弐星とテスト
定期考査。つまりはテスト。テスト勉強のために部活は、定期考査が始まる1週間前から休みになる。つまりそれは天国を意味する。だからこの1週間はゲームをしたりマンガを読んだりと忙しかったため、まったく勉強をしていない。ガチでどうしよう……。テストといっても、選択問題がたくさんあるから運ゲーで乗り越えられる。ただし数学Aを除いては。数学Ⅰは中学の応用みたいなノリでなんとかなるものの数学Aは完全に新しい知識を使う。数学Aは集合が今回のテスト範囲。何を言っているか理解不能。授業中に配られたプリントを見ながら問題を解けばまだ何とかなるかもしれない。
つまり、数学Aはカンニングするしかないのだ!失敗すればすべての教科のテストが0点になるとかだが、カンニングをしないと数学Aが赤点確定。やるしかない!
同じような考えの東村、迅城、大島と協力してカンニングをすることになった。
数学Aのテストがある日の朝、俺たちは輪になって作戦会議を始めた。
「おい東村!どうやってカンニングすればいいんだ?」
「まずはカンニングペーパーの作成だ」
「それはどうやって作るんだ?」
「この縦27cm×横35cmの大きさプリントをできるかぎり小さくすると、縦7cm×横7cmの正方形の大きさになる。まずはこれを作るんだ」
「「「OK!」」」
というわけで俺たちはプリントの最小化を行った。
俺たちは最小化したプリント(これから先、このプリントをメモと呼ぶことにする。)を作り終え、東村は口を開いた。
「問題はメモをどうやって教師に見つからないようにするかだ」
大陸が手を挙げ、発言した。
「ブレザーの内ポケットに隠すのはどうだ?」
「確かにいい案ではあるが、お前ブレザー持ってきた?」
「…………最近暑くて着てないな」
「「意味ないじゃん!」」
俺と迅城はハモった。
今度は迅城が発言した。
「胸の隙間に挟むのはどうかな?」
「まず男の俺たちは胸は大きくないし、お前、見た感じBカップくら…………ぎゃあああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
俺は迅城にツッコもうとしたら、目つぶしされた。
「失礼なことを言わないで!」
「じゃあ自虐ネタを言わないでくれよ!」
「他に案は?」
俺が手を挙げた。
「ブレザーの案はダメだったじゃん」
「そうだな」
「ブレザーではなくYシャツの裏にメモを張り付けるのはどうだ?」
「「「それだ!」」」
3人ともハモった。
東村が今度は手をあげた。
「しかし、4人でこのやり方をするのはちょっとリスクがある」
俺たちは『確かに……』と頷いた。
東村は続けて言った。
「だからこの中で1人くらいは別のやり方をするべきだ。そのやり方を提案する。そしてそのやり方で唯一できるやつは、……弐星だ」
「俺?」
思わず聞いてしまった。
東村の提案を聞くと、俺たちはテストに向けて準備を始めた。
数学Aのテストの5分前。試験監督の先生がやってきた。
「よし。それじゃあテストを配る。カンニングをしたら失格だからな。くれぐれもしないよ……う…………に……、って君のそれはどういうことだ!」
先生が指を差したのはなぜか俺だった。なんか変なことに巻き込まれてしまったようだ。やれやれだ。
「先生。なぜ俺に指をさすんですか?」
「わかってないのか!君がパンツ一丁だからだ!」
「どこが悪いって言うんですか?」
「その姿が悪いんだよ!なぜテスト中にパンツ一丁になるんだよ!」
「なぜって、そりゃあこの数学Aを本気でやるっていう意思表示ですよ。服にはカンニングペーパーを仕込めます。なので服を脱げば体で証明できると思いまして」
「だからってパンツ一丁になるな!」
「すいませんでした!うっかりしてました!パンツにもカンニングペーパーを仕込めちゃうますね!今からパンツも脱ぎます!」
「そういうことじゃない!脱ぐな!……もういい。なんかここのクラスの生徒も何も指摘していないし。……テスト配るぞ」
テストの問題用紙と解答用紙が配られた。
俺にしかできないカンニングのやり方。それはパンツ一丁になることだ。あえてカンニングペーパーを全然仕込めないようにすることで、カンニングの疑いの標的になりづらくなるのだ。さっき、先生にパンツの中にカンニングペーパーが疑われるからとか言ってパンツを脱ぐ動作をしたが、実際本当にパンツの中にカンニングペーパーを仕込んでいた。これはあえてやらないと言いながら『ビックリ』をすることで疑われづらくなるという仕組みだ。天才だろう?ちなみにだが、パンツ一丁になる際クラスの連中に冷ややかな目で見られていたけれど、気のせいだろうな。
……にしても俺、迅城、東村、大島以外のクラスメイトは自信があるような顔をしてやがる。そんなに自信があるのか?
