模様が描かれていて。


その模様を細かく見ようとした刹那、紙が忽然と消え、


「!皆さん、避けてください!」


無数の刃が虚空に閃いた。


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