表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
バドミントンでわんこそばの掛け声をやったった……  作者: 三好ペペロンチーノ
第4章 迅城、ツンデレキャラにチャレンジしたった!

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

37/45

第25話

 翌日の放課後。

 いつもならこの時間は部活でもう死にかけているが、今日はうれしいことに部活がない。

 しかも今日は生活指導の先生が俺たちのクラスを見張っていて、まともに文化祭準備ができないからということでおじゃんになった。

 特にやることがないから帰ろうと思ったが、自分のキャラを変えるという約束を果たすという目的で、図書室へと足を運んだ。

 ここには学校案内のときに1度だけ来たことがあるが、正直記憶にない。

 つまり、実質初めて行くようなものだ。

 『初めて』ということにウキウキしながら図書室のドアを開けた。

 イメージ通り静かな空間だった。

 俺はいつも騒がしいということで、ここは静かになる特訓にふさわしいだろう。

『いやっほーい!』

 早速俺の近くで幽霊が騒いでいた。

(おい!うるせえぞ!静かにしろよ!)

『残念でしたー!私は幽霊だから普通の人には私の声は聞こえませーん!つまり私は合法的に騒いでいいってことなの!静かな場所で思い切り叫べるってサイコー!』

 クズ幽霊を無視して、おとなしそうな登場人物がいそうな小説をあさることにした。

 すると、後ろから急に声が掛けられた。

「何かお探しの本でもあるんですか?」

 女子の声がした。

 俺は、顔を見ずに会話するのは良くないだろうと思い、後ろを振り向いた。

「あぁ、そうなんで……。…………あれ?」

 姿が見えなかった。

 ……もしかして優花ちゃんのいたずらか?

 あいつ、塩を撒かれたいらしいな!

「ししし下です」

「へ?」

 俺は下を向くと、身長の低い女子生徒がいた。上履きの先のほうの色が緑色。緑色のカラーは1年生が履く決まりだ。つまりこの人は1年生か。

「私のこと、チビで陰キャだと思いましたね?」

「陰キャだとは思ってなかったが」

 まぁ言われていれば、全体的に髪が長めで暗い印象を与えているが。

 髪のことなんてどうでもいい。

 俺はこの女子の胸部に目が行ってしまった。

 でかい……。

『うわっ!にぼっしーってやーらーしー!』

 うるせえよ!

 ……まぁ確かに、身長が低めで胸が大きい女性が好みではあるが。なんなら超ドストライク!正直今、鼻血を思い切り噴射したい!

 危ない。邪念が……。

 いったん落ち着こう。

 ドストライク女子はこほん、と咳払いをすると。

「それで、どんな本をお探しですか?」

 かわいい!!!……じゃなくて。

「えぇっと、小説ですかね?ジャンルはなんでもいいんですけど……、まぁ主な登場人物におとなしめの性格の人がいるのがいいです」

「……もしかして、キャラ設定について何か研究をされているとか?」

「そうですそうです」

「それならこのコーナーじゃなくて調べもののコーナーに行っては?」

「調べもののコーナー?」

「そこには図鑑とかの本が置いてある本で、その中に確かキャラ設定が書かれた本があった気がします」

「マジか!ありがとう!」

「どういたしまして。……それでですね!」

「……急に顔を近づけてきてどうしたんですか!」

 ちょ……!

 なんか顔が熱くなってきたんだけど!

 やべーよ!

 この人、つま先立ちしてまで俺の顔に近づいてきたからもっと興奮しちゃうんだけど!

『……やらし』

 冷たい目で見ないでください!

「キャラ設定に興味があるんですよね!」

「……ま、まぁそうですけど」

「ももももももしかして小説をネットとかで投稿してる人なんですか!」

「え?」

 確かにキャラ設定に興味があるってことは、小説とかを書いてる人と思われてもしょうがないか。

 俺の場合は迅城との約束で自分のキャラを変えるっていう目的だったが、それを素直に言ってもいいのだろうか?

 待て!

 もし、ここで「違います」とか言ってしまったらこの人との関係が終わってしまうのではないだろうか!

 それはよくない!

 この目の前にいる女子は超ドストライク!

 選択を間違えたら人生終了みたいなもんだ!

