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バドミントンでわんこそばの掛け声をやったった……  作者: 三好ペペロンチーノ
第5章 優花、パンイチ変態野郎を妨害したった!

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第31話

 文化祭が終わって数日が過ぎた。

 準備やら店番やらはなんだかんだでたのしかった。

 でもやっぱりいつもの生活が1番—

 俺の顔面を岩破先輩が打った殺人シャトルが横切った。

 —1番たのしくねえよおおおおおぉぉぉぉぉぉぉ!!!

「岩破先輩。俺は先輩の練習相手になれませんよ。だから俺を相手にスマッシュしないでください」

 放課後、体育館で俺は岩破先輩と2人きりで練習していた。

「1番練習相手にふさわしい竹土先生は定時になる前に帰っちゃったし、あたしの次にバドミントンが上手い東村は情報収集がどうのこうのって言ってどっか行っちゃったし、じゃあ1番ボコボコにするのが楽しい弐星が練習相手に適任かなって」

「2人ともカスみたいな理由でいなかったのかよ! ……そういえば小白さんと大陸はどうしたんだろう?」

 もしあの2人がいたら俺が拷問されずに済むというのに。

「小白は掃除当番で遅れるらしくて、大陸は『ごめんなさい、ごめんなさい』って言ってあたしから逃げた。安心して。大陸は明日あたしの本気のスマッシュを受けてもらうから」

 先輩が本気のスマッシュをしたら、地球が滅亡するんじゃないのか?

 俺は先輩に喉が渇いたと言って、早足で荷物が置かれてる場所へ向かった。

 優花ちゃんが体育座りして縮こまっていた。彼女いわく、ラケットを持ってる状態の岩破先輩の近くにいたら除霊されそうで怖いということらしい。だからできるかぎり近づきたくないとか。近づきたくないといえば、師匠に対してもそうだったような気がする。

『ヒマだし怖いしで私帰っていい?』

「それはダメだ。もし俺が死んだら誰が死体を回収すんだよ」

『ここって戦場だったっの!』

「やっぱり、とんずらするしかねえや」

 俺はリュックを背負うと、足音を立てないようにして体育館のドアへ向かった。

「弐星、まるで今から部活をサボろうとしているように見えるけど、どこ行くつもりなの?」

 ラケットを持っている先輩が声を掛けてきた。

「水筒が空になったから、水を汲みに」

「荷物多いね」

「さようならあああああぁぁぁぁぁぁ!!!」

 俺は即行で体育館を出た。

 その瞬間、先輩が俺に向けてスマッシュを打ってきやがった。俺は危機一髪脇腹スレスレで回避したが、衝撃波の影響か体育着が少し破けてしまった。

 シャトルは体育館に続く廊下の床に、俺がスッポリ入れそうな大きさのクレーターを作っていた。

「なんで回避しちゃったの! ちゃんと打ち返さないとだめじゃん!」

「避けないと死ぬやつですって!」

「何言ってるの? これくらい当たり前でしょ」

 バドミントンって殺し合う競技だったんだ。

『そんなわけがない!』

 珍しく優花ちゃんがツッコんだ。

 これ以上逃げたら俺の命と地球がなくなりかねないと考え、俺は荷物をもとの場所に置いて、ラケットをまた掴んだ。

 また拷問を受けにコートに入ったとき体育館の入口から小白さんの姿が見えた。

「あの……、廊下の穴は何ですか?」

 なんとなく原因がわかっているのか、あきれたような顔をしていた。

「それは先輩が……」

「弐星がバックレようとしたから、あたしがスマッシュして弐星の骨をいくつか折って身動きを取れないようにしようとしただけで……」

「先輩、俺がスマッシュを受け止められないのわかっててやったんですね!」

「弐星の生命力だったら軟体動物になっても生きれるから大丈夫だって」

「後輩がタコの仲間になってもいいのかよ!」

「別にいいでしょ」

「弐星くんが軟体動物に……なってもどうってことないか」

 おい!

