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バドミントンでわんこそばの掛け声をやったった……  作者: 三好ペペロンチーノ
第2章 大陸、御神体を崇めたった!

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第11話

 1度行ったことがある場所を再び訪れるというのはどういう気持ちでいればいいのだろうか?どういう気持ちでいればいいかわかるものも確かにある。例えば祖父母の家の場合は、楽しい気持ちであろう。なぜこんな気持ちなのか。それはいつも一緒にいる親が口うるさいが、祖父母は優しくしてくれるからだろうか。楽しい気持ちは自分にとって心地よいものだから再び訪れたいと思える場所になるのではと思う。では生活指導室は果たしてどういう気持ちでいればいいのだろうか?

 「弐星君。なぜ君は女物の制服を着ているんだ?」

 「なぜと言われましても……。ただほぼ全裸の状態で森で野宿してて、さすがにこのまま学校に行くのは良くないと考えまして、制服を持っているという人から貸してもらったので着たら偶然女物の制服だったってだけですよ。何か問題でもありました?ないですよね?ないようですので、それでは失礼します」

 「待て待て待て!勝手に解決した風にして話を終わらせるな!『何か問題でもありました?』って、問題大ありだ!」

 俺は学年主任の教師に説教されてます。まあ、そりゃあそうですよね。遅刻はしなかったけど、女子の制服を着てる男がいたら生活指導送りになるわな。俺でもこんな男を見たらとりあえず生活指導したくなるわ。

 「本当は何か別の理由があるんじゃないのか?」

 「先生!俺のことを信じていないんですか!ひどいじゃないですか!」

 「弐星。今まで俺は見逃してたほうなんだがな。お前の趣味について何か言うつもりはないが、校内ならまだしも、せめて校外で騒ぎになるようなことはやめてくれ。最初の校外の騒ぎはなんだっけか。……そうそうお前、バニーガールの恰好をして他校まで行ったとかだっけか。今日はほぼ裸の状態と女子の制服を着てたとか。お前がそんなに世間で言うところの変態のような行いををやりたいよなら家でやってくれって!頼むよ!」

 俺は別に何も悪くないが何を言っても無駄であろう。バニーガールの件は東村がいろいろと隠蔽だかなんだかをして最終的に俺が悪くなるだろうし、今日のパンイチと女子の制服の件だってサルに襲撃されて着るものがこの制服だけだったんです、とか言っても普通ありえるものではないから信じてくれないだろう。将棋でいうところの『詰み』。

 人は危機に陥ったときになると、具体的にどうしてそうなるのかは知らないが身体が覚醒する。いわゆる火事場の馬鹿力というやつだ。俺はそれを足に集中させた。

 そう、俺は自慢の足で校内を走った。教師から逃げるために。後日、東村から聞いたことなのだが、大海高校で俺は『逃げの弐星』と呼ばれるようになったという。うれしくない目立ち方をしてしまった。

 さてこの騒動のオチというのは、教師たちが『弐星を捕まえ、生活指導室まで送り届けた生徒は1単位与える』という校内放送を流したせいで、俺は一瞬にして東村に捕らえられてしまった。……もしかしてだが、東村はこうなることを予測していたとか?それはどうでもいい。問題なのは俺が逃走したからさらに生活指導をされたため、俺は特別指導となったことだ。これも後日聞いた話だが、『逃げの弐星』以外で俺は『特別指導RTA優勝者』という不名誉な呼び方もされているとか。俺は『優勝』という言葉に喜ぶべきか、それとも平和な噂しかなかったこの学校で一番早く特別指導をされた人になって悲しむべきか。俺はどちらを選択すればいいのだろうか。

 ちなみに、俺の生活指導と特別指導で呼び出された俺の担任の竹土先生は指導してる風に見せかけて、何も指導せず、なんなら『課金するべきかしないべきかお前はどっちがいいと思う?』とかなんとか俺に質問しながらゲームをしていた。俺より先に竹土先生を指導するべきでは!

