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バドミントンでわんこそばの掛け声をやったった……  作者: 三好ペペロンチーノ
第3章 小白、合宿で落ちたった!

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第16話

 「ん~!ここの空気、やっぱりおいしい~!」

 俺、東村、岩破先輩、小白さん、大陸、竹土先生は激流山の上にある『激流蛙(げきりゅうかわず)旅館(りょかん)』という旅館に着いた。

 俺は岩破先輩に聞いた。

 「ここの旅館って去年も来たんですか?」

 「ああ、去年も来たね。というかここは大海高校の合宿する部活動は毎年来るんだってさ」

 「へえ~」

 「……そういえば、旅館に荷物置いて運動着に着替えたらここに集合ね。その後練習するから」

 「「「「えぇ~……」」」」

 「誰?不満そうな声を上げた人は。そんなに特別メニューの合宿バージョンをしたいならいいんだけど」

 「「弐星が不満そうです!ぜひ弐星にその特別メニューをやらせてあげてください!」

 「じゃあそうするか」

 「ちょっと俺だけじゃないだろ!お前らもだろ!」

 「弐星、何を言っているんだ!嘘は良くないぞ!不満なのは弐星だけだぞ!」

 「そうだそうだ!嘘は怪盗の始まりだぞ!」

 「東村、大陸ガチでふざけんな!あと大陸、怪盗じゃなくて泥棒だぞ。なんかかっこよくなった気がするぞ」

 小白さんは申し訳なさそうにしながら岩破先輩に頭を下げて言った。

 「岩破先輩。すみません。私です。不満な声を上げたの」

 「小白。正直に謝ってくれたから特別に普通の練習でいいよ」

 「やったー!」

 俺は土下座しながら叫んだ。

 「俺も不満な声上げました!すみません!だから普通の練習に俺もしてください!」

 「無理」

 「そんな~……」

 「それじゃあ、旅館に入ろうか!」

 先輩は俺たちをまとめて旅館の中へと入った。

 俺と東村と大陸の男子グループ、岩破先輩と小白さんの女子グループ、竹土先生はそれぞれ旅館のおばさんから部屋の案内をされそれぞれに鍵を渡してきた。

 俺は2階にある俺たちが寝る部屋の鍵を開け、靴を脱いで中に入った。

 「おお!まあまあ部屋広いじゃん!」

 大陸は靴を脱ぎ、窓のほうへと行き、俺に声を掛けてきた。

 「おい弐星!窓を見てみろよ!すげえ景色きれいだぞ!」

 「本当だ。森が旅館のすぐ近くにあるから、もしかしたらサルやイノシシを見れたりして」

 「おい東村!物騒なことを言うな!」

 「それってそんなに物騒か……?」

 「大陸。お前野生の生き物をなめすぎだぞ!サルやイノシシはな、襲い掛かってきて、その日提出しなくちゃいけない宿題のプリントやスマホをぐちゃぐちゃにされたり、弁当を盗られて食われたりとかされてな俺はひどい目に合ってるんだよ!」

 「そこまでされてる奴、初めて見たよ」

 「俺は合宿中は油断できるスキがないから正直嫌なんだけど……」

 「じゃあ今日の練習サボるか」

 東村がすごいことを提案してきた。

 「「ガチで?」」

 俺と大陸はハモった。

 「というか集合場所に『今日の練習はサボタージュ☆ by弐星(ちなみに東村と大陸は自分1人だけだと寂しいから連行しちゃった!てへぺろ♡)』って地面に書いたよ」

 「お前ふざけんな!というか俺が主犯みたいにすんな!お前が勝手に書いたうえにお前が提案したことだろうが!」

 「でももう書いちゃったんだぜ!今日の練習はどうせお前は超きつい練習が待ってるんだろ?だったら今日はサボるしかないだろ」

 「一理ある」

 「おい。俺は今日は別にきつい練習をするわけじゃないから練習に参加してくる。それで小白さんの神々しい香りを嗅いでハアハアしたい」

 「大陸。お前、欲望が丸出しだぞ!」

 「俺が欲望丸出しになって小白さんが俺を蔑んだ目で見てくるのも悪くないな!ああ!想像するだけで胸がドキドキしてきたああああああぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 「お前は部活より先に病院へ行け!」

