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24.相思相愛




「か、カトリアなのか!? どういうこった……なんでカトリアの声が……」



 ……バスターの目の前に光輝く猫と人が入り混じったようなシルエットの何かがいる。この光輝く何かから、カトリアの声? いや心の声、思考が伝わってきている。テレパシー的なアレか?



『バスター!! バスター!! よかった! よかった無事で!! はぁ~、わたし心配で心配で、本当によかった!』


「こりゃあ一体……この光の影から強い意思を感じる……カトリアだけの意思じゃない」



 バスターがそう言った瞬間、光のシルエットが強く光り出した。これは──カトリアの感情? 思念か? バスターに会えて嬉しいという、強い思い。それが津波のように押し寄せてくる。


「……力が高まってる。こいつに意思があるなら、こいつの意思を真なる勇者の力で強化したらどうなるんだ? ちょっとやってみるか」



 え? ちょバスター? なんでそうなるの? 俺の心配を他所にバスターが手を光の影へと掲げ念じ始めた。すると、とんでもないことが起こり始めた。


 カトリアと光の影の思念、そのエネルギーが実体化し、渦となってバスターを飲み込んだ。



『うおっ!? ……あれは、チビの頃のカトリア? それにここって、オーグラムじゃねーか』


 バスターが渦に巻き込まれやってきたのはオーグラムとそっくりの場所。そして、俺が見る限り、この”世界”ではバスターの実体がない。ここはきっと……オーグラムの過去、いや……カトリアの過去の記憶か?



『あのバスターって領主様の息子、どうしてわたしを守ってくれたんだろう』



 うおっ、そうか……カトリアの記憶だから、カトリアがどう思ってたのかとかも分かるのか……


『これあれか? 確か悪ガキ共がカトリアをいじめてたから、オレがダセェからやめろって言った後か? オレ殆ど憶えてねぇなこれ……ん? じゃあこれって、カトリアの記憶か?』



 どうやらバスターもこの空間がカトリアの記憶の世界だと気がついたようだ。ってうわ、場面が切り替わったぞ? 急にふっと変わるからビックリするな……



「カトリア、お前はこれからドランボウ家の侍女長の所で暮らすことになる。ここならばワシの庇護下となる、もうバカ共に嫌な思いをさせられることはない。バスターに感謝することだ」


「あ、あのスミス様……そうしてバスター様は、わたしの事を守ろうとしてくれたんですか?」


「大勢で一人をいじめるのはダサい、やるなら一対一、個人で決着をつけるべきってのが、あいつの考えみたいだ。まぁあとは……単にお前が可哀想だと思ったって言っていた」


「バスター様は、お優しいんですね」


「優しい所もあるが、そればっかりじゃない。むしろ気性は荒い……あいつはこのままでは無駄な対立を起こし、人を殺しまくることになる。だからそうならないために友が必要なんだ。気性の荒いバスターを止められる、対等な友人が必要だ。カトリア、もしバスターに感謝の気持ちがあるのなら──お前がバスターを止められる、良き友となってはくれないか?」


「わたしになれるでしょうか?」


「分からん……死ぬかもしれん。だから今までどの家の子供にも頼めなかった……バスターの友となれと……だがカトリア、お前はバスターが初めて守ろうと思った人間だ、お前ならバスターとうまくやれるかもしれないと思った。頼む……あいつと友になってくれ!」


「分かりました」


「いいのか……? 死ぬかもしれないぞ? これは大げさに言ってるわけじゃない……」


「大丈夫です」


『死ぬかもしれないと言われたけど。なぜだかわたしは全然危ないと思わなかった。それに……家族と家を失ったわたしが、まだ必要とされるとは思っていなくて……頼られたことが嬉しくて、それに応えたくなった』


『カトリア……父様にこんなこと言われて……えー? そうなの? オレって父様からそんなヤベーヤツだと思われてたのか?』



 そりゃまぁ二才の頃に人を殺しかけてますからね、バスター君は。そして、また場面が切り替わる。



「おいカトリア、そのバスターさまってのはやめろよ。ともだちはたいとうなんだぞ? ほんでよんだからオレはしってんだ! これからはバスターと呼び捨てにしろよな」


「え、えぇ? そう言われても、わたしはドランボウ家に仕える身だから……」


「いまはかんけーねーだろ? あそぶときにそんなことかんがえてたら、つまんねーだろ……?」


「……でもわたしがバスター様をそんな呼び方したら、他の人がどう思うか。みんな……わたしを反逆者の子だって思ってるんだよ? 偉そうだって、嫌われちゃうよ」


「はぁ? おまえじぶんでいってたじゃん! お父さんははんぎゃくしゃじゃないって。おまえはただの女のガキ、そんでオレのともだち、それだけだろが!」



『そう言うバスターの顔は、とてもまっすぐで、本気で、心の底から言っているのが分かった。ただの子供、ただの友達、そうバスターに言われた瞬間、わたしの心は軽くなった。わたしはただの子供、ただの女の子なんだって、そう思えたから。わたしは、バスターの前では、ただの女の子でいていいんだ。そう思った……思えばこの瞬間から、わたしはバスターの事を好きになったのかもしれない。わたしをわたしのまま、まっすぐに見てくれるバスターが、誰よりも凄く、輝いて見えた』


