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最低でもビートルズ  作者: 林広正
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7

 ノーウェアマンの三人と彼女は、転送装置を使って横浜へと帰った。転送装置の混雑は予想以上だったが、ショウ達三人は兵士達用の転送装置を手配していたため、すぐに横浜に辿り着いた。

 兵士達用の転送装置は持ち運びが可能だ。いつの時代でも、最先端の技術は軍事利用されてしまう。まだまだ大きな箱型ではあったが、どこにいても転送できるってことは画期的で、この開発があったからこそ、今の携帯型へと一気に進化していったんだ。今では固定型の転送装置は稀にしか見かけなくなったよ。

 横浜に戻ると真っ直ぐ聞き屋の元へと向かった。持てる限りの楽器を背負い、聞き屋の横に並んで腰を下ろす。彼女もショウの隣に腰を下ろそうとしたが、君は向こう側だよと、向かい合って座らせた。

 ショウがギターを搔き鳴らし、最後の路上ライブが、始まった。

 その演奏と歌声を聞き、多くの者が足を止め、噂が広まる。呟きはまた、大騒ぎだ。しかし、そう簡単には人が集まらない。沖縄で足止めされている連中と、疲れて眠ってしまった連中が大勢いたからだ。ノーウェアマンの興行は、現地で見られない人のため、毎回光配信されている。つまりはタダで映像を流しているんだ。これはショウの考えだが、元々路上ではタダだったんだから、これが当然だという。作品や会場に訪れた際にはお金をもらっているんだが、それは経費がかかるからみんなで分け合っているだけだというんだ。お金がなかったり時間がなかったりする連中は配信で楽しめばいい。機会があるときに遊びにきてくれるだけで十分なんだそうだ。とは言いながらも、ノーウェアマンは、作品や興行の売り上げで大いに儲かっている。その儲け率がその他のバンドに比べて少なくはあるが、それはあくまでも率の割合で、稼ぎ出している金額は世界一だった。

 路上ライブ自体はそれほどの混乱もなく無事に終了した。チャコとジョージは楽器を背負って帰っていった。それじゃあまた。と二人がいい、あぁ、とショウが答える。行ってくるね。行ってらっしゃい。二人の姿が消えていく。

 私達はどうするの? 彼女の言葉にショウは、どうしようか? なんて答える。このままニューヨークに行くってのはどう? どうせあなた、一人ぼっちなのよね?

 それもありか・・・・

 その言葉のままに、二人は立ち上がり、歩いて行く。転送装置に向かい、目指すのはニューヨークだ。こっちは朝方だから、向こうは夕方だ。ちょうどいいじゃんと二人は感じる。気をつけろよとの聞き屋の言葉は、二人の背中には届かなかった。

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