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バドミントンでわんこそばの掛け声をやったった……  作者: 三好ペペロンチーノ
第3章 小白、合宿で落ちたった!

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第17話

 合宿2日目。俺は東村と大陸に挟まれて寝ていた。大陸は寝相がものすごく悪くボディーブローの連発で全然眠れず、やっと寝れると思ったら、東村は俺の耳元で爆音でニコ〇コ動画で流行ったキーボードのクラッシャーのやつを再生して起こす手段に出やがった。うるさすぎて俺もしばらく叫んでしまった。あれは絶対に目覚まし時計の音にはふさわしくないだろう。俺は、もちろん昨日の『大地獄』の疲れが全然取れなかった。『大地獄』のせいで昨日の晩飯もろくに食べれなかったし最悪すぎる。

 朝飯を食うために食堂に行き、部活メンバーで『いただきます』した瞬間に俺と大陸はまるで餓えた猛獣が久しぶりのご馳走にありつくみたいにガツガツ食ったから小白さんの寝ぐせの形までは覚えていない。ちゃんと記憶があるのはバドミントンの練習からだ。

 バドミントン部が借りている体育館。

 「10分走ったし、基礎打ちもしたし、次はノックをするか!」

 岩破先輩は俺、東村、小白さん、大陸に向けて言った。ちなみに竹土先生はおつまみを食べながら朝っぱらから酒を飲んでゲームで遊んでいた。相変わらずやっていることが教師じゃないな。ここまでひどい教師はこの世にいるのだろうか。

 「「よっしゃあああああぁぁぁぁぁぁぁ!!!」」

 俺と大陸は叫んだ。だって昨日の練習が『大地獄』でそれに比べて楽すぎるのだもの。東村はなぜ()()()なのだろうか。もしかして、こいつ嫌がらせのとき以外はアホなのか?そしたらこのことがなぜ嬉しいのかわからないのも納得だ。

 小白さんは岩破先輩に質問した。

 「ノックって具体的に何するんですか?」

 「みんなの苦手なのを中心にやっていくよ。小白は攻めが全然なってないからプッシュとスマッシュ。弐星は相手を動かすためにヘアピン、ロブ、クリア、ドロップ。大陸は打ち合いが弱いからドライブとロブ、スマッシュ。東村は……特にないから先生を誘って戦ってて。そうそう弐星、小白、大陸。もしあたしが言った君たちの課題の技が全然上達してなかったら明日は合宿バージョンの特別メニューだから。それじゃやるよ!」

 俺と小白さんと大陸は絶対に明日を『大地獄』にしないために真面目に練習に取り組むことにした。

 「先生。俺と打ちましょうよ」「断る。今は天国を味わっているんだ。動きたくない。面倒。おつまみを食べながら酒飲んでゲームをする気分。東村は1人で2役やればいいじゃないか」「そんな芸、俺にできないですよ」「じゃあ今日のお前の練習はそれな」「むちゃくちゃ言わないでください」「俺にとっては俺の天国を邪魔するほうがむちゃくちゃだがな」「いいからやりましょうよ」「無理」

 東村はクソ顧問及び竹土先生をバドミントンに誘おうとしている最中だった。……竹土先生は本当に教師なのか?

 「みんな、よそ見してないで自分の練習に集中して!じゃあ小白から始めるか。あたしが小白を前後に動かすから、前はプッシュ、後ろはスマッシュを打ってね!」

 前後に動かされるというのは俺にとってシャトルランのようなものだ。それは小白さんも同じ気持ちらしい。『普通に』前後に動かされたらステップをうまくすればシャトルを簡単に打てるだろうが、『岩破先輩に』前後に動かされたら全力疾走と同じレベルで動かないとシャトルが取れない。つまり岩破先輩のうつ球はものすごく速い。スマッシュでなくともクリアだろうと、ロブだろうと。岩破先輩のバドミントンは鬼畜になる。ただそれは通常の練習の場合の話。合宿の場合はもっと鬼畜になる。通常の練習で死にかけるため、合宿の練習は死ぬということだ。ちなみに昨日の合宿バージョンの特別メニューとやらで俺と東村と大陸は10回は死んだと思う。この説明で何が言いたいのか。それは改めてバドミントン部に入ったのは間違いだったと気づかされたということだ。これで()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()がよくわかる。あくまで()()()()ではあるが。

 そんなことを考えているうちに小白さんの練習の第1ラウンドは終わった。小白さんはふらふらと自分の水筒とタオルの置いてある場所まで行くと倒れてしまった。

 「次は弐星の番だよ!弐星はそうだね……、あたしが弐星を前後に動かして弐星はヘアピン、ロブ、クリア、ドロップを駆使してあたしを動かすように打ってね!それじゃあいくよ!」

 さっきの小白さんの練習より鬼畜じゃないですか?