 そんなこんなで俺は大海高校の超危険要注意人物とされて放課後になった。

 俺は学校に設置されている公衆電話で部長の岩破先輩に電話した。ロッカーにしまってた愛用のテレフォンカードを使って。

 電話で今日の部活に参加しないことを伝えてすごく怒られる前に無理やり電話を切った。


 私、小白はベッドの上にいた。……また記憶がない。なんで?最後の記憶は弐星くんに『大丈夫?』って声を掛けられたところだった気がする。その先が思い出せない。つまりその後に意識を失ったのだろう。風邪のときにおでこに貼る冷たいあれ(一応名称は知ってるけどあれって商品名かどうかわからないからこの表現でごまかすことにした)がおでこに貼ってあった。身体が少し熱い気がする。意識を失う直前よりかは良くなった気がする。

 あのとき弐星くんとはやちゃんのどっちが私を運んでくれたのだろう?はやちゃんは安心するし、弐星くんだったら……もし私の意識があったら、弐星くんの女装姿を見て鼻血が出ちゃうかも。

 私はなんで弐星くんについていろいろ考えちゃうようになったのかな。やっぱりあれかな。私が屋上にいてそのときに弐星くんが空から降ってきたあのときからかな。あれは印象強いな。人が空から降ってくるってのも印象強いけど、着地がうまくできなくて股間に屋上の柵に思い切りぶつけていて、この世の終わりみたいな顔してたのがすごく面白かったあれだよね。……フフ。思い出すたびに笑ってしまう。でも結局一番印象強かったのは、私をバドミントン部に誘ってくれたやつかな。私は人見知りだから誰かとおしゃべりするのがすごく苦手で、高校でしゃべれなかった。そんなときに私に声を掛けてくれた弐星くんにすごく感謝している。私の王子様みたい…………おうじさま………なんか違う気がする。弐星くんって変態だし。あの変態が王子様だったら痴漢はみんな王子様になってしまう。変態でも女装姿はかわいくてかわいくてかわいくてかわいくてかわいくてかわいくてかわいくてかわいくてかわいくてかわいくてかわいくてかわいくてかわいくてかわいくてかわいくてかわいくて……。あれ?かわいいってことしか思いつかない。欠点はいろいろ思いつくんだけどな。急に叫ぶし、運が悪いし、ほぼ裸の状態で私の水着を貸してほしいとか言う変態だし、練習試合のときほぼ裸になってバドミントンする変態だし、迅城を見てるときちょっと顔を赤くしてるからどうせやらしいことを考えてるに決まってる変態だし、変態だし、結構変態だし、すごく変態だし、ものすごい変態だし、本物の変態だし、学校一の変態だし……。あれ?気が付いたら欠点が変態でいっぱいになった。考えれば考えるほど弐星くんが残念な男子に思えてきたんだけど。

 …………あの変態な男子のことを考えていたらなんで顔が熱くなってきた。だいぶ良くなったと思ってたんだけど、また熱になったのかもしれない。体温を測ってみたら37.7℃だった。微熱。体感は39℃くらいあると思ったんだけどなんでだろう?さっきまで熱だったから感覚がおかしくなってしまったのかもしれない。寝よう。

 それにしてもあの夜、なんで謎の集団に追われてる弐星を私は追ったのだろうか?本能が追えって言っていたような気がしたからだけど、なんで?弐星くんのことが心配だったから?……身体が勝手に動いたからよくわからない。でも、心配していたのかもしれない。結局私のドジのせいで弐星くんを見つけられなかった。代わりにはやちゃんが見つけてくれたみたいだけど……。なんだろうこの気持ち。なんかすごくもやもやする。これも熱のせい?違うと思うけど、熱のせいにしちゃえ!

