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最低でもビートルズ  作者: 林広正
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 休憩前の全ての興行は終了していたが、最後にもう一度演りたいっていう気持ちが三人共に一致し、会場探しを始めた。

 ノーウェアマンに見合った会場は、そうは簡単には抑えられない。しかも休憩前最後の興行となれば、キャバランでやったとしても、大騒ぎになってしまうだろう。キャバランでの興行は定期的に行ってはいたが、それは多くの会場を回っているうちの一つだったから、それほどの騒ぎにはならなかっただけだ。とはいっても、狭い会場でノーウェアマンを身近に感じられるキャラバンでの興行は、常にチケットの争奪戦が繰り広げられ、会場前には当日券とキャンセル待ちの輩が多く押し寄せ、実際の観客の倍は集まってしまう。

 どうすればいいかな? 困ったことがあると、ショウはいつも聞き屋の前にしゃがみこむ。

 本当はさ、ここでまた演りたいんだ。今回で最後かも知れないからね。

 ならいっそ、演ってみるか?

 予想外の聞き屋の言葉に、ショウは慌てる。

 そんなこと、不可能だろ?

 聞き屋にはなにか打開策があるんじゃないかって、勝手な期待をしている。

 まぁ、普通に考えていたんじゃ、不可能だろうな。聞き屋のそんな言葉に、ショウは項垂れ、あからさまな落胆を見せる。

 そう分かり易く落ち込むなって。言ったろ? 普通に考えたんじゃってさ。だったらどうする? そうだよ。普通じゃない考えならいいってことだ。

 聞き屋の言葉に、ショウの瞳が輝いた。

 まずはどこかここから離れた場所で興行をするんだ。会場を抑えるのが無理だとすると・・・・ そうだな、どこかの戦場がいいんじゃないか? 海外でもいいが、沖縄なんてどうだ? あそこなら、多少の無理も効くだろ。最近は戦闘が止んでいるはずだからな。

 あそこにまた戻るのか・・・・ 正直、いい気分はしないよ。けど・・・・ 行くべきなんだよな。最後にあの場所で歌うのか。それもいいかも知れない。

 独り言のように呟くショウの言葉に、聞き屋が反応をする。

 本当の最後は、ここでするんだよ。まぁ、休憩前のって意味だけどな。なんだかみんなが死んじまうようだな。

 冗談のつもりの聞き屋の言葉に、そうならないことを祈ってるんだ。と、真面目なトーンでショウが言う。

  沖縄に人を集めて、その日の夜中にここに戻ってくる。それならきっと、それほどのパニックにはならないだろ? 転送装置はあまり大勢をいっぺんには運べないからな。最後はここで静かに楽しもうってわけだよ。

 聞き屋がそう言うと、それ最高じゃないか、とショウは笑顔を見せていた。

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