 先輩はロングサーブをしてきた。俺は先輩を後ろに下げて態勢を整えるべくクリアをした。そしたら先輩は光速のスマッシュを打ってきた。……これを打ち返せるわけがないだろ。一応ラケットを振ったもののもちろん速すぎて(速いの概念を超えているが)レシーブに失敗した。

 「このままだと弐星はまた合宿バージョンの特別メニューだね!」

 「絶対に嫌だ!」

 打ち返せないだと?何を馬鹿なことを考えていたんだ、俺は!何か策を考えなければ明日はない!何か、何かないのか!思い出せ!これまでの部活を振り返ったらきっと何かあるはずだ!…………。……!あった!俺には『これ』しかない!

 「必殺!パンツ一丁!!!!!」

 俺は叫んで服を脱ぎ、邪魔くさい服どもを大陸に投げた。大陸は反射的に俺の服を受け取ると、呆れた顔を俺に向けてきた。

 「お前、どんどんおかしくなっていくな……」

 コートの後ろで俺の練習を見ていた大陸(俺の練習より疲れてる小白さんのほうをよく見ていた)は何かほざいたようだがどうでもいい。これまでの経験でわかったこと。それは『覚醒』の方法だ。わかりやすい例だと岩破先輩。ラケットを持つと覚醒する。オーラのようなものを放ち、筋肉がめちゃくちゃついて、身長が30cmくらい伸びる。俺はそこまですごい覚醒はできない。俺はパンツ一丁だとやる気が出る。自分にできないことはないと思える自信が生み出される。まあパンイチになって恥じることがなくなったからな。とにかく俺は『覚醒』したといえるだろう。

 「先輩!やっちゃってください!」

 「わかった!」

 先輩は再びロングサーブをした。俺はリベンジするべくまたクリアした。その思いが伝わったのだろう。先輩はまた光速のスマッシュをしてきた。いくぜ俺はシャトルが来るであろう左にラケットを構えた。シャトルは構えた場所から右にやってきた。腹部にやってきた。俺は服を脱いでいる。身に着けているのはパンツのみ。つまり直接先輩が打ったシャトルが腹にあたるということ。

 「ぐはぁ……!」

 俺はもちろん気を失った。

 

 気が付いたときには旅館の俺たち男子グループの部屋で布団の上で寝ていたことがわかった。窓を見ると日は暮れていた。スマホで時間を確認すると6時10分。夕食の時間だ。俺は食堂に向かった。

 「ごめん弐星。練習、やりすぎちゃったみたいだね」

 岩破先輩に謝られた。

 「それは別にいいんですけど、誰が俺に服を着せたの?」

 今の俺の服装は女物の制服。

 「さあ、私にはよくわからないな」

 「そうだな。俺にはさっぱりだな」

 「小白さんと東村が俺に着せたのかよ!」

 「弐星。それは違うぞ。小白さんは、『はやちゃんから渡してきたこの制服を着させたらいいじゃん』って言ってきて、俺に着させるよう命令してきて、俺はその命令に従った。つまり小白は俺に着せさせるよう命令して俺は着せさせられたから、誰も弐星に服を着せていない」

 「言葉遊びはやめろ!結局お前らが犯人ってことじゃんか!俺さこの服着替えたいんだけど、俺のリュックに、俺の用意した服がなくなっててかわりに女物の服しかないのはどういうことだ?」

 「弐星くんがその制服を身に着けたらなんかにやけてたから、女装する趣味に目覚めたのかと思って私が用意した弐星くん用の服と交換しておいたんだ」

 「今すぐ俺の服を返せ!」

 「弐星。あんまり小白さんにひどいことするようならこっちには考えがあるからな?」

 「俺がひどいことをされているのだが!」

 「とにかく座ってご飯を食べな。弐星」

 先輩はそう言って俺を先輩の隣の席に勧めてきた。その席の前は小白さんが座っている。大陸のほうを見るとすごく睨んできた。しかし、俺はそんな心配をしている場合ではない。腹が減っていてどうしようもない。