 そのとき、ドアに誰かがノックする音が聞こえた。

 「ねえ、お友達がお見舞いに来てるよ。部屋に入れてもいい?」

 「寝てるからダメ」

 「起きてるじゃん」

 それにしても『お友達』?誰だろう。私は自慢じゃないけど友達は少ない。高校の友達ははやちゃんが特にそう。でもはやちゃんは今週の土曜に新人戦があるとかで放課後は全然暇な時がないらしい。バドミントン部のみんなだって今日は部活。岩破先輩が練習をさぼらせないから来れないだろう。クラスにも友達はいるけど、休みの日とかに遊びにそこまでの仲ではなかった。高校の友達ははやちゃんを除いて私の家は知らない。他に私の家を知っている友達は中学の友達のみんながいるけれど、私が体調を崩したことを知っていない。つまり、お母さんの言う『お友達』が誰なのか。すごく謎。

 そんなことを考えていたら、ドアが開いた。………………なんで弐星くんがここに?それよりなんで私の家の場所を知っているのだろうか?そういえば私の意識がなくなったとき弐星くんが私を運んでくれたから私の家を知っているという可能性もある。そういうことか。

 「じゃあごゆっくり!」

 お母さんはニマニマしながらドアを閉めた。お母さん、なんか変な勘違いをしていない?

 でも良かった。一昨日部屋を片付けてたから『お客さん』を無理やり帰らせるようなことをしなくて済んで。

 女子の部屋に初めて入ったのか緊張して正座している弐星くんに質問した。ちょっと失礼かもだけど。

 「はい、お見舞いの品で持ってきたプリン。これ旨いから食ってくれよ」

 「ありがとう。プリンは机に置いていて。……それにしても、なんでお見舞いに来てくれたの?別に来なくて良かったのに……」

 弐星くんはプリンを机に置くと、改まった感じで口を開いた。

 「昨日の夜から俺を探そうとしてくれたのがきっかけで体調を崩したんだろう。つまり俺が原因だからそのことで謝罪と感謝を伝えるために来た……かな」

 ちょっと照れ臭そうに言っていた。こっちもなんか照れ臭くなってきた気がする。本当に『これ』は何だろうか?

 「そういえば弐星くん。なんであの制服じゃなくて体育着着てるの?」

 「学校行ったら先生たちに指導されて今日はせめて体育着で過ごせって言われちゃったからな」

 「はぁ~……」

 「なんでため息するんだよ!」

 「女子の制服着た弐星くんの撮影会がしたかったから……」

 「小白さん、実は元気なんじゃないの!」

 「じゃあ証拠の体温確認する?」

 私は体温計で測ることにした。服の下から体温計を脇に挟む動作をしている途中、弐星くんはなんかもじもじしていた。……もしかしてだけど、この動作に興奮とかしてないよね?

 1分ほどして体温計がぴぴぴって音を鳴らしたから確認すると、37.3℃だった。さっきは37.7℃だったから結構下がった。今の体温は熱があるといっていいのかちょっと微妙……。この体温を弐星くんに見せたら、

 「……ちょっと反応に困る値だな。まあとりあえず安静にしててくれよ」

 それにしても弐星くんの写真撮りたかったなぁ~。待てよ?私いいこと思いついちゃったかもしれない!

 「ねえ弐星くん!私の服貸すからやっぱり撮影会しない?」

 「絶対に断る!」

 「私は弐星くんの女装姿の写真を撮らないと明日死んじゃう病気にかかっています」

 「わかりやすい嘘をつくな!」

 私はベットから降りてタンスから服をあさって、弐星くんに見せた。

 「弐星くんは意外とナースとか似合いそうだよね!ちゃんと帽子みたいなやつもあるよ!」

 「せめて着るなら男物の服がいいのだが!」

 「じゃあこれは?」

 「ん?ただの白いTシャツ……これサイズ小白さんにしてはでかくないか?」

 「お父さんが子供の頃に着てたやつが出てきてさ、いらないからあげるって言われてもらったの。……ってどうしたのその鼻血!」

 「小白さん、ティッシュちょうだい」

 私はティッシュを箱ごと渡した。

 (もしかしてズボンも穿かずにこれだけ着てワンピースっぽくしてる小白さんとかめっちゃ色っぽいだろ!やばい!考えるだけで鼻血が!)