 「なあ大陸。多分だが俺と弐星がサボる予定だから、岩破先輩はイライラしてお前に八つ当たりで超きつい練習をさせると思うぞ」

 「じゃあお前ら今日の練習来いよ!」

 「「それは無理」」

 「ああもう!どうしたらいいんだよ!」

 「お前もサボればいいんだよ」

 東村は大陸に顔を近づけて言った。

 「……そうするしかないのかよ。しゃあないサボるか。でもさ、どうやってサボるんだ?」

 「どういうことだ?」

 普通にサボるだけじゃ何か問題でもあるのだろうか。

 「いやだってさ。ここ、俺たちにとって未知の場所で岩破先輩は去年来たことがある場所。つまり、俺たちより先輩のほうがこの辺りのことは詳しいはずだろう。先輩から逃げるのは難しくないか?」

 「言われてみればそうだな。だが俺たちにはスマホがある。どこに何があるのかだいたい把握できると思うぞ」

 「車から降りたときさ、ソシャゲのログボまだだったの忘れてたからアプリを起動させようとしたら、回線悪すぎてできなかったんだ」

 「……でもさすがに旅館の中だったらWi-Fiくらいあるだろ」

 「いやない。証拠の俺のスマホ画面を見てみろ」

 スマホ画面には『ゲームをうまく起動できませんでした。回線のいい場所でもう一度お試しください。』という文字があった。

 東村が口を開いた。

 「それはね、大海高校の校長が合宿の支障をきたすからとかそんな感じの理由で合宿する場所をあえてスマホを利用しづらいここにしたらしいぞ」

 「マジか。つまり俺たちは練習をサボれないということか…………」

 「じゃあ、集合場所に行ってくる。弐星と東村がサボるから俺もサボることになったんだし」

 「おいおい。この情報を持っているだけで俺が何も対策していないと思ったのか?事前にこの辺りに関する地図を作っておいた。これでサボれるはずだ」

 「さすが東村だ!」

 「いや、お前らちゃんと練習しに行けよ」

 「大陸。お前は何もわかってはいない。いつもの練習をサボるのより合宿の練習をサボるほうがどれだけ愉しいか知らないのだろう」

 「いや、知りたくもないのだが」

 「未知の場所とも呼べるこの合宿は何が起こるかわからない。だからこそたのしめるというのがポイントだ。ゲームで例えるとだな。まだ戦ったことのないボスと戦うとき、攻略情報を調べて戦うのと自分なりに考えながら戦うのとではどちらが面白いかわかるだろう?」