『私と同じ人外になるんだからうれしい!』

 よし、こいつは後で塩まくか。

「そそそういえば、小白さん! 先輩とスマッシュの練習をしたら?」

 俺は話を無理やり変えて、かつ小白さんに先輩の練習相手を押し付けた。

『うわぁ。か弱い女子にそんなことするなんて最低』

 優花ちゃんが引いていたのが気になるけど、無視することにした。

「いやいやいや! 弐星くんが練習相手になったほうがいいに決まってるって! だって練習試合のとき、スマッシュ失敗して負けたんだし」

 小白さんも俺にどうにか押し付けようと必死だった。

「う、うるせえ! 俺はさっきまで先輩と練習してたから疲れたんだよ! もう俺の身体は限界なんだから許してくれよ」

 そんなとき後ろから俺の肩に、先輩のラケットを持っていないほうの手がポンと乗ってきた。

 振り向くと先輩がニコニコ笑っていた。

「スポーツはね、限界がきたときが踏ん張りどころなんだよ」

 俺は笑い返すと、即行で逃げようとした。しかし、先輩の手にものすごい力が入って逃げられなかった。

「俺の脇腹を見てくださいよ! ちょっと血が出てるじゃないですか! 服も破けてるし今日は安静にしたほうがいいと思うんです。だからもう帰りますね!」

「それ、かすり傷じゃん。それに服破けてるって、あんた頻繁に裸になってるんだし、むしろやる気が出たんじゃないの」

「確かに」

「『納得しないで!』」

 小白さんと優花ちゃんがツッコんだ。

 そのとき、小白さんは優花ちゃんのほうを一瞬向いたように見えた。

 もしかして優花ちゃんが見えるのか……?

 ……頭のおかしい幽霊は小白さんの異変に気づいていないのか、小白さんのズボンの足を通す穴から下着を見ようと真剣に覗いていた。

 やかましいから一旦塩をまいてもいいな。

「小白さん。ちょっと外で話したいことがあるんだけど、いいかな」

 先輩が、俺がサボる口実だと勘違いしているか怖くて少し緊張してしまった。

「えぇ! ……う、うんいいよ」

 なぜか小白さんも少し顔を赤くして緊張していた。

「頑張ってね!」

 岩破先輩は親指を立てた。

 ……頑張ってねって、どういうことだ?

 なんとなく変態幽霊のほうを見ると、下着を覗くのをやめていて、キャーキャー言っていた。

 なんでお前らそんなに興奮してるんだ?

 めんどくさいから考えるのをやめ、先導するために小白さんの手を握って体育館の外に出た。

 ある程度体育館の出入り口から離れたあたりで、彼女の手を離した。

 小白さんはしどろもどろになりながらしゃべった。

「そそそそれで話って……?」

 俺は小白さんのほうを向いて両肩を掴んだ。

「告白したいことがあるんだ!」

「う、うん!」

 顔がどんどん赤くなっていく小白さんは、覚悟を決めたような表情をした。

 まさか顔が赤くなるくらい怒っているのか! どどどどうしよう。すごく言いづらい雰囲気になってしまった。だけど、この程度で怖気づいてたらよくないよな。「やっぱりなんでもないや」とかほざいてしまったら、迅城に何を言われるかたまったもんじゃない。でもやっぱり逃げるか? でも肩を掴んじゃったし、俺が今から告白したいことをしゃべるということを小白さんに伝えてしまったから、逃げようにも逃げられない。

「緊張しちゃってるから一旦深呼吸していいか?」

「べべべ別にいいよ! というか私もしたいかな!」

 小白さんまで緊張をほぐしたいのか? 緊張する要素は果たしてあっただろうか? 別に俺が今から小白さんに「愛してる」だとかそんなことを言うわけでもあるまいし。……いや、違う。俺を殺すために緊張をほぐすのか! なるほど、人を殺めるのは俺が初めてってわけか。だとすると、念のため逃げる準備でもしておかなくてはならないだろう。元凶のクソ幽霊をまず始末してから俺はグルじゃないことを証明するのもありだな。ならば、一応体育着のポケットに忍ばせておいた塩の出番ってわけか。

 俺と小白さんはゆっくりと呼吸をした。

 そして俺たちは深呼吸が終わると互いの目を見つめた。

「うちの幽霊が本当に申し訳ございませんでした!」

 俺は勢いよく土下座をしたのだった。

「え?」

『急に何!』

 何かおかしかったところでもあったところでもあっただろうか?

「いやその、俺の周りをウロチョロする幽霊がよく小白さんに、セクハラしたり下着を覗こうとしてたりしてるから謝りたくて……」

『ちょっと小白ちゃんにバラさないでよ!』

「いや、おめーも謝れや!」

 変態幽霊の頭を下げさせようと触れようとしたが、ここぞとばかりに幽霊の力を使ってきてすかされた。

 ポケットから塩を取り出そうとしたとき、幽霊は俺の股間を思い切り蹴りつけて妨害してきやがった。

 小白さんは遠い目で俺たちの様子を眺めていた。

「こ、小白さん? どうしたの?」

 彼女に近づき聞いてみると、彼女は少し震えていた。

「えっと……、告白したいっていうのは……」

「幽霊のやらかしたことの謝罪だな。だって小白さんが前よりもこの幽霊のことが見えるようになったんだろ?」

「この女の人って幽霊だったんだ。あまりに変なことしてたから私の幻覚かと思ってたんだけど」

「本人が幽霊って言ってるんだし間違いないだろ」

(じゃあ、私は愛の告白だと勘違いしてたってことに……)

