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第2話 こころのつかえ

「君、お魚が好きなの?」


少年は頷いた。


「私はね、イラストが大好きで、今はあることがきっかけで童話作家になりたいと思ってるんだ。 あ、私、青井万理望(まりも)


「僕、水谷正樹(まさき)


「正樹君か。あ、お弁当冷めちゃうから、食べようか」

「うん」


さすが、知る人ぞ知る『玉の屋』の「牛すき弁当」、そのうまさたるや会話も忘れてしまうほどおいしい。


正樹君もさすが育ち盛りの男の子、ペロっと完食してしまった。


「正樹君、今日、学校は?」

「.... 」


「あ、サボりだ」

「サボりじゃないよ。行きたくないから行かないだけ」


「ははは。そっか」

「.... 」


「学校か.... 嫌なこともあったけど懐かしいなぁ」

「嫌な事? 嫌な事とかあったの?」


「うん。いっぱいあったよ。私、友達に仲間はずれになって高校やめちゃったもん」

「やめたの? ....なんで中学はやめられないのかな?」


「う~ん。なんでだろうね。 ねぇ、もしかしてさっきの子たち?」

「 ..別に.... 」


「あのね、」

「別に関係ないよ!」


そういうと正樹君は自分のバッグを無造作に肩にかけ走り去ってしまった。


「(私、お節介だったかな....)」



****


「ただいま」

「おや、随分と早いご帰宅だね、万理望ちゃん」


「..うん」

「ところで、私のお昼ご飯は、何処にあるんだい?」


「あっ!ごめん。買ってくる」

「いいよ、もう。お腹と背中がくっつきそうだから、美咲屋さんで食べてくるよ」


「ごめんなさい。おばあちゃん」


****


正樹君が再びお店にやってきたのはその日の夕方だった。


「いらっしゃ あ、正樹君」


「あの.... お弁当ありがとうございました。それと.... 何か.. ごめんなさい」



「んっ! 大丈夫だよ」


正樹君は心のつかえがとれたような笑顔を見せてくれた。


「そうだ。正樹君、私の新作の童話だけど、少し読んでくれないかな?」

「え?」


声が聞こえたのか、いろはおばあちゃんが椅子と紅茶を持ってきてくれた。


・・・・・・

・・


「これ、万理望さんが書いたんだよね?」

「そうだよ」


「凄く面白かった」

「ありがとう。そう言ってくれるとやる気でてくるんだ!」


「凄いなぁ。絵も上手。でも、その魚の絵の鰭が少しだけ....」

「少しだけ変かな? 想像でパッと書いたから。少し直してくれる?」


「魚の鰭はこことここに付いていて、この鰭で方向転換するんだよ」


正樹君は空きスペースに魚の絵を描いてくれた。


「凄い。魚の絵がすごく上手だね」

「いつも描いてるから....」

そういうと少し照れながらもうれしそうな表情をしてくれた。


「あ、もう帰らなきゃ。またお母さんに怒られる。じゃ、また」

「うん。またね、正樹君」


正樹君が店を出ていくと、いろはおばあちゃんが言った。


「元気になったみたいだね。あの子も万理望ちゃんも」


「うん!」

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