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第15話 昔の話を

高校1年生、16歳の天音雫です!

何かと至らない点があると思いますが読んでいただけると嬉しいです!

そして、そんなガチガチの会話から早3時間。


4人はあのあとすぐに、決意をみなぎらせて引き戸をひき、怜央の聖域へと入ったのだが。


「………びっくりするくらい何にも起きないですね

あと、怜央様の聖域、そのー、自然豊か、ですね」


結は聖域の青く澄み渡った空を何とも言えない表情で見上げた。


「何かしら攻撃を仕掛けてもいい頃だと思いますが…

どう思いますか、兄上」


生い茂った草を引き抜いて地面を露出させ、水気を含んだ土に複雑な五芒星を描いていた菜月は視線を兄へと向けた。


視線の先にはゆったりと腕を組みどこか一点を見つめ続ける爾月の姿がある。


しかし、その表情はどこか虚ろだ。


「時期尚早なのか、もしくはあの犯行声明が嘘であったか……」


「じ、じゃあ、この聖域には誰もこないってことなんですか?!」


穏やかに流れる時間、眠気に負けそうになっていた桜の意識が一気に覚醒する。


このまま誰も来ない可能性なんて考えもしていなかった。


「罠の可能性も十二分に考えられます。

その場合、何処かで急襲が起こっていてもおかしくはない。犯人の目的が神代でないのなら………」


「僕達はまんまと陽動させられたってことですか、兄上?!」


「そっ、そんなっ!

それならばはやく時雨夜に戻ったほうがっ!」


「しかしその真偽を確かめる術はありません。

私達がここを離れた途端に攻撃を仕掛ける可能性もある。分からないんですよ。

故に、ここを動けません」


早口になる執行人2人の動揺に蓋をするように爾月は諭す。


ここに来てしまった以上はあとに引くことはできないのだと。


 「そ、そんな…」


「今のところ凄く平和な森の中って、感じですよね」


「寅年だから森なのでしょうか…

森に何か思い入れがあるのは間違いなさそうですね」


そう、桜たちが足を踏み入れた怜央の聖域は、ピーヒョロロロロロという鳥の楽しげな鳴き声やさえずり声が絶え間なく聞こえる森の風景を映し出していた。


聖域はその神代を持つ者の思い出や思考を反映する。


聖域という名前と、神代がある場所という認識こそ一緒だが、その風景は人によって、否、神によって十神十色なのだ。


暖かな風が、切り株の上で足をぶらつかせる桜の髪を揺らす。


柔らかな日差しが行き場のないやる気を持て余したメンバー全員を照らしている。


「あの、……少し、執行人さんの皆さんに、きいてもいいですか…?」


沈黙を破り、桜は真剣な眼差しを向ける。


「あの、聖域とはあんまり関係なくてごめんなさい、なんですけど、」


「……何でしょうか?

結達に答えられることであれば何でも答えますよ、そうですよね、爾月様、菜月様?」


「何もしてないことの罪悪感を質疑応答で消そうとしないでください、結さん」


「ぇ゙っと、そういうわけでは……」


頭をかいた結が気まずそうに半笑いを浮かべる。

実際、何一つやることがないのが現状なのだが。


「僕たちに何か聞きたいことがあるんですか、桜様?」


再び五芒星を描き出していた手を止め、菜月もこちらに向き合う。


今しかない。

これを逃せば、きっとずっと分からない。

桜の本能はそう告げていた。


だから、桜は意を決して口を開く。


「……渚兄はなんで、きらわれてるんですか……?」


その言の葉を発した瞬間、執行人のメンバー全員の顔に傷ついたような表情が浮かんだ。


それに構わず、桜は続ける。


「渚兄、ホントは水の権能、なんですよね…?

でも、今、氷の権能。渚兄、桜と湊兄に、もともと氷の権能だって隠してる。どうして…?

どうして皆、渚兄のわるぐち言うの…?」


敬語も抜けて、声色に悲しみを滲ませる桜。

執行人の面々は苦しげに押し黙る。


「桜様……」


「いいです、結さん。

全て教えるべきです」


「しかし兄上…!」


「今回の桜様との同行メンバーから見て分かることでしょう。

私達3人が、3人”だけ“が何故、渚冬様ではなく、桜様との行動になったのか。」


何処までも冷静。しかし、爾月の瞳の揺らめきが彼の激しい葛藤を物語っている。


「考えれば分かるでしょう。

そして私たちには、ーーーーその義務があるのでしょう」


その一言に、爾月を除く執行人全員の表情が変わる。


「何でも答えるのでしょう、結さん」 


「っ…!」


急所を突かれ、押し黙る結に爾月は先刻の言の葉を繰り返す。


「私達は教える義務があります」


「そう、ですよね、兄上」


執行人同士にしか分からないやり取り。

そこにある感情は複雑すぎて、誰にも読み取れない。


「桜様。お話します、全てを。

ですが、……少しばかり辛い話になるかもしれません」


「うん、わかり……ました。

お願いします」


話す義務があると、諭した結と菜月が口を開きそうにないのを横目で確認し、爾月は溜め息をついて、


「……桜様。あなたの兄である渚冬様は、氷鬼に呪われています。

そしてその手で、1人の神を氷漬けにしてしまったのです。

皆が渚冬様を恐れ、悪意ある目を向ける原因は全てその2点にあります」


桜の心臓に痛みが走った、ような気がした。





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