 何か呟いていたがよく聞こえなかった。

『にぼっしーはそういう人だからしょうがないよ』

 優花ちゃんが小白さんの肩に手を置いて慰めていた。

「もうどうして、いつもいつも……」

『私の胸においで』

「お前、しれっと小白さんにスリスリしようとすんじゃねえ!」

 俺は塩で脅して変態幽霊を無理やり小白さんから離れさせた。

『小白ちゃん。にぼっしーはよく私を変態扱いけど、実はあっちのほうが変態なんだよね』

 優花ちゃんは小白さんの後ろに隠れて良からぬことを彼女に吹き込もうとしていた。

「弐星くんが変態なのはいまさらじゃないの。だってよく裸になるし、それに……あなたと弐星くんが一緒にお風呂に入るしで」

「ちょっと待って! もしかしてあの写真持ってんの!」

「うん。ほら」

 小白さんはどうやって持ち歩いていたかわからないが、胸元から俺と優花ちゃんが風呂場にいた写真を2()()取り出した。その写真は俺と優花ちゃんが分かれるようにきれいに破られていた。

「……なんで俺と変態幽霊の写真破ってるの?」

「べべべ別に、弐星くんのお風呂に入ってる写真が欲しいけれど、近くの幽霊が邪魔だなって思って破けば問題ないじゃんとか考えて破ったわけじゃないからね!」

 何か言い訳してるぽかったけど、まあ気のせいだろう。とにかく焦ってる小白さんはかわいいのだ。でも、もし風呂に入ってる俺の写真が欲しい云々が本当なのだとしたら……。

「もしかして小白さんって変態なの?」

「そそそそそんなわけないじゃん! 弐星くんじゃあるまいし……。そそそそういえば、優花……ちゃんだっけ! あなたは私に変なこと?をしてたらしいけど、私以外にも例えば……弐星くんとかにもその……変なことしてるの?」

『小白ちゃんの想像してるような変なことはしてないかな。……あっ、でもにぼっしーには、別の意味で変なことはしてるね』

「ど、どんな」

 小白さんは固唾を呑んだ。

 俺にしてる変なことって何だろうか?

『にぼっしーが私に隠れるようにFA〇ZAの試し読みとかを、今までで見たことないくらい変な顔しながら見てるのを、こっそり写真撮ってることとかかな』

「お前、ふざけんなよ! ……ちょっと待て。写真って何で撮ったんだ?」

『もちろんにぼっしーのスマホだよ』

「パスワードとかはどうやったんだよ!」

『スマホに憑依したんだ。スマホになっちゃったら保存されてるものを全部見れちゃうから、それでパスワードもわかったってわけ! 私って頭いいでしょ』

「俺にプライバシーがないってことかよ! ちくしょおおおおおぉぉぉぉぉ!!」

「ねえ。弐星くんの……エッチなものを見てたなら、どんなものをよく見てるとかもわかったりするの?」

『えっと、足がきれいなのと、耳たぶがやわらかそうなのかな』

「なんでお前はそこまで知ってるんだよおおおおおぉぉぉぉぉぉぉ!!!」

『私の覗きスキルをなめないでもらおうか』

「お前を本当に除霊してやる!」

(足ならなんとかなりそうだけど、耳たぶかぁ……)

 俺と優花ちゃんによる追いかけっこが繰り広げられている中、小白さんは何か呟いていたような気がするが、きっと気のせいだろう。

「優花ちゃん!」

 小白さんが幽霊に向けて叫んだ。

『どうしたの?』

 幽霊は彼女のもとへやって来た。

 小白さんは優花ちゃんの耳元で囁いた。

(あとでもっと詳しいことを聞かせてね)

『もちろん!』

 何か嫌な予感がしたがこれも気のせいだろうな。

 と、そのとき後ろからごつい手が俺の肩を掴んできた。

 この手はオーラのようなものを纏っていて、とても馴染みのあるものだった。いつもきぜつする前によく見て、きぜつする原因の9割がこの手の主だ。

 俺は後ろを振り向くと、笑顔の岩破先輩だった。

「あまりにも遅いから様子を見に来たんだけど、この状況は何? 告白的な雰囲気ではないよね」

「告白? 先輩は何を言っているんですか?」

「あ、違うのね。じゃあ部活に戻ろっか」

「…………俺はまだ死にたくないでええええぇぇぇぇぇすうぅぅ!!!」

 このあと、俺は部活をサボったと勘違いされ特別メニューをする羽目になったのは言うまでもない。

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