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最低でもビートルズ  作者: 林広正
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5

 随分早かったね。ひょっとして、この近くに住んでいるの?

 ショウの言葉に、チャコが苦笑いを浮かべる。

 もしかして、今が何時か分かってない?

 チャコの言葉を聞き、慌てて時間を確認する。今の時代の俺たちはいつだって、頭の中で時間を知ることができる。しかし、常に確認をしているわけではない。特にショウは、集中をしていてもいなくても、時間を気にする男ではなかった。

 ヨーコがいるってことは、昼間なんじゃないのか?

 そうなんだよ。今は昼間なんだ。この時間にさ、学生は普通、家にはいないだろ? それに、僕の家からはここまで十分じゃ来られないよ。

 チャコの言葉にショウは驚く。

 学生って? 去年一緒に卒業したじゃんよ。チャコが寝ぼけているんじゃないかと、ショウは笑みを浮かべる。

 確かに卒業はしたけどさ、まだ十八じゃん。勉強したいことはいっぱいなんだよ。

 それは僕だって一緒だよ。人生は常に勉強だろ? ここにいるってことが、僕に取っての勉強なんだよ。

 ショウはさ、それでいいかも知れないけど、僕は違うんだよ。学校に残って、勉強させてもらっている。後四年と少しはその権利があるからね。

 そうか、学校に残ったのか。けど、学校からだってそんなに早くは来られないだろ?

 実はさ、転送装置のモニター実験に参加しているんだ。今日はそれを利用したんだよ。

 転送装置って、なんだ?

 ショウの言葉にチャコは驚く。側にいたヨーコまで、まさか知らないの? なんて声を出した。

 おいおい、いくら忙しくてもさ、少しも耳にしていないってことはないだろ? 全く知らないのか?

 全く知らないな。転送装置って、なんだ? 言葉の意味はわかるよ。テレポとは違うのか?

 まぁ、似たようなものだけど、驚くなよ。テレポはさ、基本は物体だけに限っているだろ? 転送装置は違うんだ。生き物を送ってできるんだよ。

 ちょっと前に話題になったじゃないのよ。世界中で一斉に行われた人体実験をしたのよね。大成功だったのよね?

 そうなんだよ。けれどさ、それだけで即実用化とは行かなくてね、今は世界中でモニター実験を行なっているんだよ。僕はそれに参加しているんだ。結構人気があってさ。なかなかなれないんだけどさ、学生は優遇されるんだ。色んな意味で、実験向きなんだ。時間的にも、肉体的にもさ。

 チャコとヨーコが盛り上がるのに対し、ショウはあまり興味がなさそうに、ふーん、そうなんだ。なんて言うだけだった。ヨーコは興味津々に感想などを尋ね、チャコは自慢げに説明をしていた。

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