何気ない日常
「この俺、入命綱也は不死身である。そう、人間を超えた神の領域に足を踏み入れた男なのである。」と声に出し今日も学校に行くこの少年、そう、中二病である。
「俺は今、重大な出来事に直面している、本当に、とうでもないことにだ。」
それは昨日の7月20日に遡る。
「ねぇ、綱也~、一生のお願いだよ~」この発言からしてバカそうな女は幼馴染で家が隣の廻流凛。
今日は俺の部屋で宿題をやる予定だったが、30分ほどで投げ出してしまった。
「なんで俺が宿題を見せないといけないんだ、俺には何のメリットもない」
「こんな超絶美少女と一緒の部屋にいるだけで十分でしょうが!これ以上何を求めるの!」
「ま、まさか...いかがわしいことを!?」
「ちがう!断じてそんなことはない!第一自分で自分のことを美少女というやつのどこが美少女なんだ、自意識過剰にもほどがある」
確かに凛は自分で言っていても何も違和感のないほどの美人だ、だが、ここで認めてはこいつが調子に乗ってさらに要求してくるに違いない、絶対に認めるわけにはいかないのだ。
「今回は特別に見せてやろう、特別だぞ、今回だけだぞ!」この男、チョロいのである。
「ありがと~!さすが綱也、チョロいね~ほかの女の子にもすぐついていきそ~」
「ん?そんなことはない、俺にはお前しか、話す女がいないからな」綱也は少し言うのを躊躇いながら言った。
「え?そう、なんだ?」凛は照れを隠すかのように下を向いた。
「な、なんだよ、急に静かになって」
「なんでもないよ!ただ綱也がかわいそうだなって思っただけー」
「お前、もう宿題は見せないからな」
「うわーん!嘘嘘嘘じゃーん!」
何の変哲もないことのように思うだろう...だが!これはとてつもなく重大なことなのだ、家族のように思っていた幼馴染を女として意識してしまったのだ。
「これは本当にとんでもないことになったぞおおおおお!!!!!」
「んだようるせぇなー、また凛ちゃんとなんかあったのかよ」この口が悪い変な男はただの知り合いの池照友親。
「うるさいのはお前だ友親、なぜおまえはいつも俺の気持ちを見透かしてくる」
「親友なんだから当たり前だろ小学生から高校の今までずっと一緒のクラスじゃん」
「なぜおまえと離れられない、怖すぎるぞ」
「ごたごた言ってねーで行くぞ、今日で夏休み前最後の学校だ」
そうだ、今日はついに7月21日、明日から夏休みだ、とはいってもやることはない。
学校も終わり、下校時間になった。
「綱也ー昼食いに行こうぜー、凛ちゃんも呼んでいつものとこ行こうや」
「そろそろ委員会が終わるころだろ」
「綱也友くん~!」遠くから凛が走ってきた。
「よし行くぞ~!」凛は上機嫌に言った。
「いつにも増して機嫌がいいな、どうかしたか?」
「だって夏休みなんだもん!いろんなことするんだ~!たのしみだな~」
「いいねー凛ちゃん、俺は何しよっかな~!」
「そうだ!みんなで海でも行くか!親父に行って手配してもらおう!」
「いいね友くん!さすが大手リゾートホテル会社の御曹司!」
「いいのか?友親」
「もちろんだ、親父もお前らと行くって言ったらすぐ手配してくれるさ」
楽しくみんなで話しながら昼を食べ、家に帰った。
そうして時は流れ、気づけば8月に差し掛かろうとしていた。
そして迎えた8月1日の朝。
凛が行方不明になった。