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最低でもビートルズ  作者: 林広正
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5

 ショウは部屋でギターを弾き始めた。ようやく活動を再開させようと考えたんだ。チャコとジョージにも連絡を入れた。新しいアイディアがあるんだ。ノーウェアマンとして形にしたいと思っているんだけど、ちょっとこっちで試したいんだよね。興行の日が決まったら観にきてくれよな。そう伝えていた。

 カオリも一緒に参加するんだよ。

 ショウの言葉に、彼女は一瞬固まったが、すぐにニヤニヤ顔を歪ませた。なんだか照れているようだ。

 私になんてできるかなぁ。その言葉は弾んでいて、喜びを抑えきれていなかった。元来の派手好きな俺の母親は、そんな舞台に上がることに興味を持っていたんだ。ショウが死んでからも、度々舞台に上がっている。演劇もそうだが、それとは関係のない舞台にも呼ばれ、恥ずかしげもなく愛想を振りまき話をする。

 ショウが考えたのは、演劇と音楽を融合させることだった。元々ショウの作る曲には物語性がある。感情を爆発させただけの 詩的な曲も多いが、物語性のある曲こそショウらしいと言われている。そんな曲を演奏するため、演奏に演劇っぽさを感じることは以前から言われてはいたんだ。しかしショウにそんな意識はなかった。ただ曲を表現するために体を動かしたり表情を作ったりしていただけだ。演奏しながらその動作でも表現をする。ノーウェアマンの興行が演劇的と言われる所以だ。

 しかしショウは、その程度で満足はしない。演劇の要素をしっかりと取り入れた上での音楽と演奏にこだわったんだ。今では当たり前になっている歌劇の原型を作ったわけなんだよ。まぁ、ショウは決して楽器を手放さなかったから、今の歌劇とは若干の違いがあるんだが、それは演劇の要素を強くした結果なだけだよ。

 ショウはまず、物語を念頭に置いた曲を生み出していった。普段は一曲三分程度に収めていたが、演じる時間を考えるとそれでは足りなくなり、六分前後の曲を十八曲作り一つの作品を完成させた。

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