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バドミントンでわんこそばの掛け声をやったった……  作者: 三好ペペロンチーノ
第3章 小白、合宿で落ちたった!

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第18話

 合宿3日目。昨日の夜は大陸の女装姿の撮影会をした。大陸の女装はあまりに似合ってなさすぎて、何度かトイレに駆け込まなければならないほど吐き気のする気持ち悪さで、正直眠れなかった。やっと眠れたと思っていたそんなとき、東村が布団を引っぺがして言った。

 「おい弐星起きろ」

 俺は布団を奪い取り目をつぶって言った。

 「せっかく寝てたのに……。今何時だ?」

 「3時15分」

 「早すぎるって。まだ寝ててもいいじゃねえかよ……。もうちょっと寝させて。おやすみ」

 「起きろ。起きないと耳元で爆音の昨日の動画を再生するぞ」

 「やれるもんならやってみろ。残念だったな、俺はあの動画の耐性がついたんだよ」

 「それならしょうがない。ちょっと待ってろ」

 東村はそう言うと、部屋から出て行った。まさか俺に嫌がらせができなくて泣きに外に出て行ったのか?初めて東村に勝てたというのか!今日は夏だけど雪でも降るんじゃないか?

 東村が戻ってきた。

 昨日はまだ甘いほうだったと思わざる得なくなった。東村は悍ましい物体を俺の顔の上に置きやがった。悍ましい物体とはゴキブリキューブのことだ。それは森見登〇彦の『太〇の塔』に登場する。戸棚の奥などに時折見られるというトウフ大の焦げ茶色の塊。『麻薬的な輝き』を持ち、じっと眺めていると表面が常にむくむくとざわついているのがわかる。つまり、ゴキブリキューブというのはゴキブリの集合体のことだ。

 「うわあああああぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 「目が覚めた?」

 「そりゃあ覚めるわ!最悪すぎるって!」

 そんな物体を俺の顔に置かれた俺の気持ちを憎き悪友は理解しているのだろうか?あいつなら理解したうえでこんな最悪な行為を行っているのだろう。どうにかこいつを、世界で最も深いというマリアナ海溝に沈めてやりたい!

 「東村」

 「何?」

 「なんで俺をこんな時間に起こしたんだ?」

 「気分」

 「お前の気分で顔にゴキブリキューブを乗っけられたってのかよ!お前、本当にやってることがゴミだよな」

 「照れるじゃないか。そんなに褒めるなって」

 「褒めてねえし!しかもそのセリフを真顔で言ってると違和感がある気がするのだが!」

 「じゃあこんな顔なら違和感はないだろ」

 「嫌いな食べ物を食べたときの顔は絶対に違う!」

 「弐星。人が頑張ってるってのに難癖つけるのはどうかと思うぞ」

 「お前、嫌がらせ以外で頑張ったことあるか?」

 「ある」

 「嘘をつけ!……お前ともうしゃべりたくない。トイレ行ってくる」

 トイレに行けば東村の顔を見なくてすむ。そこで5時半からの練習まで耐久すれば東村の嫌がらせをされずに済む。なんてすばらしい作戦なんだ!

 「それよりこれをなんとかしろ」

 大陸が俺の肩を叩いてそう言った。

 そういえば、この部屋は昆虫王国と化してましたね。

 

 ブンブン飛び回るゴキブリの群れの処理で練習に大幅に遅刻して、今日は合宿バージョンの特別メニューになって俺と大陸は夕食までずっと真っ白な状態になっていてまた記憶が曖昧だ。唯一覚えてるのは小白さんの水を飲んでる姿を見ているとジョニーが暴れだそうとしたことくらいだ。ちなみに東村は処理を途中で放棄して練習に参加したため、あいつだけ『大地獄』になっていない。あいつが原因で俺たちが大変な目にあっているってのに、それはないだろ!

 俺と大陸は夕食後、復活した。なぜなら肝試しだからだ。俺はお化けに会ってみたい。よく考えてみてくれ。もしお化けとお話ができたら絶対楽しいだろ!涼宮ハ〇ヒの気持ちがすごくわかる。大陸は俺とは違う理由で肝試しが楽しみなのだろう。大体予想できる。どうせ小白さんに『きゃっ!』とか言われて抱きつかれたいとかだろうな。

 肝試しで気になることがある。それは東村が夕食を早くに済ませて、どこに行くか誰にも告げずしばらくどこかに行っていたことだな。何か嫌な予感がするのは俺だけか?

