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最低でもビートルズ  作者: 林広正
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 それでスティーブに消されかけていたところを、私が助けたのよ。こう見えてもね、おばちゃんは世界を救うのよ。

 おかしな言い回しに、ジョージ以外のみんなが笑った。

 冗談はさておきね、私は聞き屋から行方不明になった大学生の事件を相談されたのよ。スティーブの研究をしていたと聞いてね、すぐにピンと来たわよ。こう見えても私ね、若い頃にはこの子達と同じ大学でスティーブの研究をしていたのよ。先輩で一人、行方不明になったまま消えてしまった人もいたしね。これは冗談じゃないわよ。

 今度の言葉には、誰も笑えなかった。

 聞き屋のところへ話を持って来たのは、行方不明になった子の中の親だったのよ。随分と過保護な親でね、たった一日家に帰って来なかっただけで聞き屋に相談したのよ。直接な依頼はなかったんだけど、さすがに聞き屋は勘がいいわね。すぐに動き出すからこそ事件は解決するのよ。話を聞いた私はすぐ、聞き屋と一緒に大学に行ったのよ。そこでこの子に話を聞けたのよね。もちろん、大学内でなんて話は聞かないわよ。きちんとスティーブの機能を妨害できる場所に連れて行ったのよ。そこでね、私達は、ちょっとした危険を犯したのよね。そうすることが近道だったのよ。当然、この子には許可を取ったわよ。

 勿体つけた話し方に、ショウは堪らず、なにをしたんだよ! と声を荒げた。

 そう興奮するなって。俺が提案したんだ。事件解決には一番手っ取り早いからな。それに、他にも当てはあったんだよ。

 ミッキーが口を挟んだ。

 分かったから、話を続けてよ。

 ショウは少し冷静にそう言った。

 続きは俺が話すよ。聞き屋はおばちゃんに顔を向け、ニコッとした後にウィンクをする。気持ちが悪いと感じたのは、俺だけじゃないはずだ。

 こいつを囮に使ったんだよ。スティーブが糸を引いていると言ってもな、直接手を下すのは人間だ。その瞬間を掴まなければ、助けられない。こいつが捕まって、他のみんなと同じ場所に連れて行かれるのを待ってから助けるって作戦だ。それと同時に、俺はスティーブの手下になっている人間側を黙らせるために走ったよ。あんた達も知っている人だ。裏の社会に通じている。分かるだろ? この建物のオーナーだよ。ボブアンドディランで唄う彼女の父親だ。事件の説明をすると、彼女の父親はすぐに動いてくれたよ。俺たちと一緒にこいつが連れて行かれた現場まで手下を同行させ、無事に話をつけてくれた。まぁ、言葉にするほど簡単ではなかったけれどな。後はおばちゃんが、スティーブの記憶を操作した。これでも本当に凄いおばちゃんなんだよ。

 ミッキーがそう言うと、おばちゃんは、これでもなんて言い方はないだろ? そう言ってミッキーの胸を小突いた。

 これが真相だよ。しかも、解決したのはついさっきだ。俺はおばちゃんとここで落ち合う約束をしていたんだ。さっきはあの場所に帰って来たばかりでな、ちょっとの休憩をして、腰を上げようとしていたところだったんだよ。

 さぁ、話はここまでだよ。そろそろこの子が正気に戻るからね。

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