『おいおい、カトリア……そんなに褒めるなよ。オレは当たり前のことを言っただけなんだが?』



 嬉しそうに照れるバスターの思念体。特殊な状況下での惚気になるのか? これは……



『バスターと一緒に過ごしているうち、バスターをどんどん好きになっていった。バスターに依存してしまっている。わたしはそんな事実に気がついても、自分を抑えられなかった』



 ん? 自分を抑えられなかった? なんだか雲行きが怪しいな……



『今では暇さえあればバスターの後をつけてしまう。何をやっているのか、その全てを知りたくなってしまう。バスターとずっと一緒にいたい……バスターと結婚したい。でも……それはダメ……わたしは反逆者の子、スミス様はわたしとバスターの結婚を許すことはない……だから、だから……バスターを見るだけ、見るだけで抑えよう』


『え? ちょ!? え!? カトリア!? おまっ、オレの水浴びとか着替えとか、見過ぎだろ!! 変態か? あちょ、あいつ股を、あっ……えええーーー!?』



 なんと……カトリアはバスターで自慰行為をしていたらしい。しかもかなり早い段階で……そこから数年間、自分の強すぎる欲望を抑える戦いをしていたのか……


まさか……そんな抑圧生活を続けていった結果……こじらせてしまったのか? むっつりスケベのレベルが極限まで上昇し、バスターと実際にそういう感じになりそうになると、頭がおかしくなってしまう。


カトリアはバスターと結婚しちゃいけないと思ってるから……自分の欲望と理性が衝突し、ぐちゃぐちゃになってるんだ。



『まじかー、でもよかったぜ。あいつも本当はオレと結婚したいんだな』



 バスターいいのか? お前カトリアにストーカー行為されてたし、カトリアは実は変態だったけど。それでもいいのか? ……まぁいいか! 好みは人それぞれだ。



『あれ? バスターまさか……え!? もしかして、バスターわたしの心の中にいるの……!? ちょ、マズイ!! 見ないで見ないで見ないで見ないで!! うわあああああ!』



 カトリアの心の声が響く。するとバスターは再び光の渦に巻き込まれ、現実の世界、地下の拷問部屋へと戻った。



『み、見た? わわわ、わたしの心……』


「見たぞ」


『ぎゃああああああああああ!!? 今から死にますッ!!』


「死ぬなバカ、オレはお前の記憶を見た。でもオレはお前のことを好きなままだぜ? 大体、そういうアレで言うなら……オレもお前でアレしたことあるしな。気にするな」


『えぇ!? アレって、そういうことなの?』


「そうだから気にするな。つーか、オレだけお前の心を見たんじゃズルいよな? だからなんでオレがお前のことを好きになったかを教えてやるよ。オレもお前と同じだ、お前がオレを、ただのオレとして、ただのバスターとして見てくれたからだ。それに可愛いしな。実を言うと、お前を初めて助けた時だって、お前が可愛いから守りたくなったってのもあるんだ。とにかくさ、もう我慢するなよ。オレは世界を敵に回してもカトリアと結婚するからな。大人しくオレの嫁になれ。でないと先に世界が滅ぶことになる」



 こいつ本当に真なる勇者か? 言ってることはまるで魔王だが……けれどバスターは嘘をつかない。本気で言っているんだ。



『バスター、スミス様に認めてもらえるように、一緒に頑張ろう。やっぱりわたし、バスターとスミス様には仲良しのままでいてもらいたいから』


「う……しょうがねぇなぁ。そうだな、それが一番だ。だったらそれに全力だ!」



 カトリアは心の底からバスターの幸せを願っている。ありがとう、ありがとうカトリア。俺もバスターには愛着があるんだ。お前がバスターを幸福へと導くんだ。





 弐拾四話、読んでくださった方ありがとうございます! 人は抑圧によって歪むことも多いんです。



 感想とかあれば一言でいいんで気楽にお願いしますね~。評価もよろしくお願いします!

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