 「弐星くん、なんか言った?」

 「何も言ってないよ!」

 なんか絶対に聞いちゃいけないことを言っていた気がする!でもこれは気にしてはいけない気がする。弐星くんの鼻血は止まったようで、弐星くんはTシャツの背中部分を見て固まっていた。

 「なあ小白さん。ここに『趣味は女装。特技は女装。よろしく。』って書いてあるんだけど……」

 「それがどうしたの?」

 「これ着させようとしてたの!というかお前の親父さん、こんな服よく持ってたな!」

 「もう弐星くんったら、わがままばっかり言って!あと弐星くんが似合いそうなのはメイド服と女教師が着そうな服と私の小学校の頃の服と裸エプロンしかないよ」

 「どれも似合わないだろ!特に後半の2つ、おかしいぞ!」

 「とにかく着てよ!」

 「絶対に嫌だ!」

 私はメイド服と女教師が着そうな服と私の小学校の頃の服と裸エプロン用のエプロンを持って弐星くんに迫った。えへへへへへ。

 「お、おい!やめろって!」

 「いやいやいや!ちょうど女装できるんだからしなくちゃ損だよ!」

 「……小白さんがその気なら考えがある!」

 弐星くんは少しためらいながら服を脱ぎだした。もしかして、女装してくれるの!えへへ……。パンツ1枚だけの姿になった。着てくれるんだ!…………パンツを少し下げた。もう少しで見えちゃいけないところが見えてしまくらいまで。

 「俺を女装させようとするなら、その前にお前の目の前でパンツを脱ぐぞ!」

 ……忘れてた。弐星くんは変態だってこと。この年で男のアレを見てしまったら『何か』がなくなる気がする。

 「ちょっとそれは、さすがにまずいよ!」

 「じゃあその持ってる服を全部床に置くんだ!」

 「私の着てる服も!弐星くんはケダモノだったなんて知らなかったよ!」

 「着てる服は脱がなくていい!」

 そんなことを言いながら、弐星くんは私に近づいてきた。本当に脱ぐ気なの!いや私の両手にある服たちを床に置けばいいけど、弐星くんの撮影会はしたい!私の『何か』を守るべきか、それとも撮影会をするべきかすごく悩む。

 弐星くんが1歩前に進めるたびに私は後ろに1歩。また1歩、1歩、そして1歩、さらに1歩……。私は床に置いていたナース服を踏んで後ろに倒れそうになった。

 「小白さん危な……、うわ!」

 弐星くんは『趣味は女装。特技は女装。よろしく。』と書かれているTシャツを踏んで前に倒れてしまう。私は弐星くんに押されて後ろに完全に倒れてしまった。

 「小白さん。ごめん……」

 「別にいいよ。こっちも悪かったし」

 そのとき、ドアが開いた。私と弐星くんは一斉にドアの向こうを見た。そこには一瞬私たちを見た後全身がみるみるうちに白くなった大陸くん、私たちに向けて素人でもわかるくらいすごそうなカメラを向けている東村くん、何かが入っているエコバックを床に落として手で顔を隠している(指の隙間から目がバリバリ見える)岩覇先輩がいた。

 私と弐星くんは目があった。客観的に私たちの様子を見ると、パンツ1枚しか身に着けていない弐星くんに私が押し倒されているみたいな感じになっている。例えるなら、BLで弐星くんは攻めで私が受けみたいなそんな感じだ。つまり、この状態は誤解されてもしかたのない光景だ。私と弐星くんはようやくこの状況が最悪だということに気づき離れた。

 先輩はちょっと恥ずかしそうにしながら口を開いた。

 「あのこれ、お見舞いのゼリー。……その………………ごめん」

 東村は大陸を背負い、先輩はゼリーを部屋に置いた後ドアを閉めた。

 私と弐星くんは再び目が合うとお互いに頷いた。

 「「ちょっと待ってえええええええええええええぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!」」

 私と弐星くんはハモった。

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