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最低でもビートルズ  作者: 林広正
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 ショウが通信機能で話をしたのは、ライクアローリングストーンのリーダーであるニックだった。驚いたことにニックは、文明以前の文字が読めない。おまけにニックの生まれ育ったスコットランドでは、音楽の文化がまるきり存在していない。楽器の存在すらなく、形のある本で溢れている部屋なんてどこにもなかった。しかし、たった一つの本を手に入れていた。それは、ショウが聞き屋から譲り受けたのと全く同じ本だったんだ。とはいっても、文字も読めずに音楽に触れたこともなく、たった一冊の本だけで新しく音楽を生み出すことなんて不可能だ。ショウはそう感じたが、確かにそうやって音楽を生み出しているんだから、ニックの才能はとんでもない。それを感じたショウは、ただただ嫉妬したよ。

 けれどショウは、そんなことで歩みを止めたりはしない。むしろその歩みを加速していった。新しい表現を考え出し、それに向かって動き出そうとしていた。

 僕達の音楽を、映像で表現できないかな?

 ショウは突然そう言い出した。なにを言いたいのか、チャコとジョージには理解ができなかった。ただキョトンとするばかりだ。

 僕たちの音楽を街中に流すんだよ。その上に会社の宣伝を乗せるんだ。逆でもいいが、楽しいと思うだろ? 横浜だけじゃなく、世界に飛び出すにはいい戦略だと思うんだけどな。しかもな、金になる。会社の宣伝をする代わりに、お金を貰うんだ。

 当時としては画期的な発想だったよ。後に進化を遂げ、当たり前になっているが、その元祖がノーウェアマンだったんだ。

 しかし、その準備にはそれなりの時間がかかった。

 ショウはその準備に疲れ、ふと以前訪れた聞き屋の休憩室を思い出したんだ。あの場所の空気感に浸りたくなったそうだよ。そして一人っきり、地下へと降りて行く。

 部屋に入るとすぐ、ソファーに腰を下ろす。頭を空っぽにし、ただその時間を過ごす。頭の中の空気が一新されるのを感じる。

 ここに来ると、心が綺麗になるんだよな。そんな独り言を呟き、ようやくソファーから立ち上がった。すでにこの場所に来て二時間が過ぎていた。

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