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最低でもビートルズ  作者: 林広正
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 ショウ達三人は、沖縄に着くとすぐ、ステージの設営をしている兵士達に会い、御礼を言い、手伝いをする。そしてリハーサルを兼ね、兵士達のためだけのライブを行った。

 戦争っていうのは、実に自分勝手な存在なんだ。どちらの国が悪いかなんて、どうでもいい。どちらも人を殺しているっていう事実は消せないんだから。

 沖縄で会場の準備をしていた兵士達は、敵味方が関係なかった。戦争していない時間は、兵士達にわだかまりなんてない。目的が同じなら、同じ方向に進んでいく。兵士達は協力し合い、会場を設営していた。

 リハーサルを終えると、ショウ達三人は島へと渡った。沖縄本島には転送装置がいくつもあったが、島には当時、一つもなかった。移動手段は飛行型か海上型のスニークだった。時間はかかるが、そこまでしてでも訪ねる価値がある。

 島で暮らす人達は、戦争の被害を多く受けていたにも関わらず、とても優しい。この世界では珍しい破壊されていない自然に囲まれているからだろう。スティーブの存在はあちこちで感じられるが、文明以前からの建物が多く残されている。文化も独特で、その言葉さえも、独自の言葉が残されているんだ。

 ショウはその島が大いに気に入り、文化や言葉を吸収していた。紙の文化はなかったようで、お年寄りから情報を得ていた。とても楽しそうにしていたよ。ショウも島のお年寄りも共に。

 島でもノーウェアマンはライブを行った。住人全員を集めてのライブは、普段とは違う雰囲気に包まれ、普段とは違う音楽が奏でられた。

 島に残されていた住人達は、ほとんどがノーウェアマンのライブを初めて経験する。その名前は知っていても、曲を聴けば覚えがあっても、それほどの興味を抱いていなかった。それは、お年寄りから若者まで、住人全員に共通していた。

 海に囲まれた島の沿岸部には、いくつもの大きな洞窟が存在している。そんな洞窟の中には、多くの住人が集まる会館のようなものもあり、そんな場所はたいてい、スティーブからの干渉を妨害している。

 会館の中に入ると、住人は独自の言葉を使用し、妙な楽器を手に持ち、歌っていた。

 わしらはな、あんたらが有名になる前から歌を歌っておった。自然と身体に波打つリズムを表現しておるだけじゃがな。音楽っていうのは、そういうもんじゃよ。

 そんな声に、ショウは頷いた。

 島の住人が手に持っていた楽器は様々だった。三本しか弦のない小さめのギターのような楽器が一番多かったが、床に置いて弾く十本以上の弦が張ってある楽器や、それまでには見たことがなかった打楽器もあった。どの楽器も、素晴らしく楽しい音を奏でる。

 文明以前からの楽器を受け継いでいるのは、なにもこの島だけじゃない。この国だけでもない。あんたはまだ若いから知らんかもしれんが、この世界にはまだまだ多くの矛盾が残されているんじゃよ。音楽を想像したって言われとるんじゃろうが、以前から音楽は溢れておった。あんたはそれを知らずに、勝手に始めただけなんじゃろ?

 いきなりそんなことを言われ、ショウは戸惑う。確かにこの島で聞く音楽は、ショウが創り出したものとも、ライクアローリングストーンのものとも違う。裏社会で生き続けてきた音楽があるかも知れないってことは想像したことがある。しかし、こうして現実を目の当たりにするのは初めてだった。しかも、なにか悪いことをしたかのように感じられる。

 あんたが悪いとは思っとらんよ。むしろ喜んでいるんじゃ。わしらが楽しんでいる音楽も、いつの日か日の目を見れるってことじゃからな。

 そんな言葉にホッとし、その楽器を弾かせてくれませんかと手を伸ばす。

 もちろんいいとも。陽気になれる楽器だとは思わんかね?

 ショウは手に取ったその楽器を、同時に手渡された爪を指にはめ、鳴らした。

 いい感じだねぇ。そう言いながら、楽し気なメロディーを奏でた。

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