第13.5話
私、小白と弐星くん、岩破先輩、東村くん、大陸くん、そして竹土先生は山に合宿に来ていた。
合宿の最後の夜、夜道を弐星くんと2人きりで歩いていた。
「はい、じゃーんじゃん!」
「はい、どーんどん!」
「はい、じゃーんじゃん!」
「はい、どーんどん!」
「はい、じゃーんじゃん!」
「はい、どーんどん!」
私は弐星くんに続いて何度もわんこそばの掛け声をしていた。
「何やってるんだろう……私」
「何って、わんこそばの掛け声だけど」
「それはわかってるよ!でも、別にわんこそばの掛け声をしなくてもよくない?」
「だってお互いの異常があるかどうか、確認するのにちょうどいいのがこれしか思いつかなかったからしょうがなくない?」
「でも、わんこそばの掛け声はなんか雰囲気をぶち壊してると思うんだけど」
「今の状況で雰囲気とか気にしてる場合じゃないだろ」
私たちバドミントン部は合宿の最後の夜は肝試しだった。赤色の印2つ、青色の印2つ、無印1つの割りばし、合計5本が用意されていて、これらを使ってくじ引きをして、引いた割りばしの印が同じ人がペアになって肝試しをするというルールだ。それで弐星くんとペアになったんだけど、途中『ハプニング』があって崖から落ちて私はちょっとケガをした程度で済んだものの、お互いのスマホは落ちた時に壊れてしまって連絡が取れなくなった。合宿で泊まる宿は山の上にあり、その宿は明るくてわかりやすい場所にあるから、そこに向かうべく私と弐星くんは歩いているというわけだ。
「ねえ弐星くん。わんこそばの掛け声より別の方法のほうがいいと思うんだよね」
「例えば?」
「アカペラの合唱とか」
「俺、歌うの苦手なんだよね」
「じゃあだるまさんが転んだをするとか」
「立ち止まってたら帰るのがめちゃくちゃ遅れる」
「それじゃあお互い芸を披露するとか」
「俺、芸っていってもできるのないと思うよ」
「弐星くんは腹踊りとか得意そう」
「できねえよ!」
「じゃあじゃあ歩きながらバドミントンをするとか」
「ラケットもシャトルもないし、歩きながらとか絶対むずいだろ!」
「………………手を繋ぐとか」
「それは絶対にやめよう!」
「何で?もしかして恥ずかしいから?でも大丈夫私も恥ずかしいからお互いさまってことでいいじゃん!」
「それも確かにあるんだけど、そうじゃなくて俺、お前と手を繋いだら明日はない気がする……」
「私ってサソリとかみたいな毒があるとかそんな感じ?」
「そんな感じ」
「おい」
「冗談だよ。でも結局わんこそばの掛け声のほうがよくないか?」
「そうなの?」
「はい、じゃーんじゃん!」
「無理やり始めないでよ!」
私はもっと弐星くんと恋愛がしたいのになぜかうまくいかない。だって弐星くんが私のアプローチをことごとく潰してるんだもん!はやちゃんならどうするんだろう?
私と弐星くんは足を止めずに歩いていた。




