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予期せぬ出来事

第一章 未踏の地にて


僕は今、関東の夜空をボンヤリと眺めている・・・・


 キラキラと煌めく星。煌めきを失った星。僕はベランダに一人、ただそれを眺めている。

 

 九州生まれの九州育ちにとってここは見知らぬ街。


 会社という名の組織に打ちのめされ、追い込まれ、僕は今、広い夜空の下、ここに一人なのである。 

時折、西の方角の空に顔を向けるが、連なった山々が邪魔をして、遠くを望むことさえ出来ない。


 途切れた暗い空に嫁さんの顔が見えた。煌めく星がまるで笑みの瞳のようで、僕は情けなくなって俯くことしか出来なかった。

それは唐突だった。冗談半分で行き付けの店の店長に紹介を頼んだ事が現実となり、彼女は僕の前に現れたのだった。 

携帯など存在しない遠い昔の話である。時間より少し前に待ち合わせ場所に着いた僕は、車のシ―トを半分だけ倒し、幾分くつろいだ格好で待っていた。 


 暫らくすると店の方角からこちらに歩み寄る人影が見えた。それは迷いさえないような足取りで、それを見た僕は急に身体が緊張した。 

最初の言葉は何にしようか。

 そんな事を考える時間はもう無かった。


「こんにちは」

こっちよりも先に声を掛けられ、僕は慌てて言葉を返した。 

「こんにちは」

何とも間抜けな返事である。こんにちはの後にもう少し気の利いた台詞は無かったものか。僕は必死に言葉を探した。しかし、次の言葉はやっぱり彼女のほうだった。 

「乗っていい?」

昼下がりの日差しの中でそれはまばゆいような笑顔であった。 

 僕は、左手を思いっきり伸ばし、助手席側のドアを内側から開いた。


 それから二ヶ月も経たないうちに彼女は姉妹店に籍を移すことになった。 

ここから車で30分ほど掛かる隣町にである。いきなりの事で理由は本人も分からないという。 

 多分、付き合ってることがやぶ蛇となったのだろうと僕も彼女も思った。お互いに口にはしなかったが、そう感じるものがあった。 


 それは、彼女が二十歳で僕が十九の少しばかり肌寒い秋の事。彼女は新しい店の近くのアパート住まいとなった。

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