12.闇の勇者
「ごめんなさい。信じられないかもしれないけど、根は悪い人じゃないんです。バスターはちょっとだけ変わった所があるだけで……本当は良い子なんですよ?」
カトリアがバスターの後始末、不憫な猫女の治療をしている。しかしカトリアのこのセリフ……ダメ男についてくダメ女のアレだ……
「オネーチャン、治療してくれてありがとにゃ……でもオネーチャン騙されてるにゃ……こいつは身も心もバケモンにゃ……ついてくのは大変だにゃ。おすすめしないにゃ……それと、おみゃーらの闇ギルドの入団は認めるにゃ」
あ、ギルド加入認めてくれるんだ……こんなことしでかしても、入れるんだ……よく分からない世界だ。
「お、いいのか? 自分で言うのもなんだがよ、オレのやったことってメンツを潰す行為なんじゃねーのか?」
「まぁ理由は色々あるにゃ。この闇ギルドは基本的に実力主義にゃ、三腕である、みぃを倒したとなれば実力は申し分ないし、この性格じゃ表の世界でやっていけるとは思えないにゃ。それに……貴族、それもかの英雄スミスの息子となれば、みぃ達が加入を断るのは無理だにゃ……ただでさえ勇者とアレンコード教の干渉を受けないようにするのにていっぱいにゃのに……あの化け物一家を敵にしたら手が回らにゃいにゃ……みぃ達も不良だし、多分気は合うにゃ、それだったら味方にしたほうが組織の為だにゃ」
どうやらドランボウ家、そしてスミスは帝都でもかなり有名らしい……というか、アレンコード教? なんだそれは、もしかして俺、アレンコードを崇める宗教か? 俺はそんなもの作った憶えはないが……俺が天界に封じられた後に、人が勝手に作ったのか? 俺は他の神とは仕組みが違うから、崇められても意味はないんだがな……
「なるほどな、じゃあお前の三腕っていうのはどういう意味なんだ? 本名じゃねぇだろ?」
「フッフッフにゃ! 闇ギルドには最強幹部メンバー8人で構成される八腕っていうのがあるんだにゃ! みぃはその八腕の三腕なんだにゃ! 本当は凄い奴なんだにゃ!」
「にゃーにゃーうるせぇなァ! もう黙れッ!!」
「いやお前が聞いたんだろうがーーーーァッ!! ぜぇ、はぁ、はぁ……」
バスターの理不尽な物言いについに語尾を捨てる三腕こと可哀想な猫。大声を上げるのに慣れてないのか辛そうにしている。
「なんだ普通に喋れるんじゃねーかよ。こりゃあいよいよ安易なキャラ付けでやってたって線が濃厚になってくるぜ。だとすると許せねぇなぁ、本能的に仕方のないものだったら許してやろうと思ってたが、こりゃ無理だぜ」
「はぁああああ!? こいつカスだにゃ! だったらみぃも譲らないにゃ! 力には屈しないにゃ! それで死んでも、本望だにゃ!! みぃは! にゃーにゃー言い続けるにゃ!」
「な、なにィーーーッ……!? そんな、命を懸けるレベルのことだったのか!? マジかよ……それなのにオレは……オレが悪かった。これはオレも誠意を見せねぇとだな……三腕、困ったことがあればそんときはオレに言え、力を貸すぜ」
「へ? ほんともう……なんなんだにゃ、こいつ……まぁでも力を貸してくれるならありがたいにゃ。みぃは闇ギルド三腕のシャクリンだにゃ、これからよろしくにゃ!」
ほんと、なんなんだろうな。
「ああよろしくな! シャクリン!」
こうしてバスターとカトリアは闇ギルドの一員となった。
「そうだおみゃー達、こっちに来るにゃ! こいこいだにゃ!」
三腕のシャクリンがバスターとカトリアに手招きする。シャクリンが待つその先には地下のさらに奥へと続く扉があった。そうか……闇ギルドのアジト、そこにたどり着くための第二関門がここだったのか。最初が酒場から地下へと続く扉、次に地下通路にある鉄扉、侵入者対策もそれなりってことか……
しかし、だとするとバスターがあっさり闇ギルドに入れたことが気になる。一応これだけの対策をする組織なら、バスターが敵対者であった場合のリスクを考えて然るべき。バスターや俺が気づいていない仕掛けが地下通路にはあったのかもしれないな。
「奥の奥、じゃあここがアジトってわけか?」
「そうだにゃ! おーいみんにゃー! 新入りのバスターだにゃ! イカれてるけど腕力強いから気をつけるんだにゃ~!」
「おいおい、そう褒めるなよ!」
半分貶されてますけど、バスターさん……にしてもここが闇ギルドのアジト、思ったよりも清潔感のある、質素な空間だ。変わったことで言えば、足音がやたら響く作りになっていて、耳の良い者なら誰がどこにいるかがすぐに分かることだろう。あと謎のぬいぐるみのようなモノがちらほらある。シャクリンは自分のことを不良と言っていたが、このアジト内には見た目からそれっぽいのはいない。ちょっと屈強な一般人のような見た目だ。単なる不良では正式メンバーにはなれないってことか?
少なくとも、あのスリ集団の回収役の男はこのアジトには入れなかった。繋がりがあっても、正式メンバーでない者は、あの第二関門までしかいけないってことか……
──カツン、カツン、カツン。このアジトでは足音がよく響く、そんな場所でワザと足音を鳴らすように歩けば、それなりの音量となって、威圧感を伴う。大きな音が、バスターに向かって来る。
「僕は八腕の八腕、闇ギルドのリーダーをやっているヒュージン。まぁそう名乗るよりは、もう一つの呼び名の方がわかりやすいかもね──
──ウレイア帝国三勇者が一、ノーブラッド・ヒュージンだ」
現れたのは銀髪で額に大きなキズのある優男。その目は冷たく、バスターを見下ろしていた。
この男が、勇者……ウレイア帝国に三人いる勇者のうちの一人……
十二話、読んでくださった方ありがとうございます! 独自のローカルルールというのにいかに迎合するか、それが人間の社会性だと思っています。例えば国単位で見たら社会性がない人に見えても、小さく区切った場所単位では十分に社会性を発揮している人もいると思います。例えば荒くれ者の集団でもものすごい上下関係が厳しい所とか、あれって社会性ないと無理だなって思います。
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