 俺たちは夕食を終えると岩破先輩は俺たちに向けて言った。

 「ご飯も食べたし、肝試ししよう!」

 「「「いぇーい!!!」」」

 「なあ俺、肝試しとか面倒だから部屋でゲームするわ。じゃ」

 相変わらず竹土先生は自由すぎる。

 「そういえば東村は?」

 「先輩もどこに行ったか知らないんですか?」

 「うん。これじゃあ、肝試しは始められないな……。どうしよう」

 「あいつガチでどこに行ったんだよ……」

 「ごめんごめん。遅くなった」

 「お前どこに行ってたんだよ!」

 「あぁ……。ちょっとトイレ行ってた」

 東村はそう言った。……トイレに行っただけでなんで服が少しボロボロになってるんだ?だが、それを指摘するとなんか嫌な予感がするからこのことは無視するか。

 俺たちは旅館から少し歩いた所にある、50年くらい前まで使われていたという別荘の廃墟の入り口の前に来ていた。本当にお化けが出てもおかしくないくらいオンボロだった。しかも夜で暗いからもっと怖い雰囲気が漂っていて、お化け屋敷が苦手な人にはちょっと厳しいのかもしれない。大陸の足ががくがくしているくらいには怖い。ちなみに俺も……ちょとだけ、本当にちょっとだけだけど怖い気がしなくもない。俺の足ががくがくしているのは気のせいだろう。

 「それじゃあ肝試しする順番とペアを決めるからくじ引きするか!」

 岩破先輩は肝試しを楽しみにしていたのか笑顔で俺たちに向けて言った。先輩って、ラケットを持ってなくても頼もしいな。

 くじ引きのルール。車の席決めで使った割りばしを使う。赤色の印2つ、青色の印2つ、無印1つの割りばし、合計5本が用意されていて、これらを使ってくじ引きをして、引いた割りばしの印が同じ人がペアになって肝試しをするということだ。そして、赤色のペアが1番目、無印が2番目、青色のペアが3番目という順で肝試しを行うとか。

 「みんなで『せーの』で引くのはどうですか?」

 東村は岩破先輩に提案してきた。

 「それいいね。机の上に割りばしの入った容器を置くからそれを『せーの』でやるか!」

 というわけで俺たちは割りばしを1本ずつ掴んだ。

 ペアになっちゃいけないのは東村と小白さんだ。東村とペアになったら、嫌がらせ祭りで俺の精神が崩壊すること間違いなし。小白さんとペアになったら、『小白ファンクラブ』に()()で表現できないほど大変な目に合ってしまうだろう。大陸がペアだと小白さんとペアになれなかったからとかで、俺に八つ当たりとかするんだろうな。無印だと俺が1人だから、東村はここぞとばかりに俺を嫌がらせしてくるだろう。つまり1番安全なのは、岩破先輩とペアになるということだ。岩破先輩と一緒なら頼りになるから東村の嫌がらせはあんまり通用しない気がする。

 「「「「「せーの」」」」」

 来い!岩破先輩と同じ割りばし!

 俺が引いたのは青色の割りばしだった。無印じゃないから岩破先輩とペアになれる可能性がある!