「か、書いてはいないですけど、ちょっとそういうのに興味が湧いたんで……」

 しどろもどろになっちゃったが、まぁ俺的には80点くらいだろ。

「そそそそそそうなんですか!周りにそういう人全然いなくてですね、ちょっと寂しかったんですよね。だから興味がある人に会えて嬉しいです!」

 ストライク女子は笑顔で言った。

 …………今日死んでもいいかも。

「あの……、あなた?君?……ちょっと名前を聞いてもいいですか?」

照湊(てれあつ)って言います。あのあなたは?」

「弐星です!……それで照湊さんは小説を書いてるんですか?」

「そうですそうです!最近はラブコメ書いてるんですよね!」

「へえ!どんな話なんですか!」

「主人公がイケメン男子に恋して、その男子が入ってるバドミントン部に入部しちゃう話です!」

「もしかしてですけど、そのイケメン男子って野球拳が好きですか?」

「なんでそうなるんですか!」

「なんとなくそうだったらいいなって……」

「野球拳してたらイケメンの格が下がっちゃいますよ!」

「じゃあその主人公はイケメン男子に足をなめさせたいとか考えてます?」

「んなわけないでしょうが!」

「……もしかしてその主人公って男ですか?」

「さっきの2つの質問で主人公が男って確定するんですか!もちろん主人公の性別は女です!」

「……俺、そんな世界に生まれたかったです」

 思わず涙が目から出てきた。

「急にどうしたんですか!」

「いや、最近つらい目に合ってたんで思わず……。照湊さんのセンスめちゃくちゃいいですね」

「……あぁ、えぇっと。ととととりあえずこれで涙を拭いてください!」

 照湊さんはポケットからハンカチを取り出して俺に渡してきた。

「ありがとうございます!一生大事にしますね!」

「いや、洗って返してくださいよ!」

 ハンカチを家宝にできると思ったんだけどな。残念。

 涙をハンカチで拭いた。

 照湊さんのハンカチに俺の涙が染み込んでいくって考えるだけで、興奮してきてしまう!

 ……ん?

 迅城は俺にキャラ変してほしいと言ってきた。

 これは女子からの視点で俺を見てきて、俺の性格が変態、もしくはカスだからそれを改めてほしいとかだったはず。

 女子は俺のことをヤバい奴だと認識しているということ。

 すなわち、このままいつも通りに過ごしていたら照湊さんにまでヤバい奴だと思われてしまう。

 それだけは避けなければならない。

 だからハンカチに涙が染み込む程度で興奮してはいけない。

 つまりはそういうことか。

 興奮するなら女子のパンツを見たとき、もしくはそれ以上のことでないとダメというわけか!

