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強力な協力者

翌日。


「なあ、俺と一緒に新しい部活作らないか?」


「なにそれ。めんどくせえ」



 ダメだ。



「俺さ、新しい部活作るんだ」


「へえ」


「良かったら一緒に活動しないか?」


「何言ってんだ? 俺はサッカー部期待のエース様だぜ。掛け持ちなんてしてらんねえよ」



 撃沈。



「あのさ、俺と新しい部活で青春を謳歌しない?!」


「新しい部活? どんな?」


「それは……えっと、真実の愛を探し求める部活?」


「なにそれ。おままごと?」



 取り付く島もない。




「ダメだ! いやこうなるだろうとは思っていたけども!」


 片っ端からクラスメートに掛け合っても、誰一人としてマトモに話を聞いちゃくれない。そりゃあそうだ。俺たちはもう2年生だし、部活に入りたいと意欲的な人間は、既にどこかの部に所属してしまっている。運動部は練習もハードで忙しく、とてもじゃないがこんなアホな部活と兼部なんてしている暇はないのだ。


「う~、でもなあ、上……絢星にはやってみるって言っちゃったし……」


 当たってはみたが無理だった、と告げることは簡単だが、あの執念深い女のことだ。見つかるまで死ぬ気で交渉してこい、さもなくば……とまた脅迫めいたことをされるに違いない。考えるだけで背筋が凍る思いだ。


「ちーたき」

「ん?」

「さっきから百面相して、一体どうしたの?」


 教室で一人頭を抱えていると、開いているドアから一人の女子生徒がひょっこりと顔を出す。明るい栗色の髪に、グリーンの瞳が印象的な美少女だ。


「……小鳩」


 七縞 小鳩。(ななしま こばと)

 こいつは俺の家の近所に住んでいて、幼稚園、小学校、中学校、そして高校……と偶然にもすべて同じ学校で育ってきた、いわゆる幼なじみというヤツである。今はクラスは違うが、顔を見れば軽く喋る程度には仲はいい。小鳩はカラッとした明るい性格で、変に女の子女の子しておらず、俺のような女友達が少ないタイプでも緊張せず話せる数少ない女子なのだ。


「何か悩みがあるなら相談しなよ! ま、助けてあげるかあげないかは、あたしの気分次第だけど!」


 にひひ、と少し意地の悪い笑みを浮かべる小鳩だが、俺はこいつが人一倍優しい性格をしていることをよく知っている。幼い頃から、お世辞にも社交的とは言えない俺を、何かと気にかけてくれていたし。小鳩のおかげで広がった交友関係もある。

 今俺が考えていることは、そんな小鳩の優しさにつけ込むようで、なんだかあまり気乗りしないのだが。ええい、背に腹は代えられない。


「あのさ、小鳩、お願いがあるんだ」

「おお、何? 千滝から改まってお願いなんて珍しいね」

「実は、俺……」


 俺は洗いざらい、すべてを話した。

 俺のクラスに転入生がやってきたこと。

 その転入生が少々ぶっ飛んだ女で、成り行きで新しい部活動を作るはめになってしまったこと。

 そして、部を設立するためのメンバーが一人足りていないこと。


「なるほど、なるほどね……」


 さすがに脅迫されていることまでは言えなかったが。小鳩はブツブツと何かを呟きながら、俺の話を咀嚼している。


「なあ、頼むよ小鳩、俺もよく知らない転入生と二人じゃ心細いし……信頼しているお前が一緒なら、なんとかやっていけそうっていうか……」

「っ?!」


 嘘偽りない本音を口にすると、なぜか小鳩の頬に赤みが差す。そしてみるみるうちに、茹でダコのように真っ赤になってしまった。


「わ、わかった! わかったから……」

「え! 本当か?!」

「うん、あたし、その……初恋部? っていうの、入ってみるよ」

「!! ありがとう小鳩!」


 あれほどクラスメートに袖にされたあとなので、感動もひとしおである。本当は思わず飛びついてしまいそうなほど気持ちが高ぶっていたが、いくら幼なじみとはいえ節度はわきまえなければいけない。親しき仲にも礼儀あり、という言葉を頭の中で反芻し、俺は控えめに小鳩の肩をぽんと叩いた。


「じゃあ、そのこと転入生に伝えてくるよ! また連絡する! ホントにありがとう!」

「あ、うん……」


 小鳩に手を振ってから、俺は報告のため絢星のところへ走った。




「……ちーくん、ずるいよ……」


 その後ろで、小鳩が真っ赤な顔を両手で覆ってそのまま床にへたり込んでいたことなど、当然知るはずもない。

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