 先輩は口を開いた。

 「あたしは赤色だったよ!誰が同じ色?」

 「……俺です」

 赤色の割りばしを持っていたのは大陸だった。

 「ちなみに俺は無印な」

 そう言ったのは東村だった。よっしゃあああああぁぁぁぁぁぁぁ!東村とペアじゃない!…………てことは、

 「もしかして、小白さんは青色?」

 「そうだよ。私は弐星くんと同じ色なの?」

 「うん」

 大陸。これに関しては事故でしかない。お願いだから睨まないでください。

 「それじゃあ肝試ししよう!大陸行くよ!」

 「……はい」

 懐中電灯を持った岩破先輩と、大陸は廃墟の中へと入っていった。

 東村が口を開いた。

 「しばらく暇だし、マジカルじゃないバナナしようぜ」

 「マジカルバナナじゃなくて?」

 「そうだ。マジカルバナナは前に発言したものに関係するものを発言していく娯楽だが、マジカルじゃないバナナは関係しないものを発言していくんだ」

 「つまりマジカルバナナの逆ってこと?」

 「そういうことだ」

 「何それ楽しそう!やろうやろう!」

 小白さんはノリノリだ。

 「時計周りでやろうぜ。俺が提案したから俺からいくぞ。マジカルバナナ、バナナと言ったら車」

 東村→小白さん→俺の順番みたいだ。

 「車と言ったら宇宙」

 俺の番か。

 「宇宙と言ったらバドミントン」

 「はい、弐星アウト」

 「は?なんでだよ!」

 「宇宙の中でバドミントンできるだろ」

 「だったら小白さんの『車と言ったら宇宙』だってアウトでしょ!車って宇宙のどこかにあるから関係あるしさ!」

 「だったら『アウト』って言わなければならないぞ。それはもう手遅れだ」

 「そのルールは初耳だよ!」

 「さて罰ゲームはどうするか?」

 「俺が負けた瞬間に罰ゲーム考えるとかふざけんなよ!」

 「弐星くんは男装してる風の女装をすればいいと思う!」

 「だからなんで小白さんはノリノリなんだよ!というか男装してる風の女装って何!」

 「女の子ってさ、男装もおしゃれの一種なんだけどそれをしようとしてる感じに見せる女装の男の子って良くない?」

 「俺、その良さが全然わかんないぞ!」

 「合宿終わったらその良さがわかるBLの本を貸すよ!」

 「俺は男装しようとしてる女装の男とかBLとか興味ないから!」

 ちょっと小白さんの顔が近い。俺がちょっと引いていると、

 「わあああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 大陸が悲鳴を上げてこっちに走ってきた。

 「大陸!大丈夫か!」

 「おい弐星!お宝を見つけたぞ!」

 俺に見せびらかしてきた()()とやらは小白さんのスクール水着姿の写真だった。

 「お前、それを手に入れたから猛スピードでここに帰ってきたのかよ!」

 「そうだよ!廃墟だったら暗くてよく見れないからな!」

 「なあ。なんであの廃墟にその写真があったんだ?」

 「不思議現象なんてこの世にいくらでもあるだろ」

 「そんなんで片づけていいのか?」

 まあだいたいこの謎は予想がつくけどな。どうせ東村が廃墟のどこかにその写真を置いたのだろう。夕食を済ませた後くらいに。

 「なんでこんなに足が速いの、大陸!その足は練習に使ってほしいんだけどな!」

 そう言って走ってきたのは岩破先輩だった。ラケットを持っていないからか息を切らしていた。しかも足が遅かった。

 「おっと、先輩と大陸が帰ってきたから俺も行くとするか」

 「東村待って、懐中電灯忘れてるよ!」

 「ありがとうございます。先輩」

 東村はずんずん廃墟に向かって進んでいった。

 「よかった……。これでしばらく平和だ」

 「それより弐星くん!男装してる風の女装をしようよ!」

 「その話、まだ続いてたのかよ!」

 「何の話をしてたのかすごく気になるんだけど!」

 「おい弐星!どんなプレイをしてたんだよ!ものによってはお前の『※放送禁止用語』を『※放送禁止用語』して『※放送禁止用語』するからな?」

 「お前の言ってることがひどすぎて内容が全然伝わってないからな!あとお前の言う『プレイ』とかなんとかはやってないからな!ただ遊びだよ、遊び」

 「遊びって……、弐星くん!私の思いを踏みにじって遊んでたってことなの!」

 「『※放送禁止用語』するのが確定したみたいだな、弐星!」

 「小白さんの思いって、俺を女装したいっていうことだろ!誤解するようなことを言わないでくれよ!」

 「弐星。女の子って結構繊細だからさ、そういうのは良くないよ」

 「先輩!無表情でそんなことを言わないでくださいよ!俺は別に悪くないのに、悪いって思えてきちゃいますよ!」

 「小白さんを泣かせてやんの。いーけないんだ、いけないんだ」

 「お前は黙れよ!…………って東村!早くね?帰ってくんの」

 「まあ。ここは今日の夕食の後、ここに仕掛けを作りに来たから…………じゃなくて……ええっとなんだろうな。俺は何をしてたんだろう。何してたと思う?弐星」

 「俺に聞くなよ!そして、嘘が思いつかないなら嘘をつくなよ!あとお前、やっぱり俺たちを驚かそうとしてたのかよ!」

 「弐星と小白。東村が帰ってきたから今度は君たちの番だよ!」

 岩破先輩は俺に懐中電灯を渡してきて言った。

 大陸は小声で俺に話し掛けてきた。

 (おい弐星。これをお前に渡しておく)

 (なんで救急セット一式を渡してくるんだ?)

 (小白さんがもしもケガしたらこれを使え。まあ小白さんにケガさせたら『※放送禁止用語』するけどな)

 「じゃあ行こう!弐星くん!」

 俺は小白さんに連れられて廃墟へと向かって歩き出した。

 肝試し。不安でしかねえ…………。

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