ニートでもポジティブならよくない?
本日もポジティブニートの力を遺憾なく発揮し、紫外線対策をしっかりした一見すると変質者のような出で立ちで花壇作りをせっせとしているジブリナ。
太陽がサワサワと光を降らせる15時ころ、春。
「…♫今日のおやつはなんでしょね♫…」
ジブリナはご機嫌である。
ご機嫌に、花を植えていく。
色とりどりの花が、無秩序に。
ジブリナには法則があるらしいが、周りの人間には色とりどりの花が乱雑に植えられていくようにしか見えない。
「…♫世界の真理は空♫…」
ポジティブとは。
「…♫世界の真理は無♫…」
ポジティブとは?
「…♫世界の真理は存在、存在とは時間と空間♫…」
ポジティブなどと浅慮な考えは真理に必要だろうか。
「…♫世界の真理はモノ自体♫…」
真理がそこにあれば真理となるのだろうか。
「ジブリナー!!お買い物行ってきてー!!」
「はーい!!!」
ジブリナ・マーサ、2○才、実家住みのポジティブニート、母親に買い物を言いつけられ快諾。
中規模な司教座都市バート・リスペンヒルゼ。
温泉は塩鉱泉、設備も充実。
数年前から騎士団本部が置かれ自由都市としても形作られつつある。
活気ある昨今、ニートにも住みやすく変化し、ジブリナは非常に時代に感謝申し上げたい気分で買い物へ出掛けた。
「………今日は何のお魚がお得かなぁ〜、面白すぎる魚を買うとまたビショップに怒られるかなぁ…」
ジブリナは変質者のような出で立ちから少し装備を取り払い、爽やかなロングワンピース、それでも日傘につば広帽子はかかさず、という姿である。
小さく独り言を言うのも印象的に良くはない。
暢気に市場を抜け、フラフラと彷徨い、カフェにでも入るか、親の金もといお買い物のお金で…などと考えていた。
「――やすみ?」
「へっ?!」
聞き慣れた前世の名前を呼ばれた気がして、ジブリナは勢いよく振り向いた。
そこには、驚いた顔をしたワンコ系イケメン。
「どなた?!」
「…誰だと思う?」
ジブリナは、ジロジロと見やる。
魔法学校の制服を着ているのと、まだ驚いている表情―――に、ジブリナは見覚えがあった。
「ふーちゃん?」
そう言うと、少し上目遣いでこちらを伺っていた表情が、嬉しそうに綻んだ。
「うん」
「ま…まあああああ!」
ジブリナは、少し離れていた距離を一息に詰めると抱きついた。
ふーちゃんも、ジブリナをしっかりと抱きとめる。
2人の目には涙が浮かび、お互いに喜んでいるのが傍目でもよくわかる。
ひとしきり抱き合った後、カフェに入り話そうということになった。
「あ、でも、やすみは時間大丈夫?」
「ん?大丈夫!買い物して帰るだけだし」
「そうなんだ…?」
ふーちゃんは嫌な予感がした。時刻は平日15時30分。
「―――うん、ご職業は?」
「ニート!」
満面の笑みで答えるジブリナを前に、ふーちゃんは少し呆れた後、おかしそうに笑った。
「…前世と変わらなくない?」
「毎日楽しく暮らしてます!」