 俺は涙を拭き終えると、

「冗談です。洗って返しますよ。それより小説のネタが欲しいのでちょっといろいろ聞きたいんですが、いいですか?」

「もちろんいいですよ!」

 俺はハンカチをポケットにしまった。

 照湊さんに先導されて、図書室にある席に照湊さんと向かい合うように座った。

「俺、まだどんな話を書こうか決まってないんだけどな」

『そもそもさっきまで書こうとも思ってなかったしね』

 気が散るから黙っててほしい。

「へぇ。じゃあ何のジャンルがいいの?」

「そうだなぁ。俺は……」

 そのとき大陸が図書室に現れ、俺と照湊さんのいるほうへとやってきて、俺に向けて口を開いた。

「お前、どこで油売ってんだよ!今日は小白さんの盗撮を一緒にするって約束したじゃねえか!」

「弐星くん。盗撮するんですか?」

「し、しないから!というか大陸!俺、そんな約束した覚えはねえぞ!」

「おかしいな?弐星に約束したいことがあるなら念を飛ばしたほうがいいって東村が言ってたんだけどな」

「東村の言うことを信じるなよ!俺にそんな特殊能力は使えねえから!」

「じゃあ今からしようぜ!どうせヒマだろ?」

「絶対しねえわ!というか俺、今目の前にいる照湊さんに相談してる最中なんだが!」

「相談だと?なぜ俺にしない?俺とお前の仲だろ?」

「盗撮の約束を念を使ってしてくる奴に相談するわけねえだろ!盗撮するなら1人でしてこいや!」

「いや、仲間たちとするから1人じゃないぞ」

「うるせえ!とっとと行った行った!」

「気が向いたら来いよな!」

「絶対に行かないからな」

 大陸は図書室から出て行った。

「あの人は?」

「あいつはちょっと……冗談が好きな奴なんですよ」

「そうなんですか。で話を戻しますけど、何のジャンルが好きなんです?」

「俺h……」

 俺がしゃべっている途中で、今度は大島が図書室にやってきて俺たちのほうへ来て言った。

「よお弐星!この辺にクレープ屋ができたんだけど1人じゃ心細いからさ。一緒に食べに行かないか?」

「帰れ」

「せめてYESかNOで答えてくれよ!」

「土に還れ」

「扱いひどくねえか?」

「クレープくらい1人で食えよ。そんなんだから彼女できねえんだよ」

「お前だっていな……。……あのそこの人は?」

「照湊さんだ」

「……どうも」

「裏切者おおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」

 大島は司書のおばさんに大声を出すなと注意されながら図書室を走って出て行った。

「あ、あの……」

「どうしたんですか?」

「あの人、何か勘違いをしたんじゃ……」

「別に気にしなくていいです」

「そそそそうなんですか」

「それで遮られたので改めて言いますけど、俺の好きなジャn……」

 俺が照湊さんに好きなジャンルについて言おうとしたとき、今度は岩破先輩が図書室に入ってきて、俺たちのほうへと来た。

「ここにいたんだ弐星!今日ヒマだからさ、その辺の公園でバドミントンでもしないか?」

「絶対に嫌です」

「何か用事?」

「今照湊さんと話してるんですけど」

「……え。…………あぁ、すまない!この話はなかったことで頼む!弐星頑張れよ」

 先輩は去っていった。

「ふぅ。助かった」

「あの人は?」

「部活の先輩です」

「あの人も何か勘違いをしたんじゃ……」

 確かに「がんばれよ」と言われたが、俺は一体何を頑張るのだろうか。

「話が逸れましたが、えぇっと、そうだ!俺の好きなジャンルだ。俺の好きなジャンルは……」

「あの、また誰か来るんじゃないですか?」

「そんなことあるはずないですy……」

 照湊さんの予想通り、今度は迅城がやってきた。

「あ、弐星!ここにいたんだ。下駄箱見たらまだ学校にいるって知ってさ、探してたんだよね。今日一緒に帰らない?」

「ラ〇ンとかで聞いてくれればよかったのに」

「あっ」

「気づいてなかったのかよ」

「あの弐星さん。その人は……」

「こいつは迅城です。幼馴染なんですよ」

「弐星。その人は誰?」

「この人は照湊さんで、今日初めて会った」

「ねえ弐星。なんで私とその人との態度違うわけ?しぃちゃんとも違うみたいだし」

「そりゃあ初めて会ったばかりだし……」

「べ、別にあんたのこと、何とも思ってないんだからね!」

「おぉ!ツンデレっぽくなってるじゃん!」

「あんたは何も変わらないけどね」

「俺だってな色々苦労してんだぞ!」

「昨日の文化祭準部のときとか弐星っぽかったし」

「ぶっ飛ばすぞ」

「……弐星。ちょっと来て」

「え?別にいいけど……。照湊さんちょっと待っててくださいね?」

「……え、あぁ別にいいですけど」

 俺は迅城に連れられて図書室の外に出た。

「で、あの人とはどういう関係なわけ?」

「何って、さっき知り合ったばっかだから何とも言えないんだけど」

「どう考えてもちょっと親しげだったじゃん!なんかあるって!」

「なんもねえよ」

「じゃあさっきまで何話してたの?」

「何って……。小説のネタ探しだけど」

「弐星って小説書いてたの?」

「違う。キャラ変の参考になる小説探してたら声掛けられて、気がついたら小説書くのに興味あるって答えただけだ」

「あの人がかわいかったからそんな嘘ついたんでしょ」

「そうで……、違います」

「あんた。今『そうです』って言おうとしてたでしょ」

「やだなあ!幼馴染に嘘を言うわけないじゃないですか!」

「じゃあなんで、土下座してるの?」

「ほ、保険で」

「……」


 俺は図書室へ戻り、さっきの席に座った。

「あ、おかえりなさ……。……あああの、顔とか傷だらけなんですけど大丈夫ですか?」

「あぁ。大丈夫です。安心してください。顔をめちゃくちゃ殴られただけですから」

「安心できる要素がありませんけど!」

「部活と比べたらこの程度なんともありませんから」

「……さっきの幼馴染?の人がやったんですか?」

「まぁ……ね」

「……へぇそうなんですか」

 なんか照湊さんから闇のオーラみたいなのを放ってるんですが。

『にぼっしー。本物のヤンデレを見つけちゃったんだね』

 こいつは何を言ってるんだ?

 照湊がヤンデレなわけないだろ!

 ㇵッハッハッ!

 ……そうだよな?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