 「おい。弐星の分の飯を持ってきたぞ」

 「ありがとう東村たまには気が利くな」

 東村が持ってきた夕食はみんなの食べているものとは違うような。俺の皿にはオムライスが盛られていた。みんなのはカレーライスなのに。

 「食堂のおばちゃんが元気になったからそのお祝い的な感じでとか言ってたな。卵の下はカレーライスなんだと」

 「やったぜ!いただきまーす!」

 俺は特別なオムライスを口に運んだ。卵とカレールゥと米はおいしい。だが、カレーの具がまるで…………。いや『まるで』じゃない。『これ』は確信して言える。

 「東村」

 「どうした?」

 「勝手にお前、追加したカレーの具があるだろ」

 「どうしてそう思うんだ?」

 「だって……」

 「だって?」

 「だって、納豆、しょうゆ、みそ、わさび、ジャム、デスソース、ドリアン、なめこが入ってるからそりゃあわかるわ!お前いつまでこの嫌がらせを続ける気かよ!」

 「いつまでもってそんなやってないと思うぞ?ファミレスのときと、あのときのお前が仮病を使って休もうとしたときと、今回だけだろ」

 「結構やってんじゃねえかよ!しかもファミレスのあれはお前が考えたことなのかよ!」

 「弐星も成長したな」

 「こんなことで成長したくないわ!」

 「ねえこのオムライス、そんなにおいしくないの?」

 小白さんが俺に話し掛けてきた。

 「まあカレーだから多少味とかでごまかしてくれてるから不味くはないな」

 「私もちょっとだけ食べてもいい?」

 「別にいいけど」

 小白さんはオムライスをスプーンですくった。

 「……いただきまーす。…………なんともいえない味だね」

 「だろ!」

 俺と小白さんは顔を見合わせると、

 「「プッ……!アハハハハハハハ!!!」」

 俺と小白さんは笑った。

 大陸が俺の肩を掴んできて小声で言ってきた。

 (なんで小白さんと仲良くなってんだよ!ぶち殺すぞ!)

 (なんか笑っちゃったんだからしゃあないだろ……)

 (何それ?マジでお前は俺たちにとって異端者だな。ここで処刑するしかなさそうだな)

 「いやあこのオムライスカレーおいしいな!」

 俺は本気でオムライスを平らげて食堂を離れることにした。

 「ごちそうさまでした。弐星、さっさと食べて俺から逃れようとはそうはいかないぞ!」

 (……大陸、取引しよう。ここ食べたくないか?)

 俺は小白さんがスプーンですくったところを指を差して言った。

 (弐星を処刑したいが、極上の味を堪能できるかもしれないからなあ……。しかたない交渉成立だ!)

 俺と大陸は握手した。

 「俺もお前のオムライスを味見しようっと」

 東村が俺に許可を取らずに勝手に俺のオムライスを食べた。食べた部分は小白さんがスプーンですくったところだった。

 「東村勝手に食うな!」

 「ごめんごめん。あっ、しまった。大陸との交渉これで失敗になっちゃったな。わざとなんだ。別に邪な気持ちがあったんじゃなくてただ弐星の邪魔がしたかっただけだ。悪気しかない」

 「そんな謝り方あってたまるか!」

 「じゃあ弐星、食べ終わったら覚悟しろよ?」

 「マジでやめてくれ!」

 「紐なしバンジージャンプとパラシュートなしスカイダイビング、どっちがいい?嫌いなほうを選ばせてやる」

 「好きなほうじゃなくて嫌いなほうかよ!というかその2択、表現の仕方を変えただけでどっちも飛び降りるってことじゃねえか!」

 「じゃあどっちもするでいいんだな」

 「なんで2回も飛び降りなきゃいけねえんだよ!」

 「なんだって?飛び降り以外に釘バットで千本ノックの刑もやってほしいだって?したかないなあ。合宿が終わったら仲間たちとやってやるから」

 「そんなこと一言も言ってねえぞ!」

 大陸とどうにか交渉しないと俺は処刑されてしまう。クソ!東村のせいだ!大陸は変態だから小白さんの食べたところを食べたいようだったからな。それと同等の何かを与えなければならない。そんなものあるわけ……あった。

 (大陸。俺のリュックの中に小白さんの用意した服があるよな?)

 (それがどうかしたのか?)

 (つまり小白さんのバックの中にもともと入っていたから小白さんのにおいがするわけだろ。しかも小白さんの指紋もついてる。これで俺が何を言いたいかわかるか?)

 (その服を俺が着ていいってことだろう?それくらいわかるさ。交渉成立だ!)

 俺は触っていいとかにおいを嗅いでいいとかそういうつもりだったのだが、着るという考えには至らなかった。だけどまあ着れば問題が解決するのならそれでいいか。

 俺は安心してオムライスを食べた。

 「ごちそうさまでした!ああ食った食った!大陸、自販機でジュース買わね?」

 「いいなそれ!行こうぜ!」

 「弐星。ジュース買うのより先にその服を着替えろ!」

 そういえば、俺女装してました。

 合宿2日目で学んだことは、女装は意外と心の平穏を保てるということだ。

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