第0話
俺、弐星はバドミントン部の練習試合で他校の体育館に来ていた。
仲間の東村と一緒に戦うダブルスの試合が始まり、東村が床に落ちてたシャトルを手で取り、サーブするところなのだが、
「はい、じゃーんじゃん!」
「はい、どーんどん!」
俺は東村の後に続いてわんこそばの掛け声をしていた。
なにやってんだろ、俺……。
対戦相手の2人になにやってんだこいつ、と言っているような目を向けられ、それに耐えられなくなったので、目をそらすようにして後ろを振り向いてみた。ラケットを持たずにケラケラ笑っている岩破先輩、頭の回転が追い付いていないのか口をぽかんと開けている小白さん、俺たちのことは気にせず小白さんを恍惚とした表情で眺めている大陸、パイプ椅子に座って真面目な顔でゲームしている竹土先生が目に映った。そして、横を見ると東村は屈伸しながら何か考えているような顔をしていた。どうせこいつは、対戦相手にどんな嫌がらせをしようか、とかを考えてるのだろう。
同じ中学に通っていた東村もとい悪友に高校では関わらないようにしようと思っていたのに、なぜ現在、ダブルスのペアになってしまったのか……。
中学では東村にひどい目にあった。
例えば、俺が塾に遅刻しそうになって廊下を走ることを予測して、廊下をワックスでものすごくツルツルにして、俺がその廊下で転びそうになって何とか踏ん張ったのだが、勢い余って前に進んでいってちょうど女子が着替えてる更衣室に、激突してドアをぶっ壊しながら入ってしまったり、俺の会話をすべて録音してそれを切り取ったりつないだりをうまい具合にして作り上げた音声データ(その内容は「どうも、他人のリコーダーの口をつける部分をぺろぺろするのが大好きな弐星です。ちなみに、どんな人のリコーダーでもいけるよ。最近はたくましい男の写真をみて『※放送禁止用語』して、『※放送禁止用語』するのがマイブームなんだ。俺と好きなものが同じ人はぜひ俺に声をかけてくれ。」)を学校の放送で流され、桃色ブリーフ一丁の男に声をかけられたりとかされた。
本当に、東村に関わるとろくな目に合わない。
俺はただかわいい女子と青春したいだけなんだ!
というかそもそもなぜ、興味なかったバドミントン部に入部したんだっけ?
高校の入学式から振り返ることにした。