チャイムがなった。テストの始まりの合図だ。
その瞬間にこのクラスメイト共は一斉に手を挙げた。
「どうした?」
先生がそのうち近い生徒のそばに行ってそう言った。
その生徒は俺に指を差して言った。
「弐星はパンツの中にカンニングペーパーを隠しています!」
くそったれえええええええええぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!
俺に先生の視線がいった瞬間、クラスメイト全員はカンニングをし出した。こいつら、やりやがったな!
メモはセロハンテープでパンツの裏に貼ってある。こうすることでパンツから落ちないようにしている。
俺はセロハンテープを少しだけはがした。
「そんなに怪しいなら脱いでやるよ!」
「えっ!」
先生は驚いた。先生は俺が脱ぐのを止めようとしたがもう遅い!俺は即行で脱いで大島にパンツを投げつけた。大島は突然のことで驚いてあたふたして服の裏に仕込んでいたメモが落ちた。
「あっ。大島の服の裏からカンニングペーパーが」
俺は棒読みでそう言った。
……へっ!こいつはセロハンテープでちゃんと貼っていなかったのをちゃんと確認してたんだよ!
大島はテスト失格となった。
カンニングはバトルに等しい。相手のカンニングをバラすのも戦略の1つ。
ちなみに俺のメモは大島のほうにパンツが行ったときちょうど先生の死角で落ちたから、俺のメモも大島のカンニングペーパーとされた。
これでなんとかカンニングの疑いはされなくなったが、パンツとメモを失ってしまったのがとても痛いな。
つまり、俺の武器はもうこれまでのうろ覚えの知識と地頭しかない!つまりほぼ詰み。
30分が経過した。
……何1つ理解できなかった。AだのBだの使いやがって!もっとわかりやすいものを使えよ!1+1=2くらいの簡単な問題にしてくれ!この問題はメモがあっても1割くらいしか点数とれないぞ!シャレにならない。
そのとき、数学Aを担当している竹土先生が現れた。
「何か質問あるか?」
俺たちは一斉に手を挙げた。竹土は近くにいた生徒に声を掛けた。
「どうした?」
「何もわかりません!」
「次」
「私もわかりません」
「次」
「俺もわかりません」
「……何もわからないって言おうとしたやつ、手を挙げろ」
このクラスの生徒は全員ビシッと手を挙げた。
「……はぁ。わかった。じゃあ俺が今から黒板に3問の問題を書くからその問題の番号と答えを解答用紙の裏に書け。もし1問でも正解したら赤点じゃなくなるように点数を上げてやる。ちなみに今から書く問題は授業でやったやつだから答えられて当然だからな」
初めて竹土先生の好感度が上がった気がする。さて1問目は
『第1問 竹土の平日のスケジュールを答えろ』
知るか!こんなの授業でやってたか?
『第2問 ポケット〇ンスターオメガルビー・アルファサファイアのトリプルバトルにおいてレベル20のカ〇エラーとレベル21のカポ〇ラーの用途の違いを答えろ』
むずすぎだろ!これは絶対に授業でやってねえし!レベル20と21の違い何て知るかよ!
『第3問 茶葉を使わないウーロン茶の作り方を答えろ』
こんなの授業でやってないうえに存在しないだろ、そんなウーロン茶!……いや待て。ウーロン茶?難多羅高校との練習試合の前にやった練習後でウーロン茶がどうのって……。そうだ!ウォッカ9割とウィスキー1割で混ぜて作るんだっけ!
俺は嬉々として書いた。
ちなみに、俺はテスト終了後、教師どもに連行されて生活指導をされた。教師どもはパンイチになるなだの、テスト中に全裸になるなだの言われていたらしいが、必殺技『気づかれずに寝る』を発動してそんなことは聞き流したのだった。