 「そりゃあ後者だな」

 「その通り。それと同じく、いつもの練習と合宿の練習、どちらをサボったほうがいいかわかるか?」 

 「いつもの」

 「なぜそうなるのだ」

 「だって合宿の練習は貴重だし」

 「合宿の練習をサボるのだって貴重だ」

 「そうだけども、こういうのは真面目に練習するのが1番だろ」

 「どうせ本音は小白さんの近くにいたいからだろ」

 「そんなの当たり前だろ!」

 俺は口を開いた。

 「だったら小白さんも誘ってサボるのはどうだ?」

 「それだったら大喜びでやる!……しかし問題があるだろ」

 「問題?」

 「どうやって小白さんを誘うんだ?だって小白さんは岩破先輩と同じ部屋。つまり先輩と行動を共にしている。まさか先輩の目の前でサボりの誘いなんてできないだろ!」

 「確かに。東村はいい案はあるか?」

 「なくはない。小白さんに腹を下す食べ物を食べてもらって小白さんがトイレに籠っているスキに攫うってくらいしか思いつかない」

 「それはいろいろと問題があるぞ!」

 「そんなことを小白さんにしたら東村を殺す!」

 「だから『なくはない』って言っただろ。とにかく、俺と弐星はサボるから大陸は結局サボることになるんだけどな。」

 「しょうがない。サボるしかないのならサボるか」

 「じゃあ早速旅館から出るか」

 俺はそう言って玄関のドアを開けようとしたら東村が開けるのを止めてきた。

 「おい。普通に出入口から出たら俺たちがサボろうとしてるのがバレちゃうぞ」

 「じゃあどこから旅館から出るんだよ?この部屋の出入り口はこの玄関だけだぞ?」

 東村は窓を指さして言った。

 「窓」

 大陸が口を開いた。

 「ここ2階だぞ!」

 「お前らこの部屋のあの隅を見てみろよ」

 東村が指さした。それは何かの箱でその箱には、『避難用ロープ』と書かれていた。

 「なあそれって、火事とか地震とかでもしものときに使うやつじゃないのか?」

 俺は口を開いた。東村はそれに答えた。

 「避難用。つまり非常時に使うもの。今の俺たちも非常時だ。だから使っても問題ないだろ」

 「「問題大ありだわ!」」

 また俺と大陸はハモった。……何度も大陸とハモるのはなんか嫌だな。

 「とにかく避難用ロープを使って窓から脱出だ」

 そう言って東村は玄関に脱いでいた靴を持ちロープを下した。

 「お先に失礼」

 東村はシュルシュルとロープを使って旅館から脱出した。

 「楽しそうだな!」

 大陸は靴を脇に挟んでロープで下りていった。

 俺も行くか。靴を持ってロープで下りた。シュルシュルやるのなんか楽しいな!

 目の前に東村と大陸がいたためあいつらに声を掛けた。

 「東村、大陸!でどこに行……………こう…………………か。いえ何でもありません」

 俺は途中で気づいた。なぜ2人が立ち止まっているのかを。そして俺に背を向けたままでいたのかを。答えはシンプル。……目の前に仁王立ちで真顔の岩破先輩がいたからだ。しかも『ラケットを持った』状態の。

 「君たちはなぜ運動着に着替えもせず、部屋の窓から旅館を出たの?」

 東村は口を開いた。

 「大陸、確かお前説明するの上手かったよな?」

 「こういうのは発案者の弐星がいいと思うよ」

 「発案者は東村な」

 「とにかく説明してやれ、弐星」

 「そうだ弐星」

 「なんで俺なんだよ!……えっとですね先輩。俺たちは自分たちの部屋の探索をしてたんですね。それで非常用ロープとやらを見つけまして、それを試したいということになって現在に至るわけです」

 岩破先輩は真顔のまま言った。

 「仮にそうだとしよう。だとしたらあれは何?」

 岩破先輩が指をさした。それは東村が勝手に書いた『今日の練習はサボタージュ☆ by弐星(ちなみに東村と大陸は自分1人だけだと寂しいから連行しちゃった!てへぺろ♡)』である。……。

 「先輩。あれは俺が書いたわけじゃないんです!東村が冗談で書いたものなんです!ガチです!」

 「弐星。自分の罪を人に擦り付けるんじゃねえ。自分の罪は自分で償え」

 「東村が言うなよ!」

 「弐星。さっさと認めちまったほうが楽だぞ!」

 「大陸はなんで俺がやったみたいなふうにしてるんだよ!」

 「3人とも君たちの言い分はよくわかった」

 「「「つまり俺は悪くないってことですよね?」」」

 「3人とも悪いに決まってんだろうが!5分以内に支度してこい。来なかったら睡眠時間なしで合宿の最終日までずっと合宿の特別メニューだからな!」

 というわけで俺たちは特別メニューの合宿バージョンという練習をした。大地獄というものがあるとかないとかって話があるが、本当にあるのならこの練習に違いないだろう。このメニューは東村の嫌がらせのほうがよっぽどマシだと思えてしまうくらいにきつかった。ひどすぎて18禁になりかねないからすべては語れないだろう。唯一1番マシな練習は、うさぎ跳びしながら岩破先輩のウルトラ超本気のスマッシュを1万回レシーブしないと終われない、というものかな。これよりひどいのがわんさかあった。小白さんのしていた普通の練習がすごく羨ましかった。

 合宿1日目で俺が学んだことは部活をサボったら死ぬということだ。

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