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バドミントンでわんこそばの掛け声をやったった……  作者: 三好ペペロンチーノ
番外編 弐星とどんちゃん騒ぎをしたりしなかったり

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弐星と人捜し

 俺は電車から降りた。駅に着くと海の香りが漂っていた。俺は海が好きだ。泳ぐのが好きだし、砂遊びも好きで、年々全体の面積が減っていく水着も好きで…………、ってこれは今どうでもいい。

 山の近くにある自宅から海が近くにある町に1時間掛けてやってきた。ここまで来た理由はもちろん人捜し。優花ちゃんの父親を捜すのだ。この辺りに優花ちゃんが『スンデイタ』とか。ならば、今もこの辺りにいてもおかしくはない。ただ、あの廃墟は50年くらい前からハイキョだったらしいから今もここにいるかどうかはわからないが。

 優花ちゃんを殺した犯人の父親。いつ聞いても物騒だ。

 話によれば優花ちゃんの父親は警察に捕まっていないらしい。殺人罪は死刑か無期または5年以上の懲役なのに、毎年あの廃墟に父親が花を持ってきているとか。一体これはどういうことだろうか?優花ちゃんは金の力で結界に閉じ込められてたって言ってたし、殺人罪も金の力で何とかしたのか?犯罪って金の力で何とかなるものなのか?謎が多すぎる。そもそも優花ちゃんが幽霊ってのも結構謎だけどな。

 『夏だ!海だ!水着だ!』

 「お前はもうちょっと悲愴感とかないのかよ!」

 『にぼっしー。海を見てもテンション低いのどうかと思うよ!』

 「お前、ここら辺に住んでたとか言ってたけど、もしかしていつもテンションが高かったのかよ」

 『もちのろんだよ!』

 「はぁ~……」

 『さて!早速海へレッツゴー!』

 「お前の父親を捜すぞ!」

 『……ケチ!』

 「お前のためにここまで来たんだぞ!」

 『そうだけどさぁ』

 「まずは手掛かりが必要だろ」

 『それじゃあ海だね!』

 「海に手掛かりがあるのか?」

 『私は海が好きなんだよ?だから何か手掛かりがあるのかもしれないし!』

 「優花ちゃん。海に行きたいだけなんじゃないのか?」

 『バレちゃった』

 「おい」

 『ごめんて!でも、行きたかったっていうのもあるけど、本当に手掛かりがあるはずだよ』

 「手掛かり?」

 『海の近くに「スンデイタ」場所があるからね』

 俺たちは海へ向かった。

 浜辺に着くと、

 『やっぱり海は最高だな~!』

 「おい!泳ごうとするな!……それで、『スンデイタ』場所とやらはどこにあるんだ?」

 『確かここら辺から見える場所に…………、あった!あの白い建物だよ!』

 白い建物。どこか悲しさがあるというか、寂しさがあるというかそんな雰囲気のある建物。

 「あそこにまだ『スンデイル』のか?」

 『わからないけど、とりあえず行ってみようよ!』

 俺と優花ちゃんは白い建物へと向かった。

 歩いて、歩いて、歩いた。……まぁ、優花ちゃんは歩いてるというか浮いてると表現したほうがいいか。

 「…………おい。あれって」

 『……』

 白い建物は解体工事の準備がされていた。

 俺は準備を進めているおっちゃんに声を掛けた。

 「ちょっと聞きたいことがあるんですけど」

 「なんだ坊主?俺のサインでも欲しいのか?……いやぁ、俺もついに人気者になったみたいだな!」

 「いえ。あなたのことは知らないんですけど」

 「えっ!解体工事のエースと言われたこの俺を知らないのか!」

 「はい」

 「ガーン!」

 おっちゃんの近くにいたお兄さんが口を開いた。

 「先輩のことを知ってる人なんて全然いませんよ。俺もこの仕事を始めるまで知りませんでしたし」

 「そういうことを言うなよ!傷つくだろうが!」

 「先輩は自己中なだけですよ!」

 「俺を悪く言っても自己中という言葉を悪く言うやつは許さん!」

 「ちょっとカッコよく言わないでください!…………それより君。聞きたいことがあるって言ってたよね?」

 お兄さんは話を切り替えて俺に質問してきた。

 「はい。えぇっと、この建物っていつくらいから人が住まなくなったんですか?」

 「住まなくなった?……いやぁ、ここはもともと廃墟だったんだけどね」

 そのとき、おっちゃんが言った。

 「ここは、もとは家じゃないぞ」

 「えっ」

 「ここは別荘だった建物だ。少なくとも10年くらい前からは確実に使われなくなって、最近やっと解体工事の依頼があったんだ」

 「依頼した人って誰か教えてくれますか!」

 「……ちょっとそれはなできないし、俺は上司に依頼主が誰か教えられない」

 「あの!まだ工事はしないんですよね?」

 「……まぁ。もう少しで始めるつもりだが」

 「知り合いに頼まれてこの建物まで来たんですけど、ちょっとだけ中を見てもいいですか?」

 「……それはちょっと」

 お兄さんが答えた。

 「別に構わないぞ」

 「えっ!この人を中に入れてもいいんですか!」

 お兄さんは驚いた。

 「別にいいだろ。何か特別な事情があるみたいだし。ただし、条件がある」

 「何ですか?」

 「俺のサインをもらえ!」

 「えっ……」

 「別にもらわなくていいからね!」

 俺と優花ちゃんは別荘へと入った。

 『……』

 優花ちゃんは白い建物に来てからずっと黙っていた。

 「……」

 いつもうるさい奴が黙っているのは居心地が悪いというかなんというか、モヤモヤ?の表現が一番近いのかな。まあそれでいいや。モヤモヤする。

 『…………懐かしいな。この落書き。私が小さいときに壁に車を描いたり海を描いたり、……お父さんを描いたりしたな』

 「……」

 俺は黙ってることしかできなかった。

 …………この建物の中はなぜか落ち着き、落ち着かない。

 俺は懐かしんでいる優花ちゃんについていっていると、床が崩れて、その先の穴で転んだ。

 『これも懐かしいな。お父さんを驚かせようとして、落とし穴を作ったんだよな』

 「それは俺が落とし穴にはまる前に言ってほしかったよ!」

 『…………ねえ、にぼっしー。今日はありがとう。もういいよ。たぶん私が死んだのは事故か何かだよ。お父さんが私を刺すわけがない。楽かった思い出を思い出せたんだよ。お父さんは私を刺すような人じゃない』

 「じゃあお前はどうして死んだんだよ」

 『それはわからない。でももう手掛かりはないじゃん!』

 「なあ。ここに優花ちゃんがいたとき、お前の父親がよくいた部屋ってどこだ?」

 『2階』

 俺たちは2階へとのぼった。

 2階の部屋は1つだけのようだ。

 俺はドアを開けると、寂しさが感じれる空間だった。

 俺はドアの付近に落ちていた1冊のノートを見つけた。題名はなかった。中をペラペラめくったが、何も書かれていなかった。俺はノートを放り投げようとしたら優花ちゃんが止めた。

 『そのノート。一応持っといてくれない?』

 「別にいいけど」

 ノート以外には特に気になるものは何もなかった。

 その後、俺たちは白い建物に背を向けて駅へと向かった。

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