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最低でもビートルズ  作者: 林広正
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 おばちゃんがそう言った直後、虚ろだったジョージの瞳に変化が現れた。視線がしっかりと、目の前に立っていたショウに向けられたんだ。

 俺のこと、分かるか?

 ショウがそう言った。ジョージはその言葉の意味を考えるようにして、頷き、そっと口を開く。

 久し振りだな。ここに来るのは、何年振りだ?

 ジョージのそんな言葉に、側にいたヨーコが涙した。

 みんな心配していたのよ。そんな言葉に、周りのみんなが頷いた。

 まぁ、これで事件は完璧に解決ってわけだ。俺とおばちゃんはお暇するよ。それじゃあな。

 そう言うとミッキーはおばちゃんと共に部屋を出て行く。

 報酬はちゃんと届けろよな。そんな言葉をショウに向けて残していった。

 ジョージはじっと、ショウを見つめ続けていた。

 ショウもまた、ジョージを見つめる。

 そんな二人の様子を、温かい目でチャコが見つめる。

 なんとも不思議な空気が部屋を占拠していた。堪らずヨーコが口を開く。

 なんだか分からないけど、私は邪魔のようね。今日は取り合えず、帰るね。後でちゃんと連絡してね。

 ヨーコは誰にともなくそんな言葉を落とし、部屋を出ていった。

 なんだかよく分からないけど、俺を助けてくれたってわけか? ありがとうよ。

 そんなことはどうでもいいよ。僕はさ、ジョージに会いたいって思っていた。そして会えた。こっちこそありがとうだよ。

 ショウの言葉を聞き、ジョージの顔に笑顔が広がっていく。

 それよりさ、僕とチャコは今、音楽を始めたんだ。ジョージも一緒にやってくれないか? グループで音楽をするのって、確かバンドって言うんだよな。三人でバンド組もうぜ!

 ジョージはポカンと口を開ける。聞きなれない言葉に、驚きは隠せない。

 ショウはジョージに対し、まずは自分の現状を伝えた。ボブアンドディランでの興行を中心に。それからチャコを誘ったことと、バンドについての構想を話した。そして三階へと連れて行く。

 好きな楽器を演奏するといいよ。ジョージにはこれが似合うとは思うけどね。

 そう言ってショウが手渡したのは、ショウがよく使っているギターに形が似ているベースと呼ばれる楽器だった。太めの弦が四本並ぶベースは、心に響く太い音を出す。

 ジョージは適当に弦を叩いては音を出す。ギターを使ってショウが見本を見せると、それを真似する。弦を弾いたり叩いたりと、独自に音を出すジョージに、ショウもチャコも目を丸くする。

 最高じゃないか! ジョージの演奏が一段落したとき、ショウとチャコが言葉を重ねてそう言った。

 この日三人は、バンドを結成したんだが、バンド名はまだ、つけられていなかった。

ちなみにショウは、翌日聞き屋の元へ行き、以前頂いた手伝いの報酬全てを、今回の報酬として渡した。手渡したなんて表現をよく使うが、この時代、そんなバカなことはしない。正直俺は、お金なんて、その実物を拝んだことさえない。金銭のやり取りは全てスティーブを通している。というか、その管理も全てスティーブがしているんだ。聞き屋はこんなにはいらないぞと言ったが、スティーブを通した支払いは、一度許可をすれば拒否はできない。正直ショウとしては痛い出費ではあったが、それだけの価値はあると感じていた。ミッキーはすぐにスティーブを通して自らが考える本来の報酬金額を差し引いてお金を送り返してきたが、ショウはそれを頑なに拒否をした。最後には仕方がなしに受け入れたが、いつかこの借りは返すからなと呟いていた。

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