第1話
ライトノベルにハマっていて、高校は青春を謳歌できる場所だと思ってたから高校生に憧れていた。しかし、間違っていたと思わされた。それをいくつか紹介しよう。
1つ目は大海高校という県立高校に行こうと思ってしまったことだ。この高校は山の中に建っている。そりゃあ野生の動物もいるわな。俺は自慢じゃないがものすごく想定外なことが起こる。それと山の中を通るということが同盟を結んだかのごとく、学校説明会や入試試験の日、サルに襲撃され愛用していたスマホをぶっ壊されたり、イノシシに突撃されケガはなかったが気を失い遅刻したりということがあった。このようなことになったのは大海高校初の出来事らしく、俺がそれの第1号になってしまった。
2つ目は校長の話が長すぎることだ。さらにすごくつまらない話しかしないので、毎回意識を失う人が出てしまうということだ。ちなみに、俺もそのうちの1人だ。
最後に3つ目は東村が同じ高校入学したということだ。女子更衣室侵入事件や誤解しか生まない音声データ大公開事件など数々の事件の元凶である。毎回俺は被害にあうのだが、加害者の東村は証拠隠滅を行い、あいつは一度も教師に怒られていない。そして、なぜか俺が怒られる。
東村の趣味は嫌がらせ、特技も嫌がらせ、毎日嫌がらせのことを考え、嫌がらせのためなら何でもする男。このような人間のことを世間は人類のゴミと呼ぶのだろう。中学では、前世が悪魔か魔王の二択ではないかと噂され、本人はとてもうれしそうにしていた。説明の通り関わってしまったらいけないということがものすごくわかるであろう。しかし俺は、ものすごく想定外のことが起こるため、人類のゴミと関わり最終的には悪友という称号をあいつは手に入れてしまった。
だから、あいつには一生出会わないようにするために、東村が入学しないような平和な噂しかない大海高校に入学しようと決意して、必死で受験勉強に励んでいたのだが、まさかそれを予測して東村が大海高校に入学するとは……。
という長ったらしい俺の回想とともに、長ったらしい入学式も終わり、教室に戻ることとなった。
入学したらまず知り合いが同じクラスにいるか確認するだろうが、イノシシの突撃によって起こった入学初日の遅刻の危機と、東村が自分と同じクラスにいるかどうか確認するのがすごく怖いという2つの理由で確認できていない。入学式で呼名があったが、自分の名前を呼ばれるとき以外、真面目にしているように見せかけながら意識を失っているので当然知り合いは確認できていない。
配布された学年の名簿を確認しようとしたそのとき、後ろから声をかけられた。
「あれ?弐星じゃん!まさか、高校が同じでクラスも同じで、さらに席が隣とかやっぱ私たちって腐れ縁なんだね」
声をかけてきたのは小学校からの幼馴染の女子、迅城だ。小学校、中学校で毎回クラスが同じで、席も隣、しかも近所に住んでいる。そして、けっこう仲が良いほう。
このクラスはアタリかもしれない。
「よかった、同じクラス知り合いがいて。俺、高校でしばらくぼっちになるとこだったよ……」
「まあ、私たちの中学の友達はここ、ふつう来ないしね、遠いし。そういやさ、テニス部入らない?私はあまり部活でぼっちになりたくないし。私さ、中学からテニスやってたじゃん?だから、いろいろ教えられるし、良くない?」
「親になんでもいいから部活入れって言われてたから、何に入ろうか考えてたとこだったんだ。テニス部、結構いいかもしれないな。……じゃあ入ろうかな」
副担任の教師が現れ、校長より全然長くない話があった。ちなみに、担任は理由までは教えてくれなかったが、休んでいるとのことだ。
その後、学校案内の書類や親に渡さなきゃいけない書類が配られた。そして、入部届も配られた。
先生の話によれば、この学校には仮入部の制度はなく、すぐに入部届を提出して部活に参加できるとか。というわけでさっそく、今日、親のサインをもらって明日から部活に参加しようかな。
迅城との会話がすごく平和だったな。中学のときは毎回東村に邪魔されるのにクラスが違うだけでこんなに違うなんて……!素晴らしい!!!
そういえば、東村はどのクラスなのか確認してなかったので、名簿を見ようとしたそのとき、
「よう、弐星。なんかうれしそうだな。何があったんだ?」
「ギャアアアァァァァァァァ!!!!!!」
東村に後ろから声をかけられ、俺は思いきり叫んだ。
「ふむ、弐星に嫌がらせするにはただ、会えばいいと。メモメモ」
「俺の嫌がらせについてメモするな!」
「久しぶりの再会なのに、ひどくない?クラスも一緒なのに。仲良くやろうよ」
「待て。聞き捨てならないことが聞こえたような気がするのだが?………………………オレトヒガシムラハオナジクラスナノ?………………マジデ?」
「ああ、おおマジだ。うれしいよ。しかも、俺の席は迅城の後ろなんだ!」
「えっ………………。俺と席近くね?………………………………………………………………………………オワッタ」
「席近くて俺超興奮しちゃった。………それよりさ、お前どうせ部活決めてないだろ?バドミントン部入らないか?バドミントンでお前をボコボコにしたいから………………じゃなくて、ヒョロヒョロなお前をバドミントンで鍛えてやろうと思ってな?」
「今、俺をボコボコにしたいとか言わなかったか?それは置いといて、もうテニス部に入ろう、って誘われたんだよ。さすがに、テニス部とバドミントン部の兼部は厳しいだろ?だからごめんな」
「お前、中学のとき帰宅部だったよな?」
「ああ、そうだけど。それがどうかしたか?」
「俺はお前が帰宅部だった理由を知ってるぞ。お前はいち早く家に帰ってエロ動画を見たかったんだろ?しかも、好きなジャンルがろ…………」
「なんで知っているんだよぉぉぉぉぉぉぉっっっっっ!!!!!!!!!!………………どうせ、俺がエロ動画を見てるのが父親にバレて、エロ動画を見るのに放課後の時間を使ってるなら部活入れって言われて高校で部活に入ることになったのも知っているんだろ?」
「えっ、そうなの?」
「え、なにこれ。………………………俺が自爆した感じだったりするの?」
「プププ。俺、お前が帰宅部に入ってる理由とか今適当に考えたことを言っただけなんだけど………!ブハハハハハハハハハハハハッッッッッッッ!!!!!」
「はあああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっっっ!!!!」
「このことを迅城にバレたくなければ、バドミントン部に入るんだな!!!はい、お前の母親のサインが書かれたバドミントン部の入部届だ!これにお前のサインを書いて提出しろよな?」
どうやって俺の母親のサインを書いてもらったかとか、気になることはとりあえず置いとくとして、俺は邪悪の権化である悪友、東村の邪魔によりテニス部ではなく、バドミントン部に入ることとなった。
次の日の朝、迅城に声をかけられた。
「ねえ、ちゃんと入部届持ってきたよね?今日、さっそく部活あるから一緒にいかない?」
「ごめん。バドミントン部に入った。」
「はっ?なんでバドミントン部に入ったの?昨日約束したじゃん!」
「それは……………………」
『東村にエロ動画の件を迅城にバレたくなかったからです。』なんて、絶対に言えるわけがない!
「それには、深いような浅いような訳があるんだよ」
東村が会話に入ってきた。最悪の展開になる前にこの話を切り上げなければ!
「あ、東村久しぶり。…………それで訳って何?」
「ああ、それは俺が誘ったんだよ。脅しを使ってね。その内容は中学のとき弐星がエ……もごもごもご」
俺はそのことを言わせないようにするために全力で東村の口を塞いだ。お前、マジでふざけるなよ!
「『エ』の続きは?」
「ああ、『エ』ね………。エ、エ、エ…………………。絵の鑑賞をパソコン使ってしてたのさ!中学のとき、美術の授業でレオナルド・ダ・ヴィンチについて習ったじゃん?それでレオナルド・ダ・ヴィンチが好きになってさ!いやぁ、最高だったよ!」
「ふーん………………。何か隠してることがあるってことがよくわかったよ。まぁ、私が知らないほうがよさそうだから聞かないでおくよ」
「ほんっとうに、ありがとう!!!」
(せっかく、二人っきりであんなことやこんなことができると思ってたのに…………)
「なんか言った?」
「いや、何も!!!!」
そのとき、東村が気色悪くニヤニヤしながら口を開いた。
「いや、言ったね。その内容は『せっかく、ふた…………』もごもごもご」
「『ふた』?」
「何でもないからーーーーー!弐星のバカーーーーーー!」
迅城は走って教室を出てどこかに行ってしまった。
それをクラスメイトは全員見ていた。1人の男子が、
「一体、何があったんだ?」
と、俺たちに質問してきた。俺が答えようとすると、先に東村が答えた。
「ああ、これ?この弐星って野郎が迅城と一発ヤッたんだよ?今、弐星が迅城とヤったのにもかかわらず、別の女のことが好き、とか言い出してああなった」
「うっわ…………、さいっってい」
1人の女子がつぶやいた。クラスメイト全員から俺にゴミを見るかのような目をしてるのですが。
「ちょっと待て、これは誤解だーーーーーーっっっっっっ!!!」
「弐星、なんでお前はみんなから冷ややかな目で見られてるんだ?」
「お前のせいだよ!!!ちっくしょおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!」
その後、授業でみんなで自己紹介をすることになったのだが、俺が自己紹介をするときはクラスメイト達は、完全無視か冷ややかな目で見てるかのどちらかをしていた。
東村を八つ裂きにしてやりたくなった。
授業が終わった後、このことを迅城に伝え、クラスメイト達は被害者と思い込んでいた人物に俺が無実だということを必死に証明しようとしていたため、この出来事は東村のいたずらという結論で終わった。
初っ端から夢の高校生活が実現不可能になるところだった